道はどこまでも 米ロングトレイル挑戦記②

自然が生み出す楽園
中央カリフォルニア編 1627キロ
(2018年6月13日~7月12日)
 

PCT最高地点のフォレスターパス(3998メートル)を越える

 6月13日、スタートから1123キロ地点にあるケネディメドウズに到着した。ハイカーはこの街で砂漠地帯の疲れを癒やし、高山地帯の「シエラネバダ」に入る。岩峰と湖が点在するこの区間はパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)のハイライトとして知られ、大パノラマが連続する絶景区間だ。

 南カリフォルニアとは違い、毎日2千~3千メートル級の峠を越えるのが当たり前となり、キャンプ地が岩手山(2038メートル)より高い場所になることもざらだ。トレイル沿いには雪解け水で水量を増した川がいくつも流れ、さかのぼるようにトレイルを進む。上流には川の水源になる湖があり、絵の具を垂らしたような青色をたたえていた。

セルデンパス(3325メートル)から、この先のトレイルを望む

 ここでは山、森、川、全ての自然物が美しく整って見え、自ら発光しているような輝きを放っている。この世の楽園を感じさせた。

 ただ楽園と言えど気は緩められない。この区間は雪解け水が豊富なため、急流の徒渉で毎年死傷者が出ているからだ。水は足の感覚がなくなるほどの冷たさで、ハイカーたちは川底が浅い場所を探し、声にならない声で叫びながら川を渡ることになる。

たまたま発見したキャンプ地で爽やかな朝。標高は約3300メートル

 一方、ここは「蚊の地獄」でもあり、1日に数十カ所も刺された日には発狂寸前まで追い詰められた。米国の蚊は服の上からでも平気で吸血してくるため、注意書きに「地肌には使用しないで」と記された強力な虫よけスプレーが手放せない。蚊と絶景は切っても切れない関係らしい。

 絶景の楽園と蚊の地獄を味わいながら歩き、1627キロまで進んだ。

(1月20日掲載)