発売から今年で50年を迎えたハウス食品の『ククレカレー』。当時、「おせちもいいけどカレーもね!」というキャッチコピーは大きな話題を呼び、“レトルト”という新たな食生活が普及する中で、なくてはならない存在となった。現在も年代を問わず多くの人から愛される同商品の誕生秘話と、知られざるトリビアとは? 同社・食品事業二部の三島誠さんに話を聞いた。

【貴重写真】カレーの前に発売された『ククレシチュー』、ほか50年のパッケージ変遷

■簡便化ニーズと洋食への憧れ…レトルト以前に誕生した商品があった

 ハウス食品初のレトルト食品『ククレカレー』が発売されたのは、1971年。商品名の由来は、調理しないで食べられるというハウスの造語「Cook-les」で、当初は今でいう中辛タイプの1種のみの販売だった。
「1963年に『バーモントカレー』を発売し、日本の家庭で簡単に作れるカレールウを提供してきました。『バーモントカレー』のヒットは、当時の簡便化ニーズと洋食への憧れをうまく捉えた背景があると考えています。そのような中、さらなる簡便化を実現するために調理済みカレーとして『ククレカレー』を発売するに至りました」(三島さん)

 しかし、実は一番最初に発売したのは、ククレ「カレー」ではなく、1970年に誕生したククレ「シチュー」だったという。さらに、1975年には『ハウスククレ ミートソース』『ハウスククレ イタリアンソースナポリ風』と、2品のパスタソースを発売。現在は終売しているが、当時は食生活の洋風化によるスパゲッティの普及がめざましく、日本人に親しまれていたミートソースとイタリアンソースを商品化した経緯がある。

 新たな食生活が広がりをみせる中、『ククレカレー』の発売当初に話題を呼んだのが、「おせちもいいけど、カレーもね!」という斬新なキャッチコピーだ。
「当時はまだ、コンビニエンスストアも少なく、正月三が日はスーパーマーケットが休みで、買い物ができない環境にありました。年末のうちに買置きしてもらう需要を狙うことと、お正月におせち料理にあきる子どもたちに大好きなカレーを食べてもらうことを訴求するため、生まれたキャッチコピーでした」

 このキャッチコピーは、1976年年末年始のお茶の間に流れ話題を集めた。当時人気を集めていたキャンディーズ出演ということ、正月にカレーという斬新な組み合わせはインパクトがあり、商品の知名度を大きく上げる一因に。同社としても、その頃のレトルトカレー商戦に本格的に参入していくために、一役をかった戦略だっただろう。
「その後も『おせちもいいけど、カレーもね!』のキャッチコピーは、ククレカレーはもちろん、レトルトカレーのキャッチコピーとしてハウス食品の発売するレトルトカレーのCMで度々登場しています」

 商品パッケージも時代によって変化。1983年に発売した『大盛りククレ』は、食べ盛りの世代をターゲットとし、ラグビーやテニス、カセットレコーダーといった写真にカレーを合わせたパッケージで販売した。現在のデザインにあるひし形のマークは、1996年から採用されており、“ククレカレーらしさ”を伝えるデザインとして現在まで定着している。

■コロナ禍に起きた特需で休売の危機も 商品が愛されていることを再認識

 コロナ禍での緊急事態宣言により、レトルト食品の需要は急激にアップ。レトルトカレーは、昨年3月の学校休校のタイミングで異例の特需が発生し、同社でも3月期の第4四半期(1-3月)の売上前年比は、121.8%に増加した。
「昨年4月から7月は、特需の影響で休売を余儀なくされました。その間に終売を心配する問い合わせも多数ありました。ククレカレーは皆さんに愛されている製品だと再認識し、早急に再発売を進めました」(三島さん)

 時代ごとの生活様式や社会背景に合わせて進化を遂げてきたレトルトカレー。単身世帯の増加や家庭人数の減少、更に年齢構成などの変化とともに、近年需要の高まりを見せている。コロナ禍で頻繁に買い物に出られなかったり、家での食事の機会が増えたことが要因だ。

 具材肉の向上や、素材や香辛料の味わいを活かす製法の開発など、商品もこの50年で改良を加えられて進化。2015年には、箱ごと電子レンジで温めればよいだけのパッケージも発売され、より簡単な調理で味わえる商品となった。湯せんからレンジ加熱に変えることで調理時間が短縮され、家庭でのCO2排出量が約8割削減できる(ハウス食品グループ本社算出)ことから、同社では現在もレンジ対応商品を重点的に進めている。

■展開するすべてのカレーに通じる技術 『ククレカレー』が他商品に与えた影響

 競合も多く、商品の売れ変りも激しいレトルトカレー市場において、『ククレカレー』が生き残れたのは、常に消費者の声に耳をかたむけ、風味品質を守り続けてきたからだと担当者は語る。
「時代とともにお客様の志向は変化していくので、現在は販売していないアイテムもあります。しかし“ククレブランド”を通して様々なトライをしてきたからこそ、多くのファンに支えられているのだと考えています」(三島さん)

 また、同商品の発売にあたって必要だった多くの技術は、同社のすべてのカレー商品の基盤にもなっている。缶詰メーカーや、レトルトパウチメーカーと協働することで開発された技術や、レンジ調理してもおいしさが変わらない味作りは、『ククレカレー』の発売によって確立されたものなのだ。

 同社がレトルトカレー商品を作る上で大切にしているのは、「いつでもおいしいこと」だ。製造後すぐではなく、ある程度保管してから食べることも多いのがレトルト食品の特徴のひとつ。その状況であってもおいしさを感じられるよう、保存性を考慮した設計や保存時の風味を確認しつつ、商品を送り出している。

 50年の歴史がありつつも、現在も「お客様へ時代にあった『美味しさ』 『簡便性』 『健康』を届ける」というビジョンを掲げながら、あたりまえだった“湯せん”から“レンジ調理”へとシフトし、環境にも配慮した研究開発を進めている。今後も、新たな“あたりまえ”を生みだしつつ、進化していくに違いない。