NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』で、ヒロインの相手役・菅波光太朗を演じている坂口健太郎。菅波は医師であるため、劇中では「菅波先生」や「先生」と呼ばれることが多いが、奥手で若干ヘタレ感のある役どころからか、SNSでは「菅波」と呼び捨てにされ、ヒロインを差し置いて視聴者ともっとも距離が近いキャラとして認知されている。また、ヒロインとの恋愛模様の進展を視聴者にとても心配されていて、少しでも関係性に変化が起こると「#俺たちの菅波」というハッシュタグとともにさまざまな意見が寄せられる。ヒロインの成長を見守るというのが朝ドラの通説だが、それだけでは綺麗すぎる側面があるのも事実。視聴者からから見守られるキャラは、朝ドラにおける新たな礎と呼べるのかもしれない。

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■ヒロインよりも視聴者との距離感が近い? 坂口本人も「僕だけ菅波。面白いですね」

 現在『おかえりモネ』は、最終章となる“気仙沼編”に突入。気仙沼編に坂口健太郎演じる“菅波”が初登場した際には、「久しぶりの菅波登場」「俺たちの菅波が帰ってきた」「やっと菅波先生補給できた」などと、SNSで歓喜の声があがったほどの人気ぶりだ。

 さらに、9月24日放送の『あさイチ』に坂口健太郎が出演した際には、坂口自身が“菅波人気”について言及する場面も見られた。「#俺たちの菅波」をはじめ、「ドヤ波」「デレ波」「ポヤ波」「菅波砲」「休菅日(菅波が登場しない回)」など、Twitter上で数多くのバリエーションのハッシュタグが生まれていることが紹介されると、「こんなに種類があるとは…」と驚きつつ、「ここまで大きくなるとは思っていなかったです」としみじみと語っていた。また、視聴者から大きな反響を集めたのは、同番組にVTR出演したヒロイン・永浦百音役の清原果耶とのやりとり。坂口健太郎について語るなかで、役名に関しては清原も「菅波」と呼び捨てに。これを受けて坂口は「ほかの役名は『さん』付けなのに、僕だけ菅波。面白いですね」と笑顔をのぞかせ、このエピソードにはSNSで大きな反響が集まった。

 どこかヘタレっぽさを感じさせるキャラで、ヒロイン・百音との関係性も視聴者が驚くほど“ゆっくり”と進んでいく。だからこそ、じれったい思いを抱きながらも、菅波の行動を視聴者はついつい応援したくなる。先日放送された、ヒロインが父親に菅波との関係性を聞かれ「いずれちゃんとします」と堂々と答えたシーンでは「菅波がヒロイン説あるんじゃないか」「百音と出会って世界が変わったと言っていたし…」と、視聴者にはヒロインよりも丁重に(!?)扱われている節がある。放送後に同作の関連ワードが次々とトレンド入りするなど、ムーブメントを起こしているのは、紛れもなく坂口健太郎演じる菅波の影響によるところが大きいといえる。

■本来は“味方”であるはずの身内キャラとの対峙 だからこそ一層輝いて見える菅波の存在

 ドラマ放送開始当初、菅波とよく比較されていたのが、King & Princeの永瀬廉が演じるヒロイン・百音の幼馴染である及川亮だ。亮はイケメンで優しくて、女性にとにかくモテるが、東日本大震災に被災して母親を亡くし、現在は父親の面倒を見ているという複雑な役どころだ。百音に対しての接し方も完璧かつ好印象で、奥手の菅波との対比となるような演出も多く見られた。しかし、ずっと想いを寄せていた百音に気持ちを伝えたが受け止めてはもらえず、最終章の気仙沼編で地元の気仙沼に戻ってきたモネに、思わず冷たく突き放すような言葉を投げかけたことも。この亮の態度には、「ここにきてまさかの闇堕ち?」といった反応が寄せられていた。

 蒔田彩珠が演じるヒロインの妹・未知は、常にヒロインと立場を比較されることにイラ立ちを感じ、姉につらくあたることもある。姉のモネだけではなく、菅波に対しても容赦のない言葉を放ってしまうキャラクターだ。

 菅波とヒロイン・百音、そして、幼馴染の亮と妹の未知、この複雑な四角関係で物語は展開していく。これまでの朝ドラであれば、ヒロインを完璧に理解して受け入れて助ける幼馴染や家族といった“身内キャラ”だが、本作では身内だからこそ抱く不安や不満をリアルに描いている。視聴者が客観的に見た際、きれいごとでは済ませられないヒロインの言動や行動を強調する彼らの存在と菅波・百音の比較があるからこそ、ストーリーが伝わってくる。そして、ヘタレっぽいところがありつつも懸命にヒロインを理解しようとする菅波のキャラは、視聴者の目により一層輝いて映るのだろう。

■清く美しい『朝ドラ』に生々しさも 菅波は物語を受け入れる緩和剤としての役割に

 底なしの明るさやパワーと元気に溢れるヒロイン、そしてヒロインを支え、楽しく幸せな家族像が描かれることが現在は多くなっている朝ドラ。ヒロインが必死に成長していく姿を、物語を通して一緒になって追うことができるのが大きな魅力のひとつではあるが、その物語はときに人々にとって“清く美しすぎる”場合もある。

 そんななかで菅波は、もっとも人間味に溢れ、誰もが感情移入をしやすい“リアル”なキャラクターだ。これまでのヒロインの相手役といえば、ヒロインを陰で支えながら救う“ヒーロー”的な側面があったが、菅波はいまいちヒーローにはなりきれずに、弱さや苦悩もたくさん見せてヒロインとともにステップアップしていく役柄だ。

 カッコよくて最強なキャラばかりが登場するのでは物語は成り立たない。弱さや情けなさが目立つキャラだからこそ、ここぞという大事な場面で見せる“カッコよさ”がより引き立つ。それを体現しているのが『おかえりモネ』における菅波だ。実際の社会においても同様で、カッコよくは立ち振る舞えないと自覚しながらも、自分なりに行動して最善を尽くすような人生こそが、もっとも多くの共感を生むのではないだろうか。ヒロインをどこまでも実直に想い続け、見栄を張らずに自分の役割に徹しきる菅波のキャラが、今までにはない新たな朝ドラという壮大な物語を作っていく一助になっているのは間違いない。