第6部 資源管理の模索 ④福島の水産物

2018/05/01

保全への意識高まる

東日本大震災の大津波を受けて再建され、徐々に活気が戻ってきた福島県いわき市の小名浜魚市場。鮮度保持・衛生管理が強化された荷さばき場では、近海から水揚げされた水産物を大勢の買い受け人が見定めていた。

中でも目を引いたのは大型の60~70センチ台のヒラメ。震災前は味・鮮度に秀でた「常磐もの」の代表格として首都圏に安定供給され、築地市場の評価も高かった。「ようやく単価も安定し、何より資源量が格段に増えた」。市場を運営する小名浜機船底曳網(そこびきあみ)漁協の中野聡さん(42)はこう実感を語った。

福島県の漁業は東電福島第1原発事故の発生で自粛を余儀なくされ、安全が確認された魚種から操業・販売を行う「試験操業」が2012年6月から始まった。徐々に対象魚種は拡大されたが、休止期間に多くの魚種で資源量の増加や大型化が明らかとなってきた。

県が行った16年の調査では、水深100メートル以下で水揚げした魚種ごとの重量を比較した結果、震災前3年平均(08~10年)と比べヒラメは約7倍、カレイ類やアンコウ、ヤリイカも約4~7倍と増加。県内各市場に水揚げされたマガレイの体長比較でも、10年の平均約20センチが、17年には約30センチに増大した。

17年の試験操業の水揚げは3281トンと震災前の10年と比べて12・7%にとどまる。だが、県は資源量の増加などを本格操業に向けた好材料と受け止め、震災前より操業日数や回数、網数を減らすなど、水産資源の持続的利用につなげる漁業の方策を検討する。

県水産試験場の渡辺昌人水産資源部長は「震災前は絶滅しないのが不思議なくらい取り過ぎていた。長い期間穏やかに資源維持を図りたい」と見据える。

小名浜魚市場で入札にかけられるヒラメ。福島第1原発事故後の操業自粛期間を経て資源回復が鮮明になっている=福島県いわき市

漁業者の保全意識も高まりつつある。ヒラメは安全が確認され操業が可能となった16年8月から、漁獲の制限を体長30センチ未満から50センチ未満とする自主規制を開始。小名浜地区で沖合底引き網漁業を営む志賀金三郎さん(71)は「網入れの時間が震災前の半分程度でも同じくらい漁獲できる。取れるだけ取って1、2年で元に戻ることは避けたい」と決意する。

一方で、風評被害からの脱却という大きな課題もいまだある。漁師からは「漁獲しても販路がないと買いたたかれる」と根強い懸念も。県は本年度、首都圏の大手量販店に水産物を直送する事業に乗り出し、加工や流通を含めて常磐ものの復活を目指す。

人間による漁業がいかに水産資源に圧力をかけてきたかを物語るような福島の海。だが、震災を受けて地域は変わろうとしている。永続的な水産資源の持続的活用に向けて、人間は何ができるのか。未来を見据えた闘いが続いている。