季節感が際立つ岩手の四季、各地に息づく郷土芸能の数々、恵みをもたらす豊かな海と大地-。魅力にあふれた、さまざまな音がそこにある。時に心を癒やし、体を震わす。じっくり耳を澄ますと、聞こえる音もある。県内各地を巡り、音が聞こえる被写体にカメラを向ける。

(随時掲載)

㉑猊鼻渓舟下り(一関)

渓谷に響き渡る歌声

2018年6月23日


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 初夏の緑を仰ぎ見て、穏やかな砂鉄川を船頭手作りの木舟で進む、一関市東山町の猊鼻渓(げいびけい)舟下り。「ザクッ」。船頭が長さ約5メートルのさおを巧みに操り、川底を突く音が静かに響く。

 川沿いには、高さ50メートルを超す石灰岩の巨岩や絶壁が約2キロにわたって続き、浸食と隆起を繰り返した年月を物語る。鮮やかに葉を茂らせた木々と暗く落ち着いた森が幾重にも重なり、水面に吸い込まれるようなグラデーションを描く。

 透明な川にはウグイなどが泳ぎ、餌を求めるように追い掛けてくる姿がほほ笑ましい。景色を堪能しながらユーモアあふれる船頭の案内に耳を傾けると、乗船客にぱっと笑顔の花が咲く。

 「清き流れの砂鉄の川に 舟を浮かべてさおさせば-」。こぶしの入ったげいび追分を披露する船頭の菅原明さん(49)。連なる渓谷美に伸びやかな歌声が響き渡る。

 多くの観光客を魅了し続ける猊鼻渓。日ごとに表情を変え、移りゆく季節に彩りを添える。

(文・写真 報道部・山本毅)

【写真=鮮やかな緑に染まる水面をゆっくりと進む猊鼻渓の舟下り=一関市東山町】


メモ 猊鼻渓は旧長坂村村長佐藤猊巌(げいがん)らが観光開発し、1910(明治43)年に命名。25(大正14)年に本県で初の国の名勝に指定された。同年に大船渡線が開通。北海道で江差追分など民謡の稽古を積んだ鈴木朗月(ろうげつ)が、地元有志とげいび追分を完成させた。

過去記事

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⑱桜吹雪(雫石)(2018/05/05)
⑮木炭作り(久慈)(2018/03/30)
⑫浄土ケ浜(宮古)(2018/03/11)