女優の岸井ゆきのが、両耳が聞こえないプロボクサー役で主演、三浦友和が視力を失いつつあるトレーナー・笹木役で共演する映画『ケイコ 目を澄ませて』が、今年公開予定であることが発表された。映画の撮影は完了している。

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 2013年までに4戦を戦った耳が聞こえない元プロボクサー・小笠原恵子さんの自伝「負けないで!」を原案に、『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督が映画化。刻一刻と変化するケイコの眼差しと、彼女を案じる家族やジムの面々の心のざわめきを16ミリフィルムに焼き付けている。

 『愛がなんだ』で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞に輝き、ドラマ『#家族募集します』での好演も記憶に新しい岸井が、生まれつきの難聴と付き合いながらプロボクサーとなった主人公ケイコ役に挑戦。クランクインの約3ヶ月前からボクシングの厳しいトレーニングを行ったほか、劇中で使われる手話の練習など、入念な準備を行い撮影に臨んだ。

 全身全霊で役を生きた岸井は「三宅監督も参加した三ヶ月のボクシング練習、手話練習もかけがえのない時間でした。ほんとうの意味で一緒に戦ってくれたこと感謝します」とコメント。日々の練習にひたむきに向き合い、家族やトレーナーたちの想いに触れることで揺れ動くケイコの感情の機微を、言葉ではなく眼差しで表現した岸井の新境地が垣間見える。

 セコンドの指示もゴングの音も聞こえないケイコを受け入れ、再開発が進む下町で小さなジムを運営するトレーナー・笹木役を演じる三浦は、「ケイコを抱きしめたくなるような、素直に心地よく余韻に浸れる作品」だと太鼓判を押す。三浦もまた、喧嘩するように力んでしまうケイコに根気強く指導を行いながらも、次第に視力を失っていくという難役に挑んだ。

 ケイコの実力と可能性を誰よりも信じるトレーナー・笹木、そしてその思いに応えるように“目を澄ませて”鍛錬を重ねるケイコ。三宅唱監督が「言葉以上のものがスクリーンを通して伝わることを確信しています」とコメントするように、言葉では語りつくせない、確かな絆で結ばれたふたりの関係が、静かに描かれていく。

 笹木の妻役には仙道敦子。そしてジムのトレーナーとして三浦誠己と松浦慎一郎。そのほかにも、佐藤緋美、渡辺真起子、中村優子、中島ひろ子などが出演する。

■岸井ゆきの コメント(全文)
現場に入ればすでに照明は美しく、撮影中は16ミリのフィルムがカラカラと回る音だけが辺りを満たしていました。
この世界をスタッフの皆さんがいち早く捉えてくださり、支えてくれたから、わたしはただケイコとして存在することができました。
この作品はケイコの日常であると同時に、今を生きること、自分の人生をどう生きるのかという問いなのかもしれません。
三宅監督も参加した3ヶ月のボクシング練習、手話練習もかけがえのない時間でした。ほんとうの意味で一緒に戦ってくれたこと感謝します。
ああ早く観てほしい。それだけです!

■三浦友和 コメント(全文)
特別な仕掛けも予定調和の起承転結もない。でもあっという間の99分。
音のない日常を生きる主人公のケイコの気持ちを、観た人間それぞれが自由に解釈して欲しいと無責任に丸投げされることがない。
ケイコを抱きしめたくなるような、素直に心地よく余韻に浸れる作品だった。サンドバッグ、ミットを連打する音が強烈に耳に残る。
街の喧噪、人々の声。だがこの音はケイコには聞こえていないのだと気づく度に、目にしている画面の風景が違った色に変化する。
この作品には映画音楽がない。観客が耳を澄ませなければならない。