日々、モラハラ夫に抑圧されていた専業主婦・桜庭カナメは、交通事故により異世界で村娘・アヴァに転生する。前世の記憶を保持する彼女は、恋愛や結婚から距離を置き、静かで平凡な人生を歩もうと暮らしていたが、ある出会いから国の因縁や陰謀が絡んだ大きな物語に巻き込まれていく。マンガアプリ『comico』で連載中の『異世界で最後の恋と革命を』は、王道の異世界転生ストーリーでありつつ、随所に「女性の自立」や「結婚や恋愛の常識は本当に正しいのか」といった問いを考えさせる設定や描写が散りばめられている。南米在住という著者のKIYUMiさんに、この作品に込めた想いを聞いた。

【漫画】「は? 料理はお前の仕事だろ」咳き込む妻に高圧的な夫、苦しむ主婦に起こった驚きの展開

■日本にはモラハラの問題が山積み? 「日ごろのうっぷんを晴らして」

――たとえ高熱で寝込んでも、妻は育児と家事をこなすべき。そんなモラハラ夫と暮らす専業主婦が、異世界に転生して活躍する物語です。“モラハラ”をフックにした理由を教えてください。

【KIYUMiさん】主にSNSで、いろんな方の体験談を目にして、「ああ日本って、こんな問題が潜んでいたのか」と、シンプルにその流行に乗っかった感じです。今、モラハラを受けていると感じている日本人女性たちに、本作を読んでいただくことで、何かヒントを得たり、考えが変わったり、もしくは物語に登場するあのクズ夫(誠司)に向かって「ざけんなよ!!」って、日ごろのうっぷんを晴らしてくれればなと。また一部では、モラハラに対して少し誤解をしている方々もいらっしゃって、「それはモラハラではないと思いますよ」というメッセージも伝わればいいなと思っています。

――物語の冒頭から、読者のコメントには「主婦をなめんな」「ひどい旦那」などの声が上がり、第5話目「女の幸せとは」の回では「育児は24時間気が抜けないブラック企業」「育児は夫婦でするべき」というコメントもありました。南米在住ということですが、こうした読者の反響を見て日本の現状をどう受け取っていますか。

【KIYUMiさん】日本の現状については、複雑に思っています。多くの日本人男性が、育児に積極的ではないことに対してもですが、モラハラ夫を持つ妻に向かって女性が非難していることにも、お母様方の輪に入れず萎縮してしまったり、「妻の尻に敷かれてる」と男性に嘲笑されたりしている子連れのお父様がたにも…。

■「育児をする女性にはなぜ“イクメン”にあたる言葉がないのか」多様な価値観伝えたい

――物語の大筋には、男女平等、女性の自立という要素が盛り込まれています。このテーマを描こうと思われたいきさつは?

【KIYUMiさん】男女平等に関しては、性別が異なる時点で私は「平等」ではないと思っています。ですが、「対等」になることは可能だと思います。「ワンオペ」や「イクメン」という言葉がありますが、夫が仕事も育児も家事もしているのであればワンオペですし、育児をしている女性にはどうして「イクメン」のような言葉が無いのか不思議に思っています。

――「イクメン」という言葉に違和感を抱く女性も増えています。

【KIYUMiさん】女性の自立は、一定数の国で、今の時代だからこそできることでしょうね。昔は、女性が働くことを認めなかった時代もあったし、現代でも女性にはなんの権利もない国は存在します。既婚者でも、生涯独身でも、実家暮らしでも、ご本人が自分の人生をどう結論付けるかはご本人にしかできないことですよね。

――物語には、主人公のアヴァのほかに、ブリアンナ、エミリア、カイリーという4人の女性が登場しますが、それぞれ立場も考え方も異なりますね。

【KIYUMiさん】それぞれの結末も異なるように、価値観とか選択とか形って無限のはずなんですよね。人間って、わりと少数の概念に囚われがちで、知って初めて「ああこういう考え方があるんだ」と思うのはよくあることだと思います。

■クズ男との結婚…見抜けなかったのではなく「相手を一切疑わなかったから」

――人に優しく、芯の強い主人公・アヴァの「人間力」が魅力的です。一方で、恋愛や結婚を諦める少し残念な様子もうかがえます。アヴァのキャラクターに込めた想いについて教えてください。

【KIYUMiさん】アヴァ(桜庭カナメ)のモデルはいます。ちなみに、モラハラ夫の誠司にもいます。アヴァと似たような境遇の人なら、男女問わず誰もが「またあんな目に遭うくらいなら、もう結婚なんてしない!」と思うのが当然なんじゃないかと。現に、アヴァのモデルになった方は再婚せず、「やっと離婚できたことが嬉しくて嬉しくて」と言っています。

――スッキリ別れることができたんですね。

【KIYUMiさん】その女性は、裏表のないさっぱりした性格で、まじめで、いい行いもたくさんしてきて、強じんな精神力を持つ人です。「どうしてそんな人がクズ男と結婚したんだ」と誰もが思うでしょう? 相手のクズさを見抜けなかったのではなく、彼を一切疑わなかったからです。私の中でなんとも言えない感情が湧いて、そのモデルさんが生まれ変わったら、こんなふうな人生を送ってほしいなと思っているのかもしれません。

■南米出身の作者からみた日本のイメージ

――南米在住歴はどのくらいですか?また、日本で漫画を連載することになったいきさつを教えてください。

【KIYUMiさん】20年以上です。人生の大半はこちらで過ごしてます。もともと漫画自体が好きです。私の国にも漫画家は少なからずいるのですが、日本の漫画をはじめて見たときのことは今でも忘れません。衝撃でした。それから日本の漫画のキャラを描くようになり、絵はずっと描き続けてきました。いつか漫画家になれたらいいなーと思って、日本語の勉強もして、2019年に『comico』が月イチで開催するマンガ賞『ベスチャレ月間賞』に応募して、今に至ります。

――KIYUMiさんの国の“専業主婦”の現状は?

【KIYUMiさん】私の国では、じつは日本と逆なんです。男性側に家庭的な人が多くて、子どもを連れて歩いたり、買い物袋を下げていたりするお父さんをたくさん見かけます。どちらかというと、お母さん側にモラハラに似たような気質がある印象です。「仕事をしていないから私はエライのよ」みたいな、昔の“貴族”のような考え方を持ってる人もいるなと…。でも私の国は、基本的に家族思いの人が多いと思います。

――「女性が権利を持って自立する」ことについて、KIYUMiさんの国と日本で考え方の違いなどあれば、教えて頂きたいです。

【KIYUMiさん】“他人に頼らない”という意味での自立でしたら、「結婚したくない」と思う人が多いかもしれない日本人女性に対して、自分の国はむしろ「結婚しないと気が済まない」人が多いんじゃないかなと思います。40~60代の女性でも、再婚したいとか、恋人が欲しい人ってたくさんいるんですよ。経済面、精神面、理由はなんにせよ、ひとりで生きようと思っていないのかもしれませんね。あとは、日本とは経済状況がまったく違うので、1人暮らしするのが厳しいんです。その理由もあってか、家族暮らしをしている人のほうが多い気がしますね。