数々のトップアーティストのミュージックビデオや、ナショナルブランドの広告を手がける映像クリエイター・丸山健志の初長編映画『スパゲティコード・ラブ』(11月26日公開)より、丸山健志監督と、同作の編集を手掛けた中里耕介による、登場人物13人それぞれの印象的なせりふやシーンを切り取ったショート予告が出そろった。

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 同映画は、フードデリバリー配達員、シンガーソングライター、広告クリエイター、カメラマンなど、東京でもがく13人の若者たちの日常を追った群像劇。「スパゲティコード」(解読困難なほど複雑に絡み合ったプログラミングコードの意)のようにこんがらがった彼らのドラマは複雑に絡み合い、やがて思いもよらぬエンディングへとたどり着く――。

 みんな、一人で生きているようで、決してそんなことはない。「スパゲティコード・ラブ」=複雑に絡み合ったプログラミングコードのように、それぞれが知らないところで作用し合い、支え合い、東京の街でもがきながらも自分の居場所を探し続けている。「映画を観る人に、日常を肯定して欲しいと思っています」と語る丸山監督は、「この映画には悩み、もがきながら苦しんでいる若者たちがたくさん出てきます。そんな彼らを見て、悩みを抱え苦しみながら生活することは誰でもそうだし、何にも間違っていないと感じてほしいです」と、作品に込めた思いを語っている。13人・13通りの予告の中に「あなた」もいるかもしれない。

■13本のショート予告のあらすじ

 大好きなアイドルへの想いを断ち切ろうと配達件数1000回を目指しひた走るフードデリバリー配達員の羽田天(倉悠貴)の映像は、「誰もいない森の奥で、一本の木が倒れたら、音はするか?」というモノローグとともに。忘れようという決意とは裏腹に思いを募らせている。

 天才と称され、プレッシャーと周囲との距離に苦しむ広告クリエイターの黒須凛(八木莉可子)の映像は、まわりに持て囃されている姿と一転し、深夜にひとり仕事をする姿に合わせて「愛も金も安心も、承認されれば手に入る」というモノローグが流れ、孤独な彼女の本音が吐露される。

 毎日コンビニのイートインでひとり時間をつぶす中学生の宍戸一樹(三谷麟太郎)は、3歳年下の異性と結婚したいと青写真を描いているが、自分が108歳まで生きた場合、妻は105歳になるという当たり前の計算で行き詰まったようだ。

 シンガーソングライターの夢をあきらめた桜庭心(三浦透子)は、一緒にいるのが楽という理由で苦手な友だちと過ごす日々。好きなこと、好きな人には嫌われたくないから、もう関わりたくない。「幸せになりたいからだよ…」。夢をあきらめて生きることを決めたはずの彼女の苦悩がうかがえる。

 住居を持たずカプセルホテルを転々とする暮らしをしているノマド生活者の大森慎吾(清水尋也)は、Facebookの友達が5000人以上がいる。「何にも執着しなければ不幸は生まれない」と達観したようなモノローグだが、携帯をのぞき込む表情はどこか寂しげだ。

 パパ活の方が忙しくなってきたモデルの綾瀬夏美(香川沙耶)は、「顔で1ヶ月、セックスで3ヶ月。それ以上つなぎ止められるものが私には何もない」というモノローグとともに、簡単に手に入るものは簡単に消えてしまうと感じながらも、何とか人をつなぎとめて寂しさを紛らわせる。

 喫茶店で働く剣持雫(土村芳)は、怒られてばかりでほかの店員からも避けられる毎日にうんざりするが、マスクで顔を隠し、感情を表に出さない。そんな彼女が笑顔になるのは、好きな人に尽くすとき。「平凡でいい。多くは望まない。好きな人のお嫁さんになりたいだけ」。彼女の願いは届くのか?

 高校生の赤羽圭(青木柚)は、好きな子に恋心を伝えられないまま一緒に過ごす日々。理想の死に方を探す彼女に対し、生き方の話をする圭。「向き不向きって、超重要じゃね? どう生きるかにさ」。きっと生き方を見つける方が難しい。彼女に伝えられない想いが募っていく。

 生きる理由が分からない千葉桜(xiangyu)は、カフェや屋上で赤羽圭と噛み合わない会話を続けている。「何で死なないんだろうね、私。こんだけ毎日さー死にたいって言ってんのに」。簡単に死ぬことなんかできないとわかっている。東京の夜の屋上で、ひとりの少女の苦悩が消えないままそこにある。

 翼(古畑新之)はカメラマンになることを目指し田舎から東京に出てきたアラサー男子。コミュ力が高く友達も多いが、どれも仕事に結びつくようなつながりでは無い。今まではそのキャラクターだけで乗り切ってきたものの、それだけでは越えられない壁が自分の目の前には立ちはだかっていることに薄々気が付き始めている。「25過ぎたら魔法が解けた」のせりふが胸に刺さる。

 そんな翼とSNSでつながり、彼を頼りにちゃっかり上京してきてしまう高校生が花(上大迫祐希)だ。地元では不登校、Instagramではそれを偽りキラキラ女子としてタピオカ片手に自撮をアップする毎日だが、東京に出てくる時に心に決めたことがあった。それは「東京に来たら本当のことだけアップする」こと。彼女にとって“東京”は憧れであり、夢を実現させてくれる魔法のような世界だ。

 桃子(佐藤睦)はというと、彼氏にこっぴどく振られ、失恋のショックにより大都会東京で引きこもりに。友達に迷惑をかけまいと電話占いにハマり、そこで大金を落とすのが日課だ。だが、彼女はそんな自分を「周りからバカだと思われる」と客観視する冷静な一面も持ち合わせている。「私と彼はまだ終わってなんかない」と悲痛な心の叫びが響く。

 桃子の隣の部屋に住み、彼女のことを“バカじゃないの?”と呆れているのが梅子(ゆりやんレトリィバァ)。ひどい扱いをされたにもかかわらず、未だに元カレにしがみついている桃子に対してイライラを募らせる一方で、「でも分かるよ、その気持ち」と静かに寄り添う。彼女もまた、東京の街で傷つき、引きこもりとなった一人だ。異常な程にピーナツバターを買い込む姿には、梅子なりの悩みや不安を感じさせる。