俳優・監督・プロデューサーとして半世紀にわたって映画業界をけん引してきたクリント・イーストウッド(91)。その輝かしいキャリアと偉業を通して、多くの生涯功労賞を受賞し、映画界では生きる伝説となっているイーストウッドが遺したいメッセージとは? イーストウッド監督デビュー50周年にあたる2021年、映画監督作品は40作目となる記念すべき節目に、映画『クライ・マッチョ』が、来年1月14日に日本で公開されることが発表された。

【動画】映画『クライ・マッチョ』予告編

 俳優として誰もが知るキャラクターを生み出すだけでなく、監督として数々の名作を手掛け続け、その類まれな才能は老いることは無く、より高みへと昇華していく。主演・監督した『許されざる者』(1992年)と『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年)では、それぞれ米アカデミー賞最優秀作品賞並びに最優秀監督賞をW受賞。『バード』(1988年)、『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』の3作品では、ゴールデングローブ賞監督賞を獲得(『硫黄島からの手紙』(2006年)は外国語映画賞受賞)。そして『グラン・トリノ』(2008年)、『アメリカン・スナイパー』(2015年)など、彼の代表作を挙げたらきりがない。世界中を見渡しても、歴史的にも、クリント・イーストウッドに並ぶほどの偉業をなし得ている映画人はいないと断言できる。

 最新作となる『クライ・マッチョ』は、N・リチャード・ナッシュの小説「CRY MACHO」(1975年)を原作に、イーストウッド自身が監督・主演・製作を務める。主人公は、かつて数々の賞を獲得し一世を風靡したロデオ界の元スター、マイク・ミロ(イーストウッド)。その栄光はいまや過去のこと。落馬事故をきっかけに、家族も離散、競走馬の種付けで細々と一人で暮らしていた。だがある日、マイクは元雇用人から、メキシコにいる彼の息子ラフォの誘拐を依頼される。メキシコからテキサスへ――その危険で壮大な道のりは、予想外の困難と思いがけない出会いが待ち受けていた…。

 本作の企画が最初に持ち上がったのは、実に40年前。原作を読んだ映画製作者のアルバート・S・ルディ(91歳、『ゴッドファーザー』『ミリオンダラー・ベイビー』)は物語に魅了されイーストウッドに話を持ちかけたが、イーストウッドがマイク役は時期尚早だと判断し、企画は頓挫した。しかし2019年、「期は熟した」と考えたイーストウッドがルディに連絡をとり、脚本を再検討することに。ついに映画化へと動き出すこととなった。

 脚本を練り直し執筆したのは、『グラン・トリノ』や『運び屋』の脚本も手がけたニック・シェンク。マイクを、イーストウッド自身の個性を生かしてさらにキャラクターを仕上げ、苦労と挫折を味わいながら、約束に固い不言実行の男を書き上げた。「クリントはこれからもアメリカの英雄として、不滅の男として語り継がれるでしょう」と長年の悲願を達成したルディは語る。ほかにも、編集にはジョエル・コックス(80歳、『グラン・トリノ』『アメリカン・スナイパー』)と、イーストウッド組が集結。イーストウッド監督の数々の代表作を彷彿とさせつつ、いままでの作品とは異なる側面も持ち合わせた本作は、まさに集大成にして新境地を拓いた作品となるだろう。

 解禁された予告編は、かつてロデオスターだったが今は落ちぶれているマイクが、元雇用人から息子ラフォを誘拐するように頼まれ、メキシコへと向かうところから始まる。親の愛を知らない、生意気な不良少年ラフォと出会い、そして二人が困難な道中のなかで少しずつ交流を深めていく様子が描かれていく。メキシコを横断する旅路のバックには壮大な景色が映し出されており、そしてマイクの新たな出会いも…物語をエモーショナルに盛り上げている。

 「昔の俺はすごかった。だが今は違う」「男は皆マッチョに憧れる。強さを見せつけたくて」と少年に話すマイクの言葉は、まるでイーストウッド本人が現代社会に生きる私たちに向けて語りかけているメッセージのようにも感じられ、常に第一線で活躍し時代を生き抜いた男=イーストウッドがたどり着いた、「本当の強さ」とは何かという答えを、今を生きる全世代に温かく届ける物語であることがうかがえる。少年ラフォを演じるのは、本作が長編映画デビュー作となる新たな才能エドゥアルド・ミネット。イーストウッドとのコンビネーションにも注目だ。