三角形でオレンジ色の箱が目印の『アイラップ』。袋型のラップとして、食材保存や調理、アウトドアや非常時などにも使える万能アイテムだ。全国展開している商品ではあるが、実は誰もが知っている商品とまでは至っていなかった。だが発売から45年が経過し、近年飛躍的に認知が上がったのは、同社の社員が運営するTwitterがきっかけ。『アイラップ』を製造・販売する岩谷マテリアルのSNS担当者に商品への思いや、日々のTwitter運用について聞いた。

【写真】老舗カレー店と『アイラップ』のコラボ商品“チャンラップ”? ほか、万能すぎる商品用途

■1976年に全国販売も類似品乱立で販売縮小の危機

 岩谷マテリアル株式会社は、インテリア雑貨や生活用品の販売から、金属や樹脂といった原材料の取り扱いと多岐にわたる。1976年に全国発売され、今年で45周年となった袋型ラップの『アイラップ』は、同社の家庭用品分野のなかでもヒット商品となっている。しかし、ここまでの道のりには苦労があったようだ。

――まず、『アイラップ』はどのような商品なのか、開発のきっかけとあわせて教えてください。

【Twitter担当者(以下、中の人)】三角形のパッケージが特徴の、高密度ポリエチレン製マチ付きポリ袋です。湯船や電子レンジで食材の温めができる袋のラップとして、ロール式のラップが広がりつつあった当時、ロール式ではできないことをやろうとしたのが開発のきっかけだと聞いています。

――商品名の理由は?

【中の人】ネーミングはイワタニの「i」と、愛(love)から名づけられています。

――発売から一時期は、類似商品の乱立があったと聞きました。

【中の人】そうですね。その間は販売地域が徐々に縮小していきました。そんな時、山形県のスーパー様に気に入っていただき、日本海側で普及するきっかけができました。

■期間限定で始めたTwitterが全国認知拡大のカギに

――全国展開ながら、一部地域を中心にしばらくは愛されていたんですね。そんな『アイラップ』が、Twitterをきっかけに新しい動きが見られたそうですね。中の人さんが公式のTwitterアカウントを開設されたんですか?

【中の人】私自身は、商品の開発やデザインを担当しておりまして、当時『おにぎりぽっけ』という商品の立ち上げに従事しておりました。この商品がぜひ成功してほしい、との思いからTwitterでの宣伝活動を提案した。しかし、当時は即却下。根強く説得をつづけ、ようやく3ヵ月限定で開設の許可をもらうことができました。

――はじめは3ヵ月のみの運用予定だったのですね! それが、どういった経緯で軌道に乗ったのでしょうか ?

【中の人】当社は広告や宣伝にはほとんど力を入れておらず、予算はゼロ。プロに運用を託せない状況でした。そのため、自らTwitter社の主催するセミナーに参加したりして、運用について勉強していました。それまで私自身、SNSをほとんどやらない人間だったので…。

――紆余曲折あったわけですね。

【中の人】そんな中、期限の3ヵ月を半分過ぎようとしている頃、いろいろな感情を込めた私のボヤキツイートが反響を呼びました。

――アイラップの売り上げが、新潟・山形・富山・石川・福井のみで75%を占めているといった内容ですね。1万RTも超えて、コメント欄では、「初めて見ました」という人と「愛用しています」の2パターンに分かれていたのが印象的でした。

【中の人】当時は“バズる”といったことも理解できていない状況でしたが、『アイラップ』が全国で返り咲くきっかけとなったのです。突然メディアからの取材が殺到したため、社内が騒然となりました。

■認知度一変、脚光を集める存在に 使用用途も時流にあわせて変化

――バズりツイートを機に、売上や認知度は変化しましたか?

【中の人】完全に変わりました。40年以上淡々と販売していた『アイラップ』が、脚光を集める存在になりました。それまでほぼほぼなかった、メディアに取り上げられる機会も“爆増”しましたし、漫画に登場するなど夢のような状況です。おかげさまで流通量も倍増し、今も伸び続けています。

――昨年は『アイラップ』を使ったレシピ本も発売されました。全国区で再び愛される存在となったことへの思いをお聞かせください。

【中の人】レシピ本化のお話をいただいたとき、正直社内では驚きと不安の声が多かったですね。40年以上販売してきて初めてのことですから(笑)。購買者様にはご好評いただいているようで、社内では安堵の声が上がるとともに、商品に対する自信に繋がっているように感じます。

――『アイラップ』以外の商品もツイートで紹介されていますが、売れ筋の商品を教えてください。

【中の人】Twitterアカウント立ち上げのきっかけにもなった『おにぎりぽっけ』です。素手でおにぎりを握るのは食中毒などが心配といった主婦の声から誕生しました。握りから持ち運びまでコレ1つなので、とても衛生的です。

――食中毒やコロナの心配を考えると、今こそ使いたい商品ですね。『アイラップ』シリーズは、自然災害時にも活用されていると聞きました。袋の中で調理が完結するため、洗い物に無駄な水を使わないですし。

【中の人】2018年の北海道震災の時もそうでしたが、『アイラップ』が貢献できる機会も増えています。おにぎりぽっけも企画経緯をたどると、熊本地震で発生した炊き出しのおにぎりによる集団食中毒がきっかけだったりします。

――フォロワーさんからも実際に震災の後で使ったとツイートがありましたね。

【中の人】ポリ袋を使った炊飯の仕方をTwitterへ掲載したら、『電気もきていない真っ暗な状態で、温かいご飯が食べられました』という声を頂いた時に、自分の中で『アイラップ』に出会っていただくことの意義を意識するきっかけになりました。

■ツイートはユーザー目線で これからも『アイラップ』活躍の場を広げて

――Twitterアカウントの運用担当はおひとりですか?

【中の人】担当は立ち上げから現在にいたるまで私1人です。関係者みんながいちフォロワーとなり、私はみんなに見守られているイメージです。

――公式アカウントとしてツイートする際に心がけていることはありますか?

【中の人】メーカーとして伝えたいことはしっかり発信しつつ、商品のこと以外にもユーザーにメリットのあることを紹介することです。“ユーザー目線”を大切にしつつ、コミュニケーションを図っています。

――企業公式アカウントとして、運用する難しさを教えてください。

【中の人】毎日が試行錯誤の連続で、終わりが見えません。喜ばれることや感謝されることが大半ですが、それ以外のご意見もいただくことがあります。メディアでもたびたび話題になる、SNSの力には驚かされますが、そこに生じる葛藤などが運用の難しさを感じる瞬間でもあります。

――最後に今後の展望と、全国の『アイラップ』ファンへ向けてのメッセージをお願いします。

【中の人】『アイラップ』も誕生から早いもので45年。親から子へ、また孫へ受け継がれつつ、多くのお客様に愛され、ここまで継続して販売し続けて来ました。この商品の根底にあるのは、岩谷グループの理念でもある“世の中に必要なものこそ栄える”という思いです。これまではキッチンを主戦場にしていましたが、災害やアウトドアブームの影響で活躍の場が広がりつつあります。『アイラップ』で助かる瞬間や、お客様のために、社員一同これからも頑張ってまいります。これまでもこれからも『アイラップ』を、岩谷マテリアルをよろしくお願いします。