これまでラジオというと、どこか閉鎖的な空間でコアなファンを生み出す性質からか、「根暗」「オタク気質」というレッテルが貼られがちだった。そのため「ラジオ愛」を積極的に語る女性タレントは少なかったが、近年、その様相が一変。イメージを大事にするアイドルや俳優らが自ら進んで「ラジオ愛」を公言。さらにはそれをきっかけに仕事の幅を広げ、飛躍する人も増えている。ラジオを取り巻く環境に、今、どんな変化が起きているのか。

【写真】太ももあらわな大胆生脚を披露した高橋ひかる

■メインストリームからオールドメディアへ凋落…「ラジオ愛」は公言しないものに

 日本でラジオ放送が始まったのは、1925年。その後、次々とラジオ局が開設され、情報伝達、娯楽の主役として広くお茶の間に浸透した。1960年代中盤から70年代にかけて、局アナに加え、声優、ミュージシャン、芸人など、旬の人気者がパーソナリティーやゲストで登場する番組が続々誕生。若者を中心に深夜放送ブームも巻き起こるなど、ラジオは全盛期を迎えた。

 だが、その人気に陰りが見え始めたのが、1980年代。メディアの主軸がテレビに移り、ラジオの影響力は低下。翌日に学校や職場などで語られる話題もラジオの深夜番組からテレビのドラマやバラエティに変わり、オールドメディアと化したラジオは「まだ聴いてるの?」と揶揄されるような存在となった。

 こうしてメインストリームから外れたラジオだったが、『オールナイトニッポン』を筆頭に、しがらみにとらわれず話したいことを話してインパクトを残す番組は存続。特に深夜帯は他メディアに比べ、リスナーとパーソナリティーが強く結びつくことから“コアファン”を生み出し続け、現代まで受け継がれる深く濃い“ラジオカルチャー”が醸成されていった。

 しかし、そんなラジオの特性でもあるディープな世界観は、次第に「根暗」「オタク気質」というイメージを生み、メインストリームを歩むアイドルや俳優、歌手などはマイナスイメージがつくことを嫌って、「ラジオ愛」を公言する人は少なくなった。

■近年ラジオの立ち位置が劇的に変化「本音を語れるメディア」として再評価

 そんなラジオを取り巻く環境が、ここ5年ほどで大きく変化し始めている。アイドルや俳優が「ラジオ愛」を公言したり、積極的にラジオ番組を持つようになり、それをきっかけに仕事の幅を広げ、ブレイクする人が現れているのだ。

 その背景の一つに、ラジオの再評価がある。長くメディアの主軸を担い続けてきたテレビが、コンプライアンスに対する意識の高まりなどを背景に、当たり障りのない番組ばかりを流すメディアと捉えられ、人気が低迷。影響力を落としている。

 一方で、テレビのように「全(皆さま)」ではなく、「個(あなた)」に向けて発信するラジオは、リスナーとの“共犯関係”を築く文化が今も継承され続け、本音が語れるメディアとして若いリスナーやタレントから再評価されるようになる。ラジオ番組が情報ソースとなったネットメディアの記事が多いのも、こうした“本音トーク”のバリューの高さを裏付ける証明ともいえるだろう。そして、このラジオで見せる二面性にこそ、成功へのカギがある。

 例えば、テレビ、ラジオの両方で人気番組を持つ有吉弘行は、テレビでは周囲の芸人を引き立てる存在でありながら、ラジオではかつてのように毒舌全開。また、オードリーの若林正恭も、一般には“人見知り”として認知されているが、ラジオでは “オラオラ系”で相方の春日俊彰を相手にボケまくるなど、テレビとは異なるスタンスがお馴染み(※このラジオのみのスタンスを踏襲する形で生まれたのが『あちこちオードリー』)。いずれもコアファンを喜ばせている。
 ラジオ出演をきっかけに新たな魅力を発信することで、従来のマス的なファンはもちろん、コアファンの獲得にも大きく寄与してくれる。

 もちろん、その勢いに拍車をかけたのは『radiko(ラジコ)』の存在だ。自分の好きなアーティストやタレントのテレビとは異なる側面を聴ける、知らなかった音楽に出会えるなど、日本全国のラジオ番組をエリアフリー、タイムフリーで聴ける便利さが若者に受け、利用者が増加。ラジオ=「根暗」「オタク気質」というかつてのイメージを払拭し、メディア、リスナー、そして演者も、その価値を再認識。無視できない存在となっているのだ。

■高橋ひかる、山崎怜奈の飛躍のカギ…「マスとコア」の塩梅でファンを手中に

 何より、演者にとって見逃せないのは、ラジオによってもたらされる、これまでとは異なるとなるファン層の拡大というメリットだ。

『第14回全日本国民的美少女コンテスト』でグランプリを獲得し、女優として活動する高橋ひかる【※】もそのひとり。以前のORICON NEWSのインタビューの中で、「ラジオ好きというのはニッチな趣味だと思われるらしく、いろいろな現場で『多趣味ですよね』と言っていただけたり、私自身に興味や関心を持っていただけたりするようになりました」と、「ラジオ愛」を公言したあとの反響の大きさへの驚きを語っている。
 実際、彼女がYouTubeチャンネル『たかしの部屋』で「ラジオ愛」について語った回は38万回再生を突破。そのコメントには「ガチなラジオ好きって分かってすごく好感度が上がりました」など、「ラジオ好き」のコアファンからの好意的な意見も集まっている。

 また、乃木坂48の山崎怜奈は、乃木坂2期生ながら、これまで選抜メンバーに入ったことは無かった。自ら「乃木坂の“じゃない”ほう」と自虐していた山崎は、radikoに20本以上の番組を登録するほどの「ラジオ愛」を公言。その熱が伝わって、20年10月からTOKYO FMで『山崎怜奈の誰かに話したかったこと。』をスタート。この放送を偶然聴いた有吉弘行に「ベテランパーソナリティーかと思った」と評されるほどの軽妙な語り口で、放送から1年が経過した今ではすっかり昼の顔となり、オードリー若林、神田伯山、元テレビ東京プロデューサーの佐久間宣行氏らがその能力を絶賛。これらが認められ、山崎は6月に発売された27thシングル「ごめんねFingers crossed」収録のアンダー曲「錆びたコンパス」で初のセンターを務め、『乃木坂46 アンダーライブ 2021』では座長に就任するなど大きく飛躍した。

 この2人に共通して言えることは、「国民的美少女コンテスト」グランプリや、乃木坂46という大看板があり、マスのファンを獲得できるメインストリームのなかで、「ラジオ愛」を公言することにより、コアなラジオ好きにもリーチできたということ。“個”に向けて寄り添い、“共犯関係”が築きやすい本音も聴ける「ラジオ」への想いを公言することで、ファンへの「親近感」を抱かせ、パブリックイメージとは異なるギャップを感じさせる。もちろん、戦略的にそれを行えばボロが出てしまい、かえって逆効果となる。だが、彼女たちのラジオに対する“ガチ勢”ぶりは、女優やアイドルという取っ掛かりではなく、一人の女性として好感を抱かずにはいられないほどの求心性を生む。こうして“マスとコア”のファンをバランスよく獲得することで、自身の立ち位置を確立した。

 アイドルだからこう売り出したい、芸人だからこう…という杓子定規な時代は終わり、先述の通りマスとコアどちらのファンからの支持を集める有吉や、オードリー・若林など人気芸人の生き様や無意識の戦略は、同業はもちろん、アイドルや女優までもがロールモデルにする傾向が近年高まっている。彼らの影響力の高さは言わずもがなだが、“ハブ”としてのラジオの存在感を増しているからとも言える。活気を帯びる同業界を軸とした、新たなカタチの“ラジオスター”の誕生も、そう遠くはない未来に訪れることだろう。

文/河上いつ子

【※】高橋ひかるの「高」ははしごだか