津波てんでんこ

 津波に首まで漬かり命からがら助かった人がいます。今後の生活に不安いっぱいだけど、避難所の仲間を励まし続ける人がいます。一人一人の震災体験、生活再建の歩みを共有し、語り継ぎたい。被災地の方々のメッセージを紹介します。(2011年3月25日から岩手日報紙面で連載「津波てんでんこ~被災地からのメッセージ」がスタート。ほぼ毎日にわたってメッセージを掲載しています。この紹介文は連載が始まった当時の原文まま)

 「てんでんこ」の意味 人にかまわず逃げろ

 本紙掲載の「津波てんでんこ」のタイトルカットは、大船渡市三陸町綾里の津波災害史研究者、故山下文男さんが揮毫(きごう)しました。「てんでんこ」は「てんでんばらばらに」の意味で、「人にかまわず必死で逃げろ」と、山下さんが訴え続けてきた言葉です。揮毫に当たり、今回の津波で自らも被災した山下さんは「津波対策はハード、ソフト両面あるが、特にソフト面が非常に大切なことが証明された。各家庭で津波の時にどうするか、考え続けてほしい。それが集まることで真の対策となる」と思いを込めています。

▼11月21日
カキ産直 誘客へ研究
宮古市赤前 カキ、ホタテ養殖業 山根 光子さん(65)

 震災で施設や船、漁具も全て流失した。漁業者で協力して流された浮き球などを捜し、市の補助もあって2014年には出荷を開始した。16年台風10号豪雨など、大雨でカキが死ぬこともあったが、生産は徐々に軌道に乗ってきた。今年は量も品質もいい出来。カキ産直施設「うみのミルク」も19日にオープンした。これからはどうやってお客さんを呼び込むか、売り方を研究していきたい。

▼11月20日
公営住宅 入居心待ち
大槌町安渡 三浦 枝美さん(77)

 被災者支援の一環で設立された町内の手作り工房で藍染め商品などを作っている。被災地、被災者に思いを寄せ続ける人に助けられ、今がある。生きがいがあることが支えだ。恩を返すためにも自分ができることをやり続けたい。完成を待つ災害公営住宅への入居が待ち遠しい。新しい環境や生活への不安はあるが、住民同士がつながり外に出て会話ができる機会をつくっていきたい。

▼11月19日
経験と思い伝え継ぐ
一関市散田 一関小教諭 吉田 翔さん(24)

 東日本大震災が発生した時は高田高1年で部活動中だった。数日間は帰宅できず、学校に避難した。その際、父が亡くなったとの情報も耳にした。発生3日後に家族全員と顔を合わせ、互いの無事が確認できた時の安心感は忘れられない。私が今教えている子たちのほとんどは津波の体験がない。私の経験や思いを伝え続け、自分の命を守り抜くことができる子に育てたい。