『キングオブコント』優勝を目指して、昨年4月に上京した芸歴10年目の男女コンビ・蛙亭。東京でさらにセンスを磨き、経験を積み重ねた2人は先日行われた『キングオブコント2021』決勝に進出。常々口にしている“優勝”という目標は、来年に持ち越すこととなったのだが、長年応援してきたファンも、決勝で初めて見た視聴者にも強烈なインパクトを与える、最高の形でトップバッターを堂々と務めた。

【写真】『キングオブコント2021』王者となった空気階段

■決勝初進出ながらも「“優勝”したい」 イワクラが語る中野への信頼

 筆者は過去に2回、蛙亭に取材をしたことがある。1度目は今年2月、上京して10ヶ月ほど経った頃だったが、初めて2人と対面して「とにかく控えめなコンビだな」との印象を持った。低姿勢な取材の応対ながらも、その頃から「“決勝進出”ではなく“優勝”したい!」と、目標は控えめではなかった。大阪への感謝の気持ちもしっかりと持ちながら、今は東京にかわいがってもらっているという話ぶりで、細々とした声で語るイワクラの姿も、強く印象に残っている。

 2度目の取材は、4ヶ月後の6月。会った瞬間に、イワクラの雰囲気がとてもいい方向に変わっていたように感じた。この間、劇場出番や単独でネタを磨きつづけることはもちろん、たくさんのメディア出演を重ね、謙虚さは持ちつつ、どこかみなぎっている自信が伝わってきた。この取材でも『キングオブコント』優勝への揺るぎない決意を語ったが、同じ回答でも、今回のほうが、意志を強く持っていたように感じられた。『アメトーーク!』の「生きづらい芸人」に出演していたことも思い出し、取材後に思わずイワクラに「人見知り直りました?」と言ってしまったのだが、照れながら「話さな、やってけない世界でした」との答えが返ってきた。その声は、1度目の取材時に比べ、かなりはっきりとした声量となっていた。

 2回の取材で、「目標は優勝」ということ以外で共通していることがあった。それは、イワクラが中野に対し「頼もしい」と語っていること。中野の演技力や、コンビそろってのテレビ出演時に「そう感じる」のだと褒めていた。演技力は、蛙亭のコントを観れば一目瞭然なのだが、平場での頼もしさを『キングオブコント2021』で再認識した。

 トップバッターでのネタ終わり、蛙亭の第一声は「トップにふさわしいネタでしたよねぇ」という、中野の自信みなぎるひと言。コント前の紹介VTRでは、イワクラの「優勝します」に対し、中野が「大丈夫ですよ。僕がいるんでね、蛙亭には」と堂々と口にしている。どちらも、キャラクターを意識したフレーズにもとれるが、一貫した頼もしさを感じたのは確かだ。

■唯一の女性出場者、イワクラのカッコよさ かまいたち山内も「個人的MVP」

 トップバッターとして出場し、確かな笑いで高得点を叩き出した蛙亭には、各所から賞賛の声が挙がっている。審査員のかまいたち・山内健司は、放送後に「個人的MVPは蛙亭」とツイートしていたが、トップバッターの重責に見事に応え、今大会の大きな盛り上がりの立役者となったのは間違いない。特に感動したのが、今大会唯一の女性出場者となったイワクラが、ひとりで板付登場した最初のシーンだ。

 緊張することは当然である憧れの舞台で、コント衣装を身にまとい、ひとりで板に立ち、せりふを発するイワクラの姿を見て、私はテレビ画面を見ながら思わず涙ぐんでしまった。性別が関係ないのは重々承知した上で、コント日本一を決める舞台のトップバッターという重役を、イワクラが一身に背負っているかと思うと、心にこみ上げるものがあった。

 5組目に登場したニッポンの社長の点数が発表されるまで、3位までが座ることができる暫定ボックスに残っていた蛙亭。今回、ツイッターでは暫定ボックスの様子が配信されていたのだが、その時のイワクラの神妙すぎる表情を見て、SNS上では「イワクラさんの表情が……」と心配するコメントを残すファンも少なくなかった。

 時間の都合上、敗者コメントも放送できず、その後のイワクラが不安だったが、paraviで放送された『キングオブコント2021大反省会』で、MCのバイきんぐ・西村瑞樹、かまいたち・濱家隆一が2人のもとを訪れると、そこにはゴリゴリのコントで出迎える蛙亭がいた。落ち込む様子を見せるわけでもなく、あえてケロッとするわけでもなく、コント師としての姿を見せた2人を見て、心に残っていた不安はすぐにかき消された。蛙亭はくやしさを乗り越え、次に進んでいた。

 『キングオブコント』翌日に生配信された自身のYouTubeチャンネル『蛙亭のケロケロッケンロール』内の動画では、暫定ボックスにいた時の表情に対し、イワクラは「緊張感もあったけど、普通にめっちゃ体調悪かったの。めちゃくちゃお腹痛かったの(笑)」「けっこう油断してた」と笑い飛ばした。「優勝できなかった、クソッというよりは、学ぶことがいっぱい。本当にいろいろ勉強になって、吸収できることがあったので、今は胸を張らせてもらえそうです」と振り返った。

 生配信の最後に「来年優勝しますので、よろしくお願いします」と言っていたが、「したい」ではなく「します」と断言するあたりに蛙亭らしさを感じる。さらにネタを磨きあげ、蛙亭がキングオブコントを優勝する未来を心待ちにしたい。

(文 佐々木笑)