イタリアで開催中の「第78回ベネチア国際映画祭」オリゾンティ・コンペティション部門に選出され、現地時間9日午後2時頃(日本時間同日午後9時頃)に世界初上映された湯浅政明監督による劇場アニメーション映画『犬王』のキャストが発表された。

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 本作は、「平家物語 犬王の巻」(著:古川日出男)を原作に、室町時代に人々を熱狂させた実在の能楽師・犬王と、そのバディである琵琶法師・友魚の友情を、変幻自在のイマジネーションで描くミュージカル・アニメーション。キャラクター原案は松本大洋、脚本は野木亜紀子が務めた。

 発表済みのキャストは、犬王役のアヴちゃん(女王蜂)と、バディの友魚役の森山未來。

 今回、明らかになったのは、室町幕府第3代将軍で犬王を高く評価し、後援したと言われる足利義満役の柄本佑、猿楽の一座の棟梁である犬王の父親役の津田健次郎、壇ノ浦の漁村に暮らす友魚の父親役の松重豊。

 また、作品のカギとなる「古い面」の声を、現役能楽師として活躍する片山九郎右衛門・谷本健吾・坂口貴信・川口晃平が担当。足利家の従者や公家たちなど脇を固めるキャラクターを、石田剛太・中川晴樹・本多力・酒井善史・土佐和成らヨーロッパ企画のメンバーが演じている。

 柄本は「高校時代松本大洋先生の漫画には大変にハマっていました。まさか先生の画に自分の声を吹き込む日が来ようとは。光栄でした」。津田は「能楽がアニメになる…しかも湯浅監督で! 一体どんな作品になるのか?予想もつかない期待感のあるこの作品に参加できることがとても光栄です。アフレコの際に見た映像は、能楽がポップにエンターテイメントしてました。とても興味深い作品になっています。是非ご覧下さい!」と、それぞれコメントを寄せている。

■ベネチア国際映画祭、上映後のQ&A

 今年のベネチア国際映画祭で唯一、長編日本映画として選出された本作。湯浅監督現地入りし、上映後のQ&A応じた。

 湯浅監督は「今日はこの映画を観に来てくださってありがとうございます。このふたりのような若者がかつていたことを知ってもらうために作品を作りました」とあいさつ。続けて、「当時は生まれたときに生まれた場所で、その人の運命が決まってしまう時代でした。そのなかで上に行くには武士として身を立てるか、芸術家になるかしかありませんでした。犬王のとても明るい性格で、まったく諦めずに自分の夢を実現しようとしているところに感銘を受けました。犬王も友魚も自分のやりたいことを実現させようとした。そんな姿を見ると、自分も周りに左右されず自分の生きたいように生きたいと、勇気づけられます」と語ると、会場から拍手が起こった。

 また犬王のルックを松本の原案をもとに構築したことや、ユニークなロックオペラについて音楽を手がけた大友良英との制作プロセスなども明かした。

 「現代的なロックをイメージしたのですが、それを琵琶の音を使ってやるというところで大友さんはとても苦労されたと思います。先に絵がほしいと言われ、ストーリーボードとムービーを用意して送りました。そして音楽ができ上がり、歌入れの時にはアヴちゃんに歌詞をまとめてもらい、森山未來さんへ歌唱提案もあり、大友さんのコーラスが追加され、現在のような形の歌になりました。昔の音楽から始まり、犬王が踊っているうちにそれが徐々に変わり、ダンスも『雨に唄えば』のようなものがあったり、いろいろなものが混ざっていきます。それに伴ってキャストの二人も70年代80年代のロックミュージシャンのイメージを入れて歌ってくれてると思います」と語った。

 さらに犬王と友魚の友情について触れ、「誰かの理解者になってあげたい、誰か理解者がいた方がいい、そういう気持ちが込められています」と言った後、観客に向けて「どうか犬王と友魚の名前を覚えて帰ってください」と声をかけると、再び大きな拍手が起こった。