⑭佐々木さんの船出港(釜石)

母に誓った決意乗せ

2018年3月13日


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 東日本大震災から8年目の朝。晴れ渡る浜に船外機のエンジン音が響く。12日、釜石市片岸町の室浜漁港。「ブロロッ」。同市鵜住居(うのすまい)町の仮設住宅で暮らす漁業佐々木健一さん(45)が勢いよく船に乗り込んだ。

 震災は佐々木さんから多くのものを奪った。自宅や船、養殖施設、そして、母光子さん(享年67)…。一時は海の仕事をあきらめかけた。そんな中、船と大漁旗が見つかり「やるんだ」と気持ちが動いた。2013年、同市片岸町の佐々新一さん(51)と養殖カキ「桜満開牡蠣(さくらまんかいがき)」の生産を再開した。


 11日、内陸に離れて暮らす妻子と、母の墓前で手を合わせた。「やれるところまでやるからさ」。長年養殖業を支えてくれたのが光子さんだった。

 「地元のものを守っていきたい」。漁に向かう佐々木さんの瞳に青い海が映る。「バシャ、バシャッ」。思いを乗せた船は白波を立て、大海原へ真っすぐ進んでいく。

(文・写真 報道部・山本毅)

【写真=「どっかで見てんのかな」。母光子さんへの思いを語る佐々木健一さん。朝日を浴び、大槌湾を進む=12日午前7時15分】

メモ 桜満開牡蠣は大粒のカキで、2月から5月ごろまで収穫が続く。釜石市平田の釜石プラットフォームが販売し、全国各地へ出荷される。震災で一時中断したが、2013年から出荷を再開している。