現代のファンタジー文学として、20年にわたって世界的人気を誇る「ハリー・ポッター」シリーズの出版20周年を記念して、大英図書館が2017年に企画・開催した展覧会『ハリー・ポッターと魔法の歴史 “Harry Potter: A History of Magic”』が、兵庫県立美術館(9月11日~11月7日)と東京ステーションギャラリー(12月18日~翌年3月27日)で開催される。

【写真】J.K.ローリングによるスケッチ画などの展示物

 「ハリー・ポッター」は、イギリスの作家J.K.ローリングによって著されたファンタジー小説シリーズ。1997年に、シリーズ第1作「ハリー・ポッターと賢者の石」がロンドンのブルームズベリー社から刊行されると、まったく無名の新人の著作であるにもかかわらず、またたく間に世界的ベストセラーになった。

 本展では、原作者J.K.ローリングの直筆原稿やスケッチに加え、イギリスの国立図書館である大英図書館が所蔵する貴重な書籍や資料などを紹介し、ハリー・ポッターの世界の底流にある言い伝えや魔法の歴史をひも解いていく。

 ハリーが学んだホグワーツ魔法魔術学校の科目に沿って、イギリスをはじめ世界各国に古くから伝わる魔法や呪文、占いなど、「魔法薬学」「錬金術」「天文学」などの10章で構成され、科学が発達していなかった時代の人々が信じた魔法や魔術の記録を展示。大英図書館の大規模な展覧会が日本に巡回するのは初めてのことであり、その充実したコレクションの一端を目にする絶好の機会となる。

■展示内容の概要

第1章:旅
 1990年6月、マンチェスターからロンドンへ向かう列車で、無名の作家J.K.ローリングにアイデアが舞い降りた。それから5年の間に書き上げられた計7冊の「ハリー・ポッター」シリーズは、その後20年以上にわたり、世界各地で愛される作品となる。日本では松岡佑子氏の訳で1999年に出版。第1章では、イギリスでの出版のきっかけとなった8歳の読者の感想文や、イラスト版「ハリー・ポッター」を描いたジム・ケイの原画などが展示される。

第2章:魔法薬学
 魔術において、薬作りは欠かせない技術であり、化学や医学が発達していなかった時代には特に重要とされ、ホグワーツ魔法魔術学校においても必修科目だった。薬は病気を治すだけでなく、人間の外見を変えたり、恋心を引き起こしたりすることもできると考えられていた。第2章では、薬に関わる古今の記録を紹介する。

第3章:錬金術
 錬金術とは、卑金属を人工的手段により貴金属に転換する術のこと。「ハリー・ポッター」シリーズ第1作に登場する「賢者の石」は、永遠の命を与える「命の水」を生成することができると信じられ、中世ヨーロッパの錬金術師がその獲得に奮闘しました。第3章では、賢者の石の作り方が記された4メートルもある希少な巻物「リプリー・スクロール」や、歴史上、最も美麗な錬金術解説書と言われる書籍「太陽の輝き」などが展示される。

第4章:薬草学
 薬効を持つ植物は、古くから薬の原料として使用され、世界各地の書物に記録が残されてきた。「ハリー・ポッター」シリーズにも、引き抜くと叫び声をあげる「マンドレイク」をはじめ「ヘレボルス」「ハナハッカ」などの薬草が魔法薬の材料として登場するが、これらはいずれも実在する植物。

第5章:呪文学
 「アロホモーラ(開け)」「ウィンガーディアム・レヴィオーサ(浮遊せよ)」など、魔法の力を持つ言葉は、「ハリー・ポッター」シリーズに欠かせない。第5章では、誰もが知っている呪文「アブラカダブラ」に初めて言及したとされる13世紀の書物など、呪文に関する文献や、魔女に関するアイテムを紹介する。

第6章:天文学
 天文学はホグワーツ魔法魔術学校の必修科目。物語には「ルーナ・ラブグッド」や「シリウス・ブラック」など、月や星に関わる名前が付けられている人物が登場する。古くから人は、星はこの先に起こりうる出来事を示すものと考え、天文学を発達させてきた。ここでは天文学で用いられた天球儀や、レオナルド・ダ・ヴィンチが40年にわたって取り組んできた科学的考察を書き綴った手稿などを展示。大英図書館が所蔵するレオナルド・ダ・ヴィンチの「天体にまつわるメモとスケッチ」は世界に現存する約30冊のうちの1冊となる。

第7章:占い学
 「ハリー・ポッター」シリーズでは、「闇の帝王を倒す力を持つ男の子が7月の終わりに生まれる」という予言が、物語を通じて重要な役割を果たす。展示資料からは、水晶占い、手相占い、タロットや茶葉占いなど、未来を予知するさまざまな占いが、世界の異なる地域で行われていたことがよくわかる。

第8章:闇の魔術に対する防衛術
 魔法は多くの文化において、悪の力に対抗するものとして使用されてきた。例えば、ホグワーツ魔法魔術学校の授業でもスネイプ先生やルーピン先生が生徒たちに紹介した狼人間、河童といった闇の生物から身を守るものとして、魔除けのお守りや呪文などが生まれた。忌み嫌われていた生物や、それに対抗する魔除けの方法を記した世界各地の資料を紹介する。

第9章:魔法生物飼育学
 中世の寓話集や近世の博物学の本などには、実在する動物と並んで、ユニコーン(一角獣)やフェニックス(不死鳥)、ドラゴンといった想像上の生物が描かれてきた。ライオンの胴体に人間の頭部と鳥の羽を持つスフィンクスのように、種が混ざり合った生物も見られる。ホグワーツ魔法魔術学校においては、第3学年からの選択科目で、魔法動物の飼育に秀でた生徒は、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の主人公ニュート・スキャマンダーのように、魔法動物学者になる者もいた。

第10章:過去、現在、未来
 J.K.ローリングが生み出した「ハリー・ポッター」の魔法世界は、発刊から20年以上経った今も、世界中の読者をひきつけてやまない。さまざまな言語に翻訳された書籍や、大人になったハリーの姿を描いた舞台劇『ハリー・ポッターと呪いの子』の衣装を展示し、今も広がり続ける「ハリー・ポッター」の世界を紹介する。

■展覧会公式サイト
https://historyofmagic.jp/