“ラジオ英会話講座”をテーマに、3世代の女性たちのファミリーヒストリーを描く、朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)。ヒロインの上白石萌音と恋愛模様を繰り広げている相手役“稔さん”に注目が集まり、関連ワードが連日トレンド入りをしている。その稔さんの“中の人”となるのが、SixTONESの松村北斗。SixTONESといえば、『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)のパーソナリティとして活躍をしている、ラジオに強みを持っているグループでもある。テレビ等で活動する姿とラジオで見せる姿には強烈な“ギャップ”があり、そこに従来のアイドルにはない“面白み”を感じさせる。俳優、バラエティタレント、MC…活動が多岐に渡るアイドルが、ラジオにおいて力を発揮する利点とはどのような部分にあるのだろうか。

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■「中の人」として君臨? 朝ドラ俳優のイメージとは大きく異なるギャップ

 『カムカムエヴリバディ』は“ラジオ英会話講座”がテーマになっていることから、初期の放送では「あの美しい夕日が見える?」「はい、見えます。川の向こうに美しい夕日が」といった上白石と松村の英語でのロマンチックな掛け合いが見られた。このような2人のやりとりには、「美しい詞の朗読を聞いているよう」「切なくて泣きながら出勤している」などと多くの反響が。

 松村が演じるのは、学生服をまとう昭和の青年で、家業である繊維会社の長男という役どころ。今週の放送では、跡取りとして教育をされ自分の立ち位置をよく理解しているが、「よくできた長男」であることへの葛藤や、想う人ができて初めて抱く両親への反抗といった役柄の持つ複雑な感情も見事に表現していた。

 ここで注目したいのが、ツイッターでは「稔さん 中の人」と検索されていた点だ。実はこれは松村本人の発言を起点としたもの。NHKの『土曜スタジオパーク』に出演した際に、自分を和菓子に例えるなら「きなこ餅」とし「応援してくださる方は、僕の食し方に気を付けてほしい」と発言。きなこ餅を一気に食べすぎると粉でむせてしまうように、「自分の摂取の仕方には注意が必要」「間違った食べ方をするとむせちゃう」と語った。

 特にこの同曜日に放送されている、レギュラーを担当する『オールナイトニッポン』での様子について触れ、「そのラジオはむせます。稔から入った方は一旦ラジオはお控えいただいて…」「今夜は寝てください(笑)」と冗談交じりに説明。朝ドラで根付きつつある役柄イメージとグループ活動をしている自分(中の人)には大きなギャップがあることを明かしていた。

■コアファンとつながるラジオ特有の“ディープな世界観”をアイドルが体現

 『土曜スタジオパーク』の生放送と同日の深夜、『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』が放送された。レギュラーパーソナリティを務める田中樹とメンバー(週替わり)の2人体制で番組は進行されるが、その日の週替わりメンバーは松村北斗だった。

 番組内で「君、なんか朝ドラ出てる?」「英語が話せるハンサムボーイ」と田中から朝ドラについていじられると、松村はNHKでの落ち着いたしゃべりとは180度異なるマシンガントークを展開。NHKの生放送で「ラジオをやっているけど、聞かないでくださいって言っちゃった。けどそれが、盛大なフリになっていることに気づいた」と発言し、存分に“松村節”を炸裂させていた。

 SixTONESが出演する『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』は、10月18日から24日に行われた『ビデオリサーチ首都圏ラジオ聴取率調査』において全局中同時間帯単独首位を獲得。ラジオの特性でもある“ディープな世界観”を見事に体現している。アイドルだから…といったしがらみにとらわれず、各メンバーが話したいことを自由に話し、用意されていたコーナーがトークにより流れてしまうこともしばしば。放送時間が深夜帯だからか、ジャニーズであるSixTONESの本来のファン層とは異なるコアファンとの結びつきも顕著に強いのが特長といえる。

 彼らが見せる“ギャップ”は、テレビ・ラジオの両方で支持されているお笑い芸人たちに近いものがあるかもしれない。例えば、有吉弘行はテレビでは周囲の芸人をうまく引き立てる存在であるが、ラジオではかつてのように毒舌全開。また、オードリーの若林正恭は一般的には“人見知り”として認知されているが、ラジオでは “オラオラ系”で相方の春日俊彰を相手にボケまくるなど、テレビとは異なるスタンスを取っている。

 実際に、『オールナイトニッポン』はSixTONESの後にオードリーが出演。SixTONESの松村と高地はオードリーのオールナイトニッポンのリスナーである“リトルトゥース”を公言している上、グループ全員が芸人・オードリーを敬愛している流れがある。そのため、SixTONESのリスナーも“リトルストーン”と名付けられている。そういったラジオで培った経験を、他ジャンルの活動でもアウトプットしているところに、今までのアイドルとは一線を画す独自性があるのだろう。

■アイドル以外の人を目標にすることでグループ活動に還元 アイドル界全体にもプラスの変化

 アーティストとしてパフォーマンスの世界観はしっかりと確立しながら、芸人たちが切り開いてきた深夜ラジオの文化を守るという立ち位置も貫いているSixTONES。違う畑の人を目標にすることで、それがうまくグループの活動にも還元されている。メンバーの高地優吾は『スクール革命』、森本慎太郎は『鉄腕DASH』、ジェシーと田中樹は『オオカミ少年』と、さまざまなバラエティ番組に出演。番組やお笑いに対する姿勢は、多くの芸人たちからも高く評されている。

 『オールナイトニッポン』で同じくレギュラーを務める霜降り明星の2人も、ジェシーと共演した際の感想を驚きの声と共に述べている。

 「芸人さんじゃないのに、ホンマに気を使わんと笑える。たまに違うジャンルの人が面白いことを言って、それが面白いとかあるけど、ジェシーは垣根をこえているというか『芸人やん!』みたいな。普通にモノボケみたいなものをエンドレスでしたりして、被せ方がアイドルちゃうねん」とせいやが言うと、「パッと見て面白いっていうのもあるけど、芸人がうなる面白さ。マジで珍しい。そんな人会ったことない」と粗品も絶賛。

 実際にジェシーはコロッケを尊敬していると発言していて、ビートたけしやドナルドダックのものまねを各番組で披露。芸達者な一面やお笑いの能力の高さも垣間見せている。

 近年、アイドルグループの活動は実に多様化しており、アイドルだからこういう役割をしなければならない…という既定路線はもう存在しなくなっている。だからこそ、マスとコアのファン層をしっかり獲得している芸人の立ち居振る舞いや生き様がアイドルのロールモデルにもなりうる状況は以前にも増して顕著に。いまやテレビよりも存在感を増して機能しているラジオ界で、いかにコアファン層を魅了できるかは今後の活躍の大きな鍵にもなる。ラジオでの活動を他メディアでの活動でもしっかり還元し、マスとコア両方のバランスを確立しているSixTONESは、アイドル界にも“プラスの変化”をもたらせる稀有な立ち位置にいる。活気を帯びる両業界を軸とする新たな“ラジオスター”の誕生といえるのではないか。

※高地優吾の高は、はしごだか