俳優の土村芳(31)が主演を務めた、特集ドラマ『二十四の瞳』が8日午後9時より、NHK・BSプレミアム/BS4Kで放送される。日本が第二次世界大戦を突き進んだ歴史のうねりに、否応なく飲み込まれていく女性教師と生徒たちの20年にわたるふれあいを描いた不朽の名作だ。ドラマ・映画『おいしい給食 Season2』と教師役が続いた土村にインタビューした。

【画像】特集ドラマ『二十四の瞳』子どもたちの様子

――ホスピスを舞台にしたドラマ『ライオンのおやつ』(NHK)で、余命宣告を受けた20代の主人公を演じるため、髪をベリーショートにしてから1年あまり。だいぶ髪が伸びましたね。

【土村】この一年、あっという間でしたね。なぜ、こうもあっという間に時間が過ぎてしまうのか。30代になったばかりだと思っていましたが、30代でできることをやっておかなくちゃ、今できることはなんだ?と、自分から探していけたらいいなと思います。

――映画『劇場版 おいしい給食 卒業』の撮影が昨年秋にあり、その後、『二十四の瞳』の撮影に入ったそうですね。1980年代の中学校を舞台にした『おいしい給食』(Season2)と、昭和のはじめから戦中、戦後を舞台にした『二十四の瞳』、教師役が続きました。

【土村】どちらも授業をするシーンはほとんどありませんでしたが(笑)。『おいしい給食』はほぼ給食。『二十四の瞳』も子どもたちと外で遊んで、歌って、という感じでしたね。

――次世代を担っていく子どもたちと共演して、気付いたことや考えさせられたことなど、子どもたちに対する思いを聞かせてください。

【土村】可能性しかない子どもたちと一緒に作品をつくれてすごく光栄でした。特に『二十四の瞳』の子役たちはみんなかわいかったですよね。でき上がったドラマを観ても、自然と顔がにやけてしまいます。一人ひとりがすごく愛おしい。

 今年の1月に小豆島で撮影していて、子どもたちの着物は薄いし、ふんどしの子もいて、すごく寒かったはずなんですが、誰ひとり泣き言を言わず、みんな元気いっぱいで現場にいてくれました。私こそ見習うべき所がたくさんありました。願わくは子どもたちとまたどこかで会いたいですね。大きくなった姿を見たら、想像で演じた大石先生の気持ちをリアルに味わえるような気がします。

――小中学校の頃の土村さんは?

【土村】目立たない子だったと思います。新体操のクラブに入っていたので、放課後、クラスの子と遊んだ記憶もあまりないんですよね。

――先生との思い出はありますか?

【土村】これも学校の先生ではなく、子ども劇団の先生が恩師とも言える存在で、ありがたいことにずっと応援してくださっています。2014年に出演した舞台「銀河鉄道の夜」の盛岡公演の時に、先生たちが観に来てくださって、すごくうれしかったです。「銀河鉄道の夜」は、子ども劇団でもやったことがある作品だったので、感慨深いものがありました。

――良い先生に恵まれるって人生の一番の財産ですよね。『おいしい給食』で市原隼人さん演じる給食マニアの先生と、佐藤大志さん演じる生徒の絆も微笑ましいものがありました。映画は口コミが広がり、ロングラン上映中。Paravi、Amazon Prime Videoほか各動画配信サービスで9月15日まで期間限定特別配信を行い、10月5日にはBlu-ray&DVDの発売も決定しています。

【土村】ドラマや映画のファンになってくださった方々の“給食愛”が熱いですよね。私は給食があったのは小学校だけで、映画のテーマの一つにもなっていた、栄養面にも気を遣ったメニューが多かったと記憶しています。そんな中で、カレーの日はすごくうれしかったですし、季節のイベントに合わせた特別メニューもみんな大喜びだったなって。でも給食のメニューを自分で工夫して食べる、ということはしてなかったので、「しまった! 自分ももっと楽しんでおけばよかった」とすごく思いました。

――『二十四の瞳』は、1952年(昭和27年)に発表された壺井栄の小説が原作。1954年(昭和29年)に、木下惠介監督・脚本、高峰秀子主演により映画化されて以来、田中裕子主演のリメイク映画(1987年)があり、テレビでは何度もドラマ化されてきました。令和初の『二十四の瞳』で大石久子先生を演じていかがでしたか?

【土村】『二十四の瞳』の大石久子先生役をいただけるなんて、思ってもみなかったので、本当に心して取り組まねば、という思いがありました。オファーをいただいてから過去の映画を改めて見返したんですが、圧倒されてしまいました。真似したくても真似できない、どうしよう、と迷走してしまったんですが、そんな私を助けてくれたのが、さっきもおはなしした子どもたちでした。

 撮影に入る前に、子どもたちと集まって、一緒に鬼ごっこをしたり、電車ごっこをしたり、遊ぶ時間をつくっていただき、その時、自然と湧き上がってきた目の前の子どもたちに対する愛おい気持ちを信じて演じれば、大丈夫かもしれない、と吹っ切ることができました。プレッシャーは常に感じてはいたんですけど、子どもたちの存在にすごく救われました。

――昭和初期の物語ですが、貧困、差別、弾圧など、子どもたちの居場所をうばっていく過酷な現実は、戦時中だけに限った問題ではないかもしれませんね。

【土村】戦争の悲惨さだけでなく、人は人とつながっている、誰かを思いやる気持ちもつながっていく、子どもたちは未来の希望、そういったことにも重きを置いた作品になっていると思います。現代に通じるものがたくさんあって、当たり前だと思っている日常を改めて感じてもらえたらうれしいです。

■特集ドラマ『二十四の瞳』
NHK・BSプレミアム 8月8日 後9:00~10:30

 昭和初期の小豆島。大石久子(土村芳)は新任教師として岬の端にある分教場に赴任し、そこで12人の1年生たちと出会う。それから20年にわたる久子と子どもたちの交流が始まる。