オリコン顧客満足度の住宅ローンランキングにおいて、調査を開始した2011年から11年連続となる総合1位を獲得しているソニー銀行。外貨預金ランキングでも20年、21年と2年連続で総合1位を記録するなど高評価を得ており、21年3月末の時点で住宅ローン残高が前年度末から約22%増の2兆3668億円を計上し、コロナ禍にあっても好調を維持している。高い顧客満足度と好業績を両立する背景には何があるのか。21年6月に代表取締役社長に就任された南啓二氏にお話をうかがった。

【一覧表】“顧客満足の高い”住宅ローン 総合ランキング

◆常に顧客視点を重要視、ソニーの遺伝子と精神性が息づいた「ソニーの銀行」

 ソニー銀行は、開業初年度より来店不要でインターネットと郵送で手続きが完結する住宅ローンを提供。また、近年はAIを活用したスピーディーな自動審査をいち早く導入するなど、顧客にとって利便性の高いサービスを次々に投入してきた。

 oricon MEが発表する、オリコン顧客満足度 住宅ローンランキングでは、調査開始から現在に至るまで、全国の名だたる地銀やメガバンク系を抑えつつ11年連続で満足度総合1位をキープ。その原動力は、実は<ソニーの遺伝子>とも呼べるマインドにあると南社長は語る。

「常に顧客視点が重要視される、それが当たり前の考え方であり、発想のベースになっています。どうすればより多くのみなさんに選んでいただき、喜んでいただけるかをまず考える。これはハード機器なり音楽コンテンツなり金融なり、さまざまな領域での事業を展開するソニーグループ(※1)の中で、広く共有されている価値観。

 私たちはネット銀行ですから、いわゆるパワーセールス的なことは基本できません。お客さまが選びたいものを選ぶわけで、当然ながら良いものでなければ候補にも選んでいただけません。さらにプラスできる価値として、私たちはたとえば住宅ローンを借りていただくお客さまには、必ず担当を1対1で付けてコミュニケーションしています。良い商品やサービスの提供を前提としつつ、社員1人ひとりの顔が見えてくるような丁寧な対応があることで、結果として高く評価していただけているのではないかと考えています」(南氏・以下同)

 南氏は都市銀行でのキャリアを経て大手ITに移籍後、ソニー銀行へ入行。いわゆるプロパーのソニー系人材ではないからこそ、その特殊性に感動した経験があるのだという。

「ソニー銀行に入った後の一時期、ソニーペイメントサービス(旧・スマートリンクネットワーク)で仕事をしていたことがあるのですが、システム障害などが発生して怒られた経験を持っています。ですが、その怒られ方が基本的に、『このトラブルで何人のお客さまが困ったと思ってるんだ!』というように、お客さまの期待に応えられず、きちんとサービス提供できなかったことを理由に怒られるわけです。これはやはり、ソニーならではの文化であり、怒られていてもちょっと爽快ですらありました」

◆至るところで生まれる相乗効果、ソニーグループであることの強み

 生保や損保などを含む金融持株会社は、21年10月よりソニーフィナンシャルグループ株式会社という名称になるとアナウンスされ、より有機的な横のつながりを活かした事業展開も期待されている。

「ソニーグループとの連携もより強化されてきています。アプリやUIのブラッシュアップといったデザイン性アップや、きれいに物事を整理したりコンセプトを固めたりする際などには、ソニーグループのクリエイティブセンターに相談してアドバイスをもらうなど、至るところに「ソニーの考え方」が入ってきています。

 テクノロジー面でも、ソニーグループの研究開発組織であるR&Dセンターの協力で、コロナ禍でも<テレプレゼンスシステム(※2)>を活用したリモート相談を実施するなど、良い相乗効果が生まれつつある。顧客第一を基本とするそれぞれのスペシャリスト企業が集まって動くことでの手応えは、確実にあります」

 昨年来の新型コロナ感染拡大にあっても、住宅ローン残高で年間増加額として過去最高の約22%増を達成できた背景には、どのような取り組みがあったのだろうか。

「リモートワーク推奨や外出自粛要請などで在宅時間が増えたことで、改めて住環境の大切さを考える機会になった方も多かったのだと思いますが、実はコロナ禍だからといって特別なことはやっていないんですよ。

 ただし、縮退については2割ほどで済ませ、業務の稼働を8割以上は維持できた。これは一般社員サイドからの、出社が必要な仕事についてはちゃんと通常通りに進めたい、しっかり対応してやりきりたいといった声に押された結果です。

 管理・営業部門は極力在宅に切り替えつつ、フロアに十分なスペースとディスタンスを確保し、事務ラインなどを稼働させて対応にあたりました。むしろその<変わらずいつも通り>の対応が評価いただけたのかもしれません」

◆新たな商品・サービスでも存在感を出すのが今後のミッション

 ソニー銀行は2021年6月、開業から20周年を迎えた。節目のタイミングでの社長就任となった南氏には、今後についてどのような展望があるのだろうか。NFT(非代替性トークン)や暗号資産などの新たな概念の登場や、2022年度に検討されている税制改正の行方、また老後2000万円問題以降での資産形成など、金融にまつわる動きが注目されるなか、ソニー銀行はどこを目指していくのか。

「単純に業績向上だけを考えるならば、すぐにでも取り組める事案はあるかもしれません。ですが、その判断の大前提となるのは、やはりあくまで、<お客さまのニーズに応えられるものかどうか>ということになります。

 たとえば住宅ローンでは、借り手であるお客さまがライフステージに合わせて返済額を調整できるような、より自由度の高いダイナミックな仕組みを実現できるかもしれないわけです。また、不動産業者さんや代理店さん、あるいは司法書士さんなども含めた、広く住宅にまつわるエコシステム全体を<お客さま>と捉え、そのニーズに応えて満足度を高めるような取り組みも進めていけたらと考えています」

 開業当時から画期的なサービスを展開し続けてきた同行。前任者たちが構築してきた信頼と実績を引き継ぎつつ、新たなチャレンジを続けていくのだ、という南氏の強い決意がどのように実を結ぶのか、引き続き注目したい。(インタビュー・文/及川望)

※1 ソニーは21年4月、グループ本社機能にフォーカスした会社として、ソニーグループに名称変更。エレクトロニクス事業を担うソニーエレクトロニクスが「ソニー株式会社」の商号を継承した。

※2 4K超解像技術やテレプレゼンス環境に最適化した視認性制御技術、および4K映像の縦型配置に関するノウハウを活用することで、離れた場所同士であっても“同じ空間にいるような自然なコミュニケーション”を実現するシステム。

南啓二(ソニー銀行株式会社 代表取締役社長)
みなみ・けいじ●徳島県出身。1990年、早稲田大学大学院を修了、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。2008年よりヤフー株式会社へ。10年、ソニー銀行株式会社へ入社。マーケティング部長を経て株式会社スマートリンクネットワーク(現・ソニーペイメントサービス株式会社)取締役執行役員常務、取締役専務執行役員。19年よりソニー銀行で執行役員・執行役員常務を歴任、21年6月より代表取締役社長に就任。趣味はランニングで、フルマラソン経験もある。