今や「美女×食べる」系のCMは、もっとも“親和性の高い組み合わせ”の代表例といっても過言ではない。浜辺美波が『味の素 クックドゥ』のCMで麻婆茄子を豪快に頬張れば、川口春奈は『はま寿司』のCMで大トロを目を細めて口にして「はまい!」と激賞する…。今も昔も、「女性が大口を開けて食べるなんてハシタナイ…」と非難する声はあるが、若手女優の“食いっぷり”が視聴者の購買欲(食欲?)を刺激するのが間違いない。そんなCM業界における不文律にも、新たな潮流が生まれているようだ。

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■アイスCMは若手女優の登竜門 ご褒美アイス感を演出する上品さ

 以前からお菓子系のCM、特にアイス類のCMに出演することは、若手女優やアイドルにとっては“登竜門”であり、黄金ルートでもあった。たとえば、グリコ『ジャイアントコーン』では、綾瀬はるかが15年にわたりCMキャラクターを務めており、ロッテ『爽』は2003~2011年は上戸彩、2016年は松岡茉優、2017~2019年は広瀬すずと、時代を代表する若手女優たちが歴代出演している。まさに“爽やか”なイメージの「若手女優」×「アイス」の最強方程式が成立しているのである。

 一方、同じアイスでも高級路線のハーゲンダッツは、中条あやみ、平手友梨奈を起用(過去には水原希子も出演)。見事な食いっぷりを見せるわけではなく、自宅でリラックスしている様子と、自分への“ご褒美”にアイスを食べる贅沢な時間…といった空間をスタイリッシュな雰囲気の女優で演出している。

 こうして見ると、アイスCM業界内でもイメージごとに出演タレントの住み分けができており、アイス自体の商品名の浸透と相まって若手女優の知名度も上がり、彼女らの活躍によってさらに商品価値が上がっていくという相乗効果も期待できる。いわば気鋭の若手女優とアイスは完全なウィンウィン関係にあるといえるだろう。

■豪快さと下品は表裏一体 「ASMR」の一般化によりCM業界にも変化が

 お菓子やアイス系とは一線を画し、イメージ戦略というより、直に視聴者の食欲・購買欲を刺激しているのが、冒頭で述べたようないわば“モリモリ食べる系”のCM。3、4年前から増えはじめ、『味の素クックドゥ』が杉咲花から浜辺美波にバトンタッチした時期にあたるが、同CMは杉咲花のまさに“出世作”となった。家族とともに食卓で大口を開けて頬張るというものだが、浜辺バージョンではより多くの家族でワイワイ楽しむという要素が加わっている。

 その他、この時期には小島瑠璃子が味噌汁をすすり、お茶漬けをかき込む『永谷園』のCMもあり、さらに平昌冬季五輪で人気を博したカーリング女子の“もぐもぐタイム”も話題になるなど、“食べる女子”が一躍脚光を浴びたのである。

 一方、YouTube界隈でも「ASMR」(Autonomous Sensory Meridian Response)という聴覚・視覚への刺激に特化した動画の新ジャンルが生まれ、中でも「もぐもぐ」「ごくごく」、悪く言えば「クチャクチャ」といった“そしゃく音動画”も話題に。同時に「下品」「汚い」「不快」といった意見もあり、賛否両論を巻き起こした。実際、先の“モリモリ系”のCMでも、当初は不快との批判も多く受けたのである。

 ただ、現在はそうした「そしゃく音動画」もいちいち新しいトピックスとして取り上げられることも少なくなった。ある程度、定番化・一般化したともいえるし、視聴者も抵抗感が薄れてきたのかもしれない。

 『味の素クックドゥ』にしても、杉咲花時代の「飛び散る汗」「元気なそしゃく音」といったストレートな表現から、美女(浜辺美波)が大口を開けて食べる・頬張るといった“ギャップ”をスローモーションで見せる形に発展している。しかし、そこには目や口、喉の動きなどに全神経を注ぐ演出力が求められる。表現の微妙な差が、“心地よい豪快さ”と“不快な下品さ”の分かれ目になるからだ。

■回転ずし業界の勝負 鮮度&安さ重視から“おいしさ”訴求のCMへ

 そして今年、川口春奈が『はま寿司』のブランドアンバサダーに就任し、彼女出演のテレビCMが放送されている。CMのコンセプトの「はまのおいしさそのままに、うまい! つまり、はまい」をアピールするもので、川口の発する“はまい”という言葉も視聴者の耳に残る。

 回転寿司のCMといえば、キャンペーン中の商品名を連呼したり、鮮度・安価をアピールするという“ベタ”なものが主流だったが、川口の起用により、これまでとは違う流れを生み出しているようだ。実際、コロナ禍で回転寿司の業績が上がっていることもあり、食材をメインに掲げていたCMから一歩進み、“美女が食べる姿”を見せることによって、“おいしさ自体を伝える手法”に変わったといえるのかもしれない。

 かつては、“女性が大口開けてモリモリ食べる”CMは下品である、といった短絡的な批判があった。しかし、今では多様なニーズに応えるSNSの発展と影響によって、そうした抵抗感も和らいでいる。「食べるCM」にしても優れた演出にかかれば、若手女優のチャーミングさや豪快なギャップが不快感さえ緩和してくれるのだ。

 さらに、ここ1年半以上のコロナ禍において、「食べる」というシチュエーションも多様化を見せている。家族や多人数で行くイメージの強かった外食にしても、コロナの影響で控えられる中、「美女×食べる」系のCMは若年層や女性でも一人で来店できるような親近感を醸成しているようだ。そういう意味でも、「美女×食べる」系CMはさらに進化していく余地があり、今後、どのような新しいトレンドを生み出していくのか楽しみである。