健康志向の高まりを受けて、あらゆる食品カテゴリーで「糖質オフ/ゼロ」を謳う商品が登場。糖質制限ダイエットも定着し、コロナ禍になってからは運動不足に伴う体重増加や生活習慣病の懸念から、糖質を控えようとする動きがより加速。制限傾向はあるものの、「糖質オフはおいしくない」というイメージはいまだ根強い。“おいしさの提供”を使命とする調味料メーカーの「糖質との戦い」を追った。

【写真】罪悪感も半減? 糖質50%オフの「ブラックサンダー」を発売

■ブームを超え定着した「低糖質」 コロナ禍で再び市場伸長

 2013年頃にダイエット本で火がつき、「結果にコミットする」のキャッチフレーズで一気に広まった糖質制限ダイエット。食品メーカーも続々と商品開発に乗り出し、今やあらゆる食品カテゴリーで「糖質オフ・ゼロ」を謳う商品が出揃った感がある。

 そうした中でも総合マーケティングサービスの富士経済の「ウエルネス食品の国内市場調査」によると、「糖質オフ・ゼロ市場」の9割以上を占めるのがアルコール飲料。たしかに「糖質オフ・ゼロ」商品として、第3のビールや発泡酒を含むビール類は今やすっかりおなじみとなった。

 とは言え「糖質オフ・ゼロ系ビール」の市場規模はここ数年、前年比マイナスが続いていた。健康のためとは言え、やはりビールは嗜好品。「せっかくなら“おいしいもの”を飲みたい」という消費者の心理がそこには垣間見える。

 だが、昨年3月には久しぶりに「糖質オフ・ゼロ系ビール」が前年比100%以上に伸長。結果として昨年度は月平均で前年比104%と堅調に推移し、この傾向は現在も続いている。

 その背景にあるのは、やはりコロナ禍だ。外での飲み会が減少し、「家飲み」の機会が増加したこと。さらに外出自粛によるコロナ太りへの懸念から、やや不本意ながらも糖質オフ・ゼロ系ビールを選んだ消費者が増えたことが推察される。

■消費者ファーストの使命感 味と健康の両立は本当に可能なのか?

 おいしさを選ぶか、それとも健康か。そのジレンマは常にユーザーに重くのしかかる。しかし食品メーカー各社が「おいしさと糖質オフ・ゼロ」の両立に使命感を持って挑んでいることも知っておいて損はないはずだ。

 ヘルシーなイメージのある和食だが、意外にも糖質が高いメニューが多く、みりんなどの調味料の糖質も気になるところだ。健康な人なら「それくらい目を瞑ろう」と思うかもしれない。しかし糖質制限が必要な糖尿病あるいはその予備軍は、今や日本人の5人に1人にものぼる。

 醸造調味料メーカー・キング醸造株式会社のマーケティング戦略課チーフ・大西祐次さんは、消費者ヒアリングを通して「料理酒やみりんを使わない料理は味気ないけれど、健康には変えられない」と諦めている人が想像以上に多いことにショックを受けたという。

 みりんや料理酒といった、一般家庭で長年にわたって愛用される商品を持つ同社だが、「料理に欠かせない“調味料”に取り組んできたメーカーとして、おいしさを我慢している人を見過ごすわけにはいかない」と一念発起。2017年より他社に先駆け、料理酒を始めとした「糖質ゼロシリーズ」を開発・発売してきた。

 重要なのは「糖質ゼロとおいしさの両立」だが、みりんと同じように調味料『甘みとコクの糖質ゼロ』は、味覚センサーで『日の出みりん』と同等の味バランスになるまで開発にこだわったという。

 基礎調味料まで糖質ゼロを選ぶ人は少なく、マーケットは小さい。それでも自宅で糖質制限食に取り組むユーザーの「これがないと我が家の味にならない」といった声がある限り、「おいしい糖質ゼロ・オフに挑み続けたい」と大西さんは使命感を燃やす。

■調味料でのノウハウを使ってアルコール飲料の“ゼロ”へ挑む

 醸造調味料のほかにも糖質制限を求める人に向け、ポン酢やドレッシング、ケチャップなどを開発してきた同社。今年9月新たにアルコール飲料として初めて糖質に挑んだのが「梅酒」だ。

 梅酒は、まろやかな甘さと爽やかな酸っぱさが人気で、アルコール飲料の中でも特に糖質が多く含まれる。そうした高いハードルだからこそ挑む意義があるとして、同社では2018年に“糖質ゼロの梅酒”の開発も着手。

 ところが「甘み」「コク」「酸味」のバランスで納得の行くおいしさに至ることができなかったことから、思い切って「糖質オフ」にシフト。原材料の構成や配分を変えて何度も試作を重ね、約3年かけてたどり着いたのが新発売された『糖質オフ梅酒900mlスリムパック』の糖質85%オフ・カロリー55%オフという領域だった。

 原材料には梅のトップブランド・和歌山県産南高梅を100%使用。植物由来の甘味料を合わせることで、ノーマルな梅酒と遜色のないすっきり甘酸っぱい飲み心地を実現した自信作だ。

「開発には生の梅の果実を使うため、試作ができるのは年に1回。このまま時間ばかりかけてしまうよりは、まずは極限までの糖質オフと味のクオリティの両面からアプローチして商品開発し、1つの完成度に至ったと判断しました。もちろん“糖質ゼロの壁”への挑戦は今後も続けますが、一方で食品メーカーとして“おいしさの提供”も諦めるわけにはいきません」(製品開発課チーフ・押部美穂さん)

 糖質制限を必要としている人たちの“切実な声”から始まった、糖質ゼロへのチャレンジ。同社をはじめ、食品メーカー各社は「糖質オフ・ゼロはおいしくない」というイメージが根強くあることを熟知している。だからこそ「糖質オフ・ゼロ」を謳う商品ほど、“おいしさの追求”に尽力してきた。糖質オフ・ゼロに偏見を覆し、食品メーカー各社の開発力が超える日が来るのも近い。