下ネタ謎かけでブレイクしたピン芸人・紺野ぶるま。2017年、2018年に『R-1 ぐらんぷり』で決勝進出を果たし、女芸人No.1決定戦『THE W』では2017年から3年連続で決勝進出という実力派でもある。彼女の半生を綴った著書『「中退女子」の生き方 腐った蜜柑が芸人になった話』では、高校を中退してお笑い芸人として生きてきた苦悩や葛藤などが赤裸々に語られている。そんな紺野に、厳しいお笑いの世界を女芸人として生き残ってきた中で感じた男女差や下ネタ批判に対して思うこと、更に結婚後の自身の変化などを聞いた。

【写真】くびれにドキッ! シースルー風シャツで美ボディライン見せる紺野ぶるま

■やりたいお笑いでは“勝てないこと”を認めることから始まった

――かつて女芸人は非モテでブスキャラ、“女を捨てなきゃ芸人じゃない”という風潮があったように思いますが、近年はそのような作られたキャラを捨て、「容姿いじりの封印」を宣言する方もいますよね。紺野さんはブレイク時から、女を捨てたキャラではなかったように感じます。

【紺野ぶるま】芸人になって1、2年目の私は、まさに女を捨てている気になって、紺色のブルマを履いたネタをやっていました。必死でやっていたのであまり気付かなかったのですが、周りから「あなたの股間が気になってネタをみていないよ」と注意されることが多くて。自分ではそんなつもりでやってなくても“女性芸人がこういうネタをやるとそんな風に見られてしまうんだな…”と悔しくてもどかしい気持ちになりました。

――女性だからこその葛藤ですね。

【紺野ぶるま】実際、結果が全くついてこなくて、私にはその方向は合ってなかったんだなって思いました。私はくまだまさしさんに憧れて芸人になったはずなのに、体を張ったリアクション芸にしても、ブルマを履いたネタにしても、男性芸人には絶対に勝てないんだな、と。「みんながみんな、自分の好きなお笑いでやっていけるわけじゃない」と、3年目ぐらいにようやく気付きました。

――それに気付いてからはどのように方向転換をしましたか?

【紺野ぶるま】まず“勝てない”ことを認めて、やりたいネタを諦める勇気を持つことから始めました。それでも自分がお笑いをやり続けるにはどうすればいいかを考えて、最初に思いついたのが“浮気しちゃう女の子”のネタです。私のような感じだと“ちょうど良くハマる”んじゃないかなと。それ以来、普通の格好をして女性を演じるネタに自信がついて、「私が戦えるのはコレだ!」という気持ちでやり続けています。

■「中退がコンプレックスだった…」芸人になったことで生まれた自己肯定感

――「ちんこ謎かけ」でもおなじみの紺野さんですが、下ネタを扱うことで批判的な声や意見が届くこともあるのでは?

【紺野ぶるま】あります。でも、同音異義語で解けている時はあまり批判されないんですよね。お題によってはどうしても解けない時もあるので、そう言う時はただ奇をてらっただけの人みたいに見えてしまうみたいで、そのときは批判されてしまうことが多いです。

――下ネタが人気になったことで嫌なことも沢山あったのでは?

【紺野ぶるま】「ちんこ謎かけ」を始めた当初、自分では“紺野はモテを諦めた上で芸をやっているんだな”と捉えてもらえると思っていたんです。ところがその考えは甘くて、世間からは“紺野はエロくて、脱ぐのも平気なんじゃないか”という目で見られてしまいました。なので性的なことを求められるような、自分がやりたいお仕事とは真逆のオファーがきて戸惑うことも多かったですね。

――批判や性的なものを求められることで芸人を辞めたいと思うことはなかったのでしょうか?

【紺野ぶるま】やめたいと思ったことはないです。夢を追わずにちゃんと働いた方がいいかな…と考えて、一般職のバイトをしたことがあったんですが、下ネタで批判されたり性的な仕事のオファーがくることよりも辛くて(笑)。私には芸人以外に道がないと思っています。

――なるほど。覚悟を決めたんですね。先月出版された『「中退女子」の生き方 腐った蜜柑が芸人になった話』では紺野さんが高校を中退したあと芸人になるまで、そして芸人になってからのさまざまなエピソードが綴られていますが、これまでに“中退した”ことをコンプレックスに思ったことはありましたか?

【紺野ぶるま】中退したての頃はめちゃくちゃありました。みんなが“当たり前のように持っているもの”が自分にはなくて、そもそもそれがなんなのかもわからないみたいなコンプレックスを抱えていたんです。たとえば友達と話していて、「言ってる意味分かる?」と聞かれると、相手はそんなつもりじゃなくても、なんとなく馬鹿にされた気分になっちゃったりして。理解力や偏差値の低さがバレたのかなと一人で勝手に傷ついていました。でも、芸人になってからは中退したことをあまりコンプレックスに思わなくなりました。芸人の道を進んだことで、自己肯定感が生まれたと思います。

■結婚と芸人の難しさ「“女なのに”とか“母親のくせに”と言われない世の中にしたい」

――紺野さんはご結婚もされましたよね。その影響で仕事の仕方や考え方など、芸人として何か変化した部分はありますか?

【紺野ぶるま】甥っ子や姪っ子が増えたので、ちんこ謎かけをやる時はなるべく上品に解かなければと気をつけるようになりました(笑)。あと、大きく変わったのは自分ではなくて世間からの見え方ですよね。たとえば、「紺野ぶるまは芸人として売れなくても旦那さんに食べさせてもらえる」と思う人もいると思うんで、セミリタイアに見えないようにしたいなと考えています。それと、「合コンで~」みたいな軽いノリで男の人の話をするのはやめました。

――たしかに、女芸人さんは既婚か未婚で、世間からの見え方は変わりそうですよね。

【紺野ぶるま】結婚っていうだけで幸せな雰囲気が漂ってしまうので、結婚生活をおもしろく話するのは難しいんですよね。女性芸人がクズ男に振り回される話とか、男性に振られた話をやるほうがウケるのは簡単だったなって。これまでそういうネタに甘えてきたんだなと、結婚したことで改めて気付かされました。

――結婚後にお仕事をセーブされる女性芸人もいますが、今後はどのようなペースで芸人を続けていこうと考えてらっしゃいますか?

【紺野ぶるま】結婚で変わることはないですが、子どもができたらお仕事のペースを落とさなければいけないかなと思っていました。でも、自分が旦那さんと子どもを養っていくことを目指すのもいいなと思うようになりました。

――紺野さんが家計を引っ張るという家族の姿もアリということですね。

【紺野ぶるま】そうですね。ただ、そうなると世間から旦那がヒモ夫と言われてしまったり、私自身も育児放棄と言われる可能性が出てくるんだろうなって思ったり。男性芸人は結婚して子どもが生まれたあとバリバリ働いても何も言われないのになんでだろう? とモヤモヤするというか。先ほどの男女差の話じゃないですけど、それこそ、こういうことをもっと男女関係なくフラットに見てもらえる世の中になったらいいなと思います。

――紺野さんがお手本となるような活躍を見せることで、今後のお笑い界や世間の味方も変わる可能性がありますよね。

【紺野ぶるま】そうなりたいなって思っています。もしも私が子育てに重きを置くという理由で仕事をセーブしたとして、自分が60歳ぐらいになった頃にそういう活躍をしている女性芸人がいたら、絶対に悔しい思いをすると思うんですよ。それならば自分が道を切り拓けたらいいなって。女性芸人が結婚するデメリットをなくしていって、“女なのに”とか“母親のくせに”と言われない世の中になればいいなぁ。なので、今後もお仕事のペースは落とさずに、下ネタも得意な女性芸人としてバリバリ活躍し続けていこうと思います! でもそうなるためには、もっと説得力のある芸や話術を身につけなければいけないですよね(笑)。

取材・文/奥村百恵