北良 株式会社
代表取締役

笠井 健 氏

Interview

 岩手の子どもたちと世界をつなぐ「教えてメジャーリーガー」は、岩手日報社と北上市の北良が連携して取り組んでいます。北良は野球やサッカー、スポーツクライミングに打ち込む子どもたちの育成のほか、子ども食堂や医療的ケア児の支援など、継続的に本県の子どもたちを支えてきました。笠井健(けん)社長に思いを聞きました。

(聞き手は編集局・太田代剛)

子どもたちに『世界への切符』を届けたい


大リーガーは子どもたちにとって憧れの存在。岩手の子どもたちとつなごうと思ったきっかけは。

 「大リーグで活躍している菊池雄星選手や大谷翔平選手に花巻東高野球部の佐々木洋(ひろし)監督との出会いがあったように、人との出会いが人生の転機になることが多いと思います」
 「岩手の多くの子どもたちにとって大リーガーはまだまだ遠い存在ですが、紙面やウェブを通じて彼らとコミュニケーションを取る体験が、夢への一歩を踏み出すきっかけになると考えました」

重い病気を患っていたり、経済的な理由で夢を追うこと自体が難しい子どももいます。

 「いま、野球などさまざまな分野で活躍している人の中には、環境に恵まれたことで成長出来た人もいますよね。もちろん、才能がある子をさらに伸ばしていくことも大切です」
 「しかし、経済的な事情や病気、障害がある子どもたちでも、課題を克服する方法や、努力している人とつながることで可能性が大きく広がる。我々の取り組みは、全ての子どもたちにとって『新たな世界への切符』になるはずです」

取材は岩手日報の特任記者で米ニューヨーク市在住の及川彩子さんが担当します。

 「及川さんは黒沢尻北高の2つ下の後輩で、同じ陸上部でした。実は花巻東高の佐々木監督も一つ下の後輩で、彼は野球部でした。佐々木監督が育てた雄星選手や大谷選手を及川さんが取材するのも何かの巡り合わせでしょう。こうした人の繋がりが次の世代を育てるための輪になっています」

黒沢尻北高で共に青春を過ごした仲間の絆ですね。

 「子どもたちが頑張る姿は、大人に刺激を与えます。次世代を支援することで、前向きに挑戦する人が増え、可能性にあふれた地域になる。それが、私たちが育ったこのまちへの貢献になればいいと思います」

笠井 健さん(かさい・けん)
黒沢尻北高、筑波大卒。首都圏でITエンジニアを務めた後、2003年にUターンし北良入社。11年社長。東日本大震災を機に、災害に強い社会づくりに資する人材育成と機器開発に取り組む。スポーツに励む少年少女や重症心身障害者、医療的ケア児、各地の子ども食堂などの支援にも力を入れる。49歳。北上市堤ケ丘生まれ。