道はどこまでも 米ロングトレイル挑戦記③

静かな森 山と一体に
(2018年7月19日~8月27日)
 

これまでのトレイルとは一変し、北カリフォルニアでは深い森歩きが多くなる

 眺めの良い中央カリフォルニアを抜けると、トレイルは静かな森歩きに移る。視界は巨木に阻まれ、絶景こそ少なくなるものの、日本とは桁違いの規模の山火事やクマとの遭遇など、ある意味では米国の自然環境を強く体験できる区間であった。

 クマとの出合いは唐突に訪れた。夕方4時ごろ、茂みから生き物の気配を感じ、近くの草むらに目を凝らすと体長約1メートルのブラックベアがこちらを見ていた。その距離約50メートル。

突然トレイルに現れたブラックベア。数秒目を合わせた後、森の奥に消えていった

 恐怖とうれしさが入り交じり、嫌な汗が背中を伝う。クマとはこの後、4回出くわすことになったが、写真に収められたのはこれが最初で最後だった。

 これまでほとんど雨に降られなかったのに、7月になると雷雨に遭う機会が一気に増えた。カリフォルニア州では夏になると落雷による大規模な山火事が発生する。トレイルでも山火事の影響があり、100キロ以上離れた場所から流れてきた煙で苦しめられることも。朝目覚めるとテント内に煙が充満していた時はさすがに参った。

山火事の影響で空気が曇り、遠くまで見渡せない

 北カリフォルニアを抜ければパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)もあと半分だ。風呂は1週間から10日に1度しか入れず、トイレは目の前の大自然。24時間常に自然の影響を受ける生活は決して快適ではないが、そんな生活が山との一体感を深めてくれている気がした。いよいよ山との「歩調」が合ってきた。

(1月27日掲載)