「サケの乱」第34回農業ジャーナリスト賞受賞-電子版発売

 「サケの乱」は、岩手日報紙面で2017年11月から18年6月まで掲載された連載企画です。三陸沿岸に未曽有の被害をもたらした東日本大震災から6年を迎えた2017年夏、「なぜサケは帰って来なくなったのか?」という素朴な疑問からスタートしたこの連載は、全8部、計43回に及びさまざまな々な角度から取材をしました。
 2018年6月、農政ジャーナリストの会「第34回農業ジャーナリスト賞」として表彰された「サケの乱」は、受賞をきっかけに県内外より多くの要望をいただき、過去紙面として眠ることなく後世に伝えるべく電子書籍として発行することになりました。日本の水産業界関係者のみならず災害復興の資料として、そして、自然教育などの教材としてご愛読いただけましたら幸いです。

sakenoran

- はじめにより抜粋 -

 歴史的不漁に見舞われている秋サケ漁は、苦境にあえぎながらも前に進もうとしている三陸の姿そのものだった。
 「漁業の落ち込みは被災地にとって死活問題だ」「水産業をテーマに何か連載ができないか」
 三陸沿岸に未曽有の被害をもたらした東日本大震災から6年を迎えた2017年夏。編集局でこんな話が持ち上がり、水産業、特にも本県の基幹魚種である秋サケをテーマとした取材がスタートした。被害を受けた漁船や漁具、漁港や加工施設といったハードは復旧したにも関わらず、いっこうに回復しない水揚げ。出発点としたのは「なぜサケは帰って来なくなったのか?」という素朴な疑問だった。
・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・
 連載後の2018年度の水揚げは、歴史的な不漁だった前年からやや回復し、4年ぶりに1万トンを超えたが、依然として震災前平均(08~10年度)の4割程度。特に沿岸南部の不漁は深刻で、地域経済への影響が懸念されている。一方、地球温暖化などで海洋環境が大きく変化する中、県は高海水温に強いサケの稚魚の研究に乗り出すなど、復活に向けた新たな挑戦も始まっている。
 ただ「乱」はまだ鎮まってはいない。元に戻すにはかなりの時間がかかるかもしれない。もしかすると地球環境の大規模な変化で、震災前と同じ漁の姿には戻らないかもしれない。それでも秋サケは「岩手県の魚」として、地域の経済だけでなく、人々の生活・文化にこれからも深く根ざしていくものと思っている。
 農業ジャーナリスト賞受賞と電子書籍化を機に、改めて秋サケに注目が集まり、この問題の議論がさらに深まることを期待している。
今回の連載に協力いただいた全ての皆さんに改めて心から感謝を申し上げたい。そして多くのことを教えてくれたサケたちにもお礼を言いたい。
私たちの葛藤が、必ず将来の希望につながると信じている。

2019年7月
岩手日報社報道部 榊悟、八重樫和孝

■本書の構成

 当書籍は全8部、計43回の連載のほか、各テーマの理解をより深める「特集」や連載時に掲載された「関連記事」も全て収録しました。特集は、「一生と謎の生態」「流通と消費」「ロシア極東・ハバロフスクから」など各テーマに関わる多角的なな分野から理解を促し、図解を駆使し子どもたちでも分かりやすく理解できるように解説しています。
 さらに、電子版では読みやすさを重視し、全ての連載を見開きページで構成し、紙面で掲載された写真や、地図などの図版は全て鮮明なカラーで再編集しました。紙面ですでに読まれた方でも、新鮮なイメージで読んでいただけます。
※ 見開き構成は、パソコンでのビューアーで閲覧できます。スマートフォンでは、単ページごとの閲覧となります。
※ 本文で登場する人物の年齢、地名の所在地などは、連載当時のまま掲載しています。

■特集 -豊富な図解で解説-

 各部の末締めに「特集」が組まれています。テーマは「一生と謎の生態」「変わる海洋環境」「流通と消費」「ふ化放流事業」「文化と信仰」「水産資源の行方」「ロシア極東・ハバロフスクから」「持続可能な未来へ」と多方面に及び、それぞれの専門家の知見、各機関の統計データ、サケに関する歴史や文化、そして身近な話題まで、子どもたちでも読めるよう図版を多用し分かりやすく解説しました。関係者や専門家のみならず、中学校や高校などの課外授業の教材としてもご活用いただけます。

■第34回農業ジャーナリスト賞受賞 -2019年6月11日岩手日報紙面より-

 【東京支社】農政ジャーナリストの会(行友弥会長)は10日、東京都千代田区の日本プレスセンターで、第34回農業ジャーナリスト賞の表彰式を行い、岩手日報社の連載企画「サケの乱」が表彰された。
 表彰式には企画を担当した報道部の榊悟編集委員(当時同部次長)と八重樫和孝次長が出席。審査を担当した石井勇人前会長が「サケ以外の魚種や国外まで取材範囲を広げて解決策を模索し、水産業が抱える構造的な問題を提起した労作」とたたえた。
 榊編集委員は「サケの不漁を通し、複合的な水産業の構造的問題を考えることができた」、八重樫次長は「地元の新聞社として今後も秋サケの問題を考えていきたい」と語った。
 本紙の受賞は2001年の連載企画「いわて 食・新世紀」以来。「サケの乱」は不漁原因を多角的に検証し、17年11月~18年6月に43回連載した。各部で大型グラフィックを使った見開き特集を掲載した。
 筑波書房の「移住者による継業 農山村をつなぐバトンリレー」、NHKの「希望の光を種牛に託して~福島県川内村~」、岡山放送の「やがて風景になる 若き木工職人の成長記」も選ばれた。

- 書誌情報 -
書名:サケの乱
発行:岩手日報社
発行年月日:2019年7月16日
定価:1,300円(税込み)
体裁:電子版、オールカラー、140ページ
目次:
 プロローグ 帰ってこない優等生
 第1部 異変(連載5回)
 第2部 魚影はどこへ(連載5回)
 第3部 危機に立つ被災地(連載5回)
 第4部 4億匹を問う(連載6回)
 第5部 遠ざかる関係(連載6回)
 第6部 資源管理の模索(連載5回)
 第7部 世界の挑戦(連載5回)
 第8部 南限からの提言(連載5回)
立ち読みページ:電子ビューアーでご覧頂けます
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