1967年10月2日の深夜1時。「君が踊り僕が歌うとき、新しい時代の夜が生まれる。太陽のかわりに音楽を、青空のかわりに夢を。フレッシュな夜をリードするオールナイトニッポン!」という糸居五郎の第一声で、ニッポン放送“深夜ラジオの代名詞”『オールナイトニッポン(ANN)』が幕開けした。現在にいたるまで、才能豊かな数々のパーソナリティーを見出し、リスナーに寄り添い、常に時代の最先端を見つめ、話題や文化を発信してきた『ANN』が、この4月から55周年YEARを迎えた。

【写真たくさん】『マヂラブANN0』パーソナリティー×スタッフ鼎談

 ORICON NEWSでは、毎月1組のパーソナリティーにスポットを当てて『ANN』の“今”を紹介する連載企画をスタート。5月のCreepy Nutsに続き、6月はマヂカルラブリーを紹介したが、今月はさらに、20日よりスタートしたアーカイブサブスクリプションサービス『オールナイトニッポンJAM』について、同局デジタルビジネス部の浜原晋介氏、澤田真吾氏、コンテンツプロデュースルーム所属の冨山雄一氏への取材を通して伝えていきたい。

■音声メディアへの追い風が後押し 最大のミッションは「みんながハッピーになれる」こと

 アプリをインストールすることで、ユーザーは同局が配信するポッドキャストコンテンツを無料で聴取できるほか、30日間500円のプレミアムプランへの加入で、2000年以降の『ANN』秘蔵マスター音源から続々と蔵出しされた人気番組を、マスター音源で聴くことができる。

 『ANN』の象徴でもあるテーマ曲「ビタースウィート・サンバ」にのせたトークの他、各種人気コーナーが当時のままによみがえる(一部編集あり)。サービススタート時の番組ラインアップとして、オードリー、Creepy Nuts、乃木坂46など現在放送中の人気番組のほか、くりぃむしちゅー、宮藤官九郎、四千頭身をはじめとする過去の人気番組計30タイトル(6月20日時点)が、初回放送分から順次聴取可能となる(一部番組を除く)。

 なぜこのタイミングでの実現となったのか。55周年という節目はもちろん、浜原氏は“音声メディアに対する潮流の変化”があると語る。「2年前から構想があったのですが、その頃と今ではいい意味で状況が変わってきていて。音声メディアへの追い風が今までにないくらいの勢いがあります。それに伴って、関係者も取り組みに関する理解が明らかに変わってきている印象を受けます。この流れに乗って、みなさんの期待を裏切らないように、楽しんでいただけるようにしたいです。新しいシステムを作って、みんながハッピーになれるというのが一番大きなミッションだと思っています」。

■懸念点もスタッフの労力で解消へ 月500円という価格設定の妙

 権利関係について、最前線で交渉にあたってきた澤田氏は舞台裏について明かしてくれた。「各事務所のみなさんと交渉していきましたが、協力的なお言葉をたくさんいただきました。『こういうことをやったほうがいいと思っていました』『僕も聴きたいです』と言ってくださったり…。ただ、昔と今とでイメージが変わっている方の場合は、ちょっと乖離しすぎて、ファンの方を混乱させてしまうのでは…という部分の話はありました。そういった意味で懸念されるのは、同じ発言であっても、その当時と今では受け止め方のニュアンスが変わってしまいかねないというところだ。澤田氏に質問すると、この点についても配慮されていることがわかった。

 「今の時代と照らし合わせると、ちょっと受け止められ方が変わってしまうものもあるかもしれませんが、できる限り、当時の雰囲気を残しつつ、すべて聴いて、それでもちょっとこれは…という内容は、やむなくカットするという判断も出てくると思います」

 そのジャッジを行っていくために、一つひとつの番組を数十人のスタッフが随時作業にあたっていく。「僕自身もくりぃむさんのANNなどを聴いて育った世代で、当時の音源をもう一度聴きたいというリスナーの気持ちもわかるので、サービスを届けたいなという気持ちがずっとありました。違法ではなく、公式で出して、ニッポン放送だけではなくて、パーソナリティーのみなさん、制作スタッフさんにも分配するという仕組みを整えていきます。みなさんの中にも『ちゃんと公式で聴かないと…』という意識が根付いているので、我々がその気持ちに応えていかなければと考えています」(澤田氏)。

 充実したラインナップを見ると、500円は破格にも思えるが、澤田氏によると、ギリギリのラインでの設定となったという。「動画配信サービスですと、だいたい月額1000円くらいだというのは念頭にありました。音声コンテンツにお金を払うというのが定着していること、『radiko』プレミアムが月額385円であることを踏まえて、収益の部分も考えて、いい着地点を考えて…という金額設定です」。

■「ビタースウィート・サンバ」が聴けるまでの奮闘 ラジオ界全体の試金石「オールナイトニッポンから切り開いていけたら」

 過去音源の掘り起こしはもちろん、リスナーにとってうれしいのは、『ANN』を象徴する「ビタースウィート・サンバ」に乗せて、番組が聴取できるという点。同曲を手がけた人物の代理人がアメリカに在住しており、今回やっと思いで接触に成功した。浜原氏は「場合によっては(曲を手がけた)ご本人に会いに行こうかなという話までしていたくらい本気でした。代理人の方と『こういう条件だったらということで…』と、締結することができまして、初めて、放送以外で『ビタースウィート・サンバ』が使うことができるようになりました。今までは、大人の事情で、放送以外の場面では『ビタースウィート・サンバ』の原曲でないバージョンが使われてきたことを考えると、かなりの出来事かなと思っています」と声を弾ませた。

 ラジオ界にとっても異例の取り組みとなる“サブスク”。番組内のコーナーやエンディングで流れる楽曲の権利関係など、クリアにしていく課題もあるが、これだけの番組の過去音源が配信されるというのは、今後の展開も考えると大きな一歩となるのは間違いない。澤田氏も、今回の『ANN JAM』がその試金石となることを自覚している。「ラジオが今後、ストックされていくという常識ができていけばと考えています。YouTubeでも、ストックされたコンテンツが収益を上げるというモデルがあるので、ラジオもそうなっていけばいいなと。放送する、そのコンテンツが残る、それが収益を上げ続けるということで、全体が潤っていかなければいけないという気持ちはあります。今後の環境変化に耐えていくためにも、会社の柱のひとつにしていきたいです」。

 冨山氏も、さらに先を見据えている。「今の若い人が、YouTubeとかいろんなものに触れていて(コンテンツが)残ることが当たり前という文化になっていると感じています。ANNで特番をやっていただく時に、若いパーソナリティーの方から『全国すべてのエリアでは聴けない』『1週間で聴けなくなる』ということを説明しても『わからない』と言われることもありまして…。昔から聴いてくださっていた方に向けてスタートする部分もありますが、新しくラジオに触れる方にとっても、自然と選択してもらえるものになればいいですね。最終的には『ラジオJAM』みたいになれば…とも思っていて、ラジオ局全体がフロー型からストック型への模索が始まっている中でのチャレンジなので、オールナイトニッポンから切り開いていけたらと考えています」。ラジオ界の転換点になりうる『ANN JAM』。これからの展開に注目だ。

【オールナイトニッポンJAM配信ラインアップ(30タイトル)】
EXILE NESMITHのオールナイトニッポン/オードリーのオールナイトニッポン/宮藤官九郎のオールナイトニッポンGOLD/久保ミツロウ・能町みね子のオールナイトニッポン0(ZERO)/Creepy Nutsのオールナイトニッポン(ZERO含む)/くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン/ゴールデンボンバー鬼龍院翔のオールナイトニッポン/三代目J SOUL BROTHERS山下健二郎のオールナイトニッポン/次長課長のオールナイトニッポンR/SUPER BEAVER 渋谷龍太のオールナイトニッポン0(ZERO)/菅田将暉のオールナイトニッポン/角田龍平のオールナイトニッポンR/Czecho No Republicのオールナイトニッポン0(ZERO)/チャランポランタンのオールナイトニッポン0(ZERO)/チュートリアルのオールナイトニッポンR/土屋礼央のオールナイトニッポン/ニューヨークのオールナイトニッポン0(ZERO)/ネプチューンのallnightnippon SUPER!/乃木坂46のオールナイトニッポンすHi-Hiのオールナイトニッポン0(ZERO)/ファーストサマーウイカのオールナイトニッポン0(ZERO)/堀内健とビビる大木のオールナイトニッポン/ポルノグラフィティ岡野昭仁のオールナイトニッポン/水溜りボンドのオールナイトニッポン0(ZERO)/本村康祐・西岡隼基のオールナイトニッポン0(ZERO)/吉田山田のオールナイトニッポン0(ZERO)/四千頭身のオールナイトニッポン0(ZERO)/ラブレターズのオールナイトニッポン0(ZERO)/ランパンプスのオールナイトニッポン0(ZERO)/WANIMAのオールナイトニッポン0(ZERO)
※6月20日スタート時・五十音順
※今後番組タイトルは順次追加される予定。
※当時の時代背景やオリジナリティを尊重し、できる限り放送当時のままで配信。
※権利処理のため、一部聴き取りづらい箇所や編集・差し替えをした部分が含まれる。