ルーマニア・ブカレストのライブハウス“コレクティブ”で2015年10月に実際に起こった火災を発端に、明らかになっていく製薬会社や病院、そして政府や権力へとつながっていく衝撃的な癒着の連鎖を題材にしたルーマニアのドキュメンタリー映画『コレクティブ 国家の嘘』(公開中)より、本編映像が一部解禁された。

【動画】映画『コレクティブ 国家の嘘』本編映像

 “まるでリアル『スポットライト 世紀のスクープ』だ”とも評される本作は、命の危険を顧みず真実に迫ろうとするジャーナリストたちの奮闘に思わず手に汗握るだけでなく、日本を始め世界中のあらゆる国が今まさに直面する医療と政治、ジャーナリズムが抱える問題に真っ向から迫っており、ドキュメンタリーでありながら本年度アカデミー賞のルーマニア代表として選出され、国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の2部門でノミネートを果たした。そのほか、世界各国の映画祭で32もの賞を獲得している。

 “コレクティブ”火災で深刻な火傷を負った患者の多くはルーマニア国外の病院に移送され、ルーマニア国内の病院では比較的症状の軽い患者が治療を受けていた。政府は「病院はヨーロッパ基準で最高の治療を行っています」などと説明する一方で、症状が深刻でないはずの患者が国内の病院で次々死亡していく。その理由について、とあるうわさをキャッチしていた地元のスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長カタリン・トロンタンたちは、いち早く調査を開始する。

 解禁されたこの本編映像は、トロンタンと記者達が、彼らのオフィスで製薬会社が病院に納めている消毒液が薄められているという驚愕の事実を確認し合うシーン。

 その事実を複数の情報源から突き止めた記者は「細菌じゃなく人を殺してる」と語り、殺人には加担できないとその製薬会社を辞めた情報源もいるという。そして記者のひとりが「多くの読者はこう思うでしょうね、”ラボで消毒液の分析を”と」と、事実解明への次なる一手を提案。カメラは、真実にたどり着いた記者達が言葉を失いながらも会議を続ける、彼らの内面が伺える表情を至近距離から捉えていく。このシーンの後、彼らはこの製薬会社が作った消毒液を分析し、そのスクープ報道により事件は新たな局面を迎えることになる。

 アレクサンダー・ナナウ監督は、以前から忖度なき調査報道に定評のあったガゼタ・スポルトゥリロルの調査チームが火災についていち早く取材に乗り出したことを知り、トロンタンに密着したい旨をオファー。しかし、取材で得た情報や告発者、そして自分達の身の安全を守るという理由で当初は断られたという。後に彼らから信頼を勝ち得た監督は、この事件の調査報道を牽引したガゼタの取材チームに密着。撮影もほぼひとりで行った監督は、本作がフィクション映画ではないかと思わず錯覚せざるを得ないような驚愕の場面に次々と立ち合い、カメラに収めている。

 監督は、当初は火災の犠牲者や家族の心境を理解したいと彼らに寄り添う立場で撮影をしていたが、「同じ状況が自分の人生を襲うかもしれないと考え、もっと理解し、深く掘り下げ、手を伸ばし、隠された向こうにあるものを撮影したいと思うようになりました。事件の公式見解を疑うごく少数の人たちの声に耳を傾けていくことは、自然な決断でした。そこで火災の直後から、事件における当局の役割を調査し始めた、ガゼタ・スポルトゥリロル紙の記者たちからなる調査チームのオフィスは、私が理解したいストーリーの撮影をするには最適な場所だったのです」と、トロンタン達に密着することにした理由を語っている。