現役の漫画家でありながら、修学旅行や林間学校などの行事に同行する看護師、通称「ツアーナース」でもある明(みん)さん。その著書であるコミックエッセイ『漫画家しながらツアーナースしています。』が、看護師や先生、ママたちの間で話題だ。webメディア『よみタイ』で連載されていた本作には、明さんがツアーナースの仕事中に体験した子どもたちの病気やケガにまつわるエピソードが、ハートフルなタッチで描かれている。笑いあり涙あり、さらに楽しみながら医療知識や対応法も学べる本作が生まれたきっかけと、そこに込められた思いを聞いた。

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■「病気やケガ、命は、看護師だけでは守れない」伝えたいのは“自分で守る大切さ”

──日々の生活に潜む危険や、危ない目に遭ったときの対策などが、学校行事を通じてわかりやすく描かれています。親や先生にとってもためになる情報ばかりです。

【明さん】ツアーナースの仕事を始めて、「病気・ケガの予防や命を守ることは、看護師だけでは無理」ということを痛切に感じました。病院で勤務していた頃にも感じてはいたのですが、もっと日常生活に近いところでの看護を経験したことで、より強く感じられて。そのことが、『漫画家しながらツアーナースしています。』を描くようになった動機かなと思います。

──日常生活の中で、危険や対策を伝えたいというお気持ちが強くなったんですね。

【明さん】看護師として旅行に同行することで、「看護師さんがいる」という安心感を持ってもらったり、何かあった時の備えとなったりすることはできます。でも実際は、薬を間違えるのも、ケガをしてしまうのも、病気が悪化してしまうのも、看護師の目が届かないところで起こることがほとんどです。

──看護師さんにも、どうにもできない部分です。

【明さん】どんなに予防策を練ったとしても、飛び越えて危険に飛び込んでいってしまう子はいます。そもそも、危険だと知らない子もいます。そういった体験から、「自分で自分を守れる力」の大切さを実感しました。その力を備えてもらうための手助けとなればいいな…というのが、この作品に込めた願いです。

■目線を合わせて、笑顔は目元から、声のトーンや座る位置まで…、子どもが安心できる存在に

──子どもたちが安心できるように、どんなことを心がけていますか。

【明さん】まずは、話しかけやすい看護師さんになり、訪れやすい保健室を作ることです。そのために工夫できることはたくさんあって、服装やメイク、表情、声の高さや話す速度、姿勢などを意識するだけでも印象は変わります。とくに、目元から笑うことや、子どもたちと話す時は、できるだけ目線を合わせることなどを意識しています。座る位置によっても、話しやすさって引き出せるんですよね。対面だと緊張しやすいとか、相手から90度の位置だと自然な会話がしやすい、横並びだと親密さが増すなど。話を聞く時は、そうした知識も活用しています。

──話しかけやすい雰囲気作りが重要なんですね。

【明さん】あとは、子どもたちがいざ助けを求めようとした時に、どこに行けばいいか、誰に言えばいいかが明確だと、「やっぱりいいや」「諦めよう」という気持ちを減らすことができます。そのために、宿泊行事の最初にしっかり挨拶し、目印となる救急バッグは常に持ち歩く、みんなからわかりやすい場所にいる、なども心がけています。

──子どもの目線で、細かな工夫をたくさんされていらっしゃるんですね。

【明さん】それから、先生たちとコミュニケーションを取ることも大事にしています。「この看護師さんに話しても大丈夫かしら?」と不安を与えたり、「こんなことで看護師さんを煩わせちゃいけない…」と気を使われたりすることがないように、少しのことでも気になることを相談してもらいたいからです。いざという時、私も先生を頼りやすくなりますしね。

──子どもがサインを発信しやすい環境作りについて、アドバイスをいただけますか。

【明さん】ツアーナースは、あくまで宿泊行事の補助的な存在で、環境作りは先生や旅行の主体者がメインで行います。なので、アドバイスといえるほどのものはなくて…。でも必要なのは、先ほどのような細々とした配慮や思いやりだと思っています。子どもも大人も関係なく、「信頼できる」「優しそう」「話しやすい」「この人なら」という関係性を作れるかどうか。といっても、私は疲れるとその意識がなくなり、仏頂面になることがよくあるので、まだまだ未熟者です(笑)。

■たくさんの出会いで生まれたものを「もっともっと描きたい」

──読者からは、どのような反響がありましたか?

【明さん】作品を描くことで、多くの方からたくさんの体験を聞く機会が増えました。作品に登場した子と同じような体験をした方、まったく逆の体験をした方、共感してくれた方、反発する方、いろいろです。本当にいろんな方がいるなと思いました。

──今後、どのような作品を描いていきたいですか。

【明さん】『漫画家しながら~』に描けたエピソードは、ほんの一部です。なので、これからもよりたくさんの方に出会って、その中で生まれた思いや考え、温かさや優しさを、もっともっと描いていきたいなと思っています。
文/渡辺麻美