俳優や監督として、西部劇、戦争映画、ラブ・ストーリー、ヒューマン映画と、数々の名作を世に送り出しきたクリント・イーストウッド。『恐怖のメロディ』(1971年)で監督デビューしてから50年という節目を昨年(2021年)迎え、映画監督作品として40作目となる『クライ・マッチョ』が、本日(14日)より劇場公開される。イーストウッドが最新作を語る特別インタビューと本編映像が一挙解禁された。

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 冒頭「クリントの演じるマイクは本当に実在する人のようだ」と語るのは、主人公マイクの新たな相棒となるラフォを演じたエドゥアルド・ミネットだ。落ちぶれた元ロデオスターのマイクは、恩のある元雇い主からメキシコにいる息子(ラフォ)を連れ戻して欲しいと依頼される。犯罪まがいの仕事を受けた彼は、孤独に生きるラフォを見つけ出してアメリカ国境へ向かって旅を始める。相棒役に大抜てきされたミネットは、「クリントが演じることで経験がにじみ出し、リアルな人間らしさが出る」と、映画人としての軌跡がにじみ出すマイクの生き様に、イーストウッドの映画人生が凝縮されているという。

 イーストウッドは「落ちぶれた主人公が、人生を取り戻すチャンスを得る」物語に魅力を感じた。「役に息を吹き込むときにはやりがいを感じる必要がある」と、年齢を重ねたマイクが、いつくになっても人生はやり直せると体現していることに役者魂を込めた。映画を作り続ける秘けつは、「十分な数の良い作品を作るという運に恵まれれば、70歳になった時でも映画を作り続けられるだろう」だと語る。

 そして、マッチョな男に憧れるラフォをマイクが諭す本作の最重要シーンとなる本編映像が続く。「あんたはとても強かった。マッチョだ。今は何もない」と落ちぶれたマイクを揶揄(やゆ)するラフォに、「そうだ 昔は大した男だったよ。でも今は違う。だがいいか“マッチョ”は過大評価されてる」、「人は自分をマッチョに見せたがる。力を誇示するために。それが何になる。くだらんよ」と一蹴する。もはや自分は強くないことを認めるマイクは、「まるですべての答えを知ってる気になるが、老いとともに無知な自分を知る。気づいたときは手遅れなんだ」と達観した見解を若者に伝えるのだった。

■イーストウッドを描いた『クライ・マッチョ』浮世絵

 公開を記念して、『STAR WARS』やロックバンド「KISS」とのコラボレーションで知られる絵師、石川真澄が描いた『クライ・マッチョ』浮世絵もお披露目された。「欧米銀幕偉人傳(おうべいぎんまくいじんでん)」と題された石川の作品は、イーストウッドが演じた主人公マイクが、眼光鋭く「未来や希望を見据えている」姿が凛々しく描かれている。

 カウボーイハットをかぶったマイクは、ともに旅をする少年ラフォの相棒であるニワトリの“マッチョ”を抱えている。背景には、さながらくずし字のように英字で綴られた物語と、舞台となるメキシコの風景が浮世絵様式で描かれている。

 幼少期から大好きな俳優であるイーストウッドを描く上で、石川は今回、和のテイストにこだわらず、敢えて映画の世界観のみを意識して描いた。師である六代目歌川豊国の他界後、独学で浮世絵を学びながら新たな道を切り開いた石川は、「イーストウッドは、絵師で言うとまるで北斎だなと思います。歳を重ねるごとに円熟味が増して、決してものづくりの情熱は衰えない。北斎が画狂老人ならイーストウッドはまさに映画狂老人。こんな歳のとり方は僕の憧れです」とイーストウッドの生き様とその作品が醸しだす滋味(じみ)に驚嘆したと話している。

 映画『クライ・マッチョ』は、2020年、コロナ禍の中で万全の対策を講じて撮影された。今を生きるすべての人に贈るメッセージを、劇場の大画面で受けとめてほしい。