大手加工食品メーカーのエスビー食品が展開する“チューブタイプ”の調味料が、昨今とてもユニークなラインナップとなっている。古くからの定番商品である、わさび、からしなどに加えて、最近では刻みパクチー、梅ペースト、バジル、紅ショウガなども登場し、普段の味わいに+αを加える「食の楽しさ」を提供。そんなチューブ入り調味料のパイオニアである、エスビー食品の広報担当・七野知未さんに商品誕生時から今後の展望などを聞いた。

【貴重写真】1897年に発売された『おろしわさび』のパッケージ、変わり種チューブ入り調味料

■日本初の画期的な商品 割高でも利便性からベストセラーに

 日本初の純国産カレー粉の製造に成功し、創業以来コショウやガーリックなど、様々なスパイスを発売してきたエスビー食品。1970年代に入ると、“チューブ入り香辛料”として『洋風ねりからし』『ねりわさび』などを発売。それまでのわさび粉やからし粉が主流だったが、あらかじめウェットなわさびや練りからしにしてチューブに詰めることで、いつでも好きな分量を使える画期的な商品として誕生させた。

――1970年代に、御社が発売した“チューブ入り香辛料”。これは日本で初めての商品化だったのでしょうか?

【七野さん】はい。1970年に“日本初”のチューブ入り香辛料として『洋風ねりからし』を発売しました。その後、1972年に『和風ねりからし』『ねりわさび』、1973年に『おろし生ニンニク』『おろし生ショウガ』を発売しました。

――4商品ともに反響があったそうですが、中でも一番反響のあった商品は?

【七野さん】『ねりわさび』です。粉わさび35gが当時65円だったのに対し、チューブ入りは100円と若干価格は高かったものの、すぐ使えるという「利便性」が受けて、ベストセラーになりました。ちなみに、当時のわさび原料は本わさびではなく、比較的安価な西洋わさび(ホースラディッシュ)が主流でした。

■「より生に近い本物のおいしさの追求」 食トレンドも敏感にリサーチ

――わさびに関しては、1987年に本わさびを使用した『本生おろしわさび』が発売され、「本生」シリーズが誕生します。同シリーズを開発されたきっかけは?

【七野さん】「本生」シリーズが誕生した1987年は、ちょうどバブル時代の幕開けを迎える頃で、消費者の本物・高級志向の高まりを受けて、本わさびを原料に使用した『本生おろしわさび』を発売しました。

――「日本で初めて発売されたチューブ入りわさび」の先駆けでもある『本生本わさび』ですが、味わいでのこだわりを教えてください。

【七野さん】素材本来の味や食感、香りを追求し、“本生”のブランド名にある通り「より生に近い本物のおいしさの追求」を図ってきた商品です。2009年からは、わさび原料を100%本わさびにし、商品名も「生わさび」から「本わさび」に変更しました。

――『本生本わさび』はパッケージデザインや色、かたさ、チューブなど様々な改良をされていますが、一番大変だったことは?

【七野さん】採れたてのわさびを擦ったときの鼻に抜けるような香りを、チューブ入りわさびでも再現することです。また、保存性を高めるための添加物や塩分を少なくする努力を続けつつ、手に取りやすい価格を実現することにも難しさがあります。

――わさびに限らず、「チューブ入り調味料」を開発する際に、一番大事にしていることは何でしょうか?

【七野さん】わさびなどの、生鮮の素材を使用したチューブ入り商品を開発する際は、「いかに生鮮に近づけるか」という点を重視しています。

――食材以外で、商品開発の際に心がけていることがありますか?

【七野さん】容器の改良にも取り組んでいます。「すぐ開きキャップ」や「ラクしぼりチューブ」の採用など、使い勝手の面でも「チューブ入り香辛料」は進化しています。

――改良にあたって、アイデアはどこから得ているんでしょうか。

【七野さん】トレンドや各種調査、当社お客様相談センターに寄せられたお客様の声などを参考に、新商品開発を行なっています。「刻む手間が省ける」「余らせがちな食材に着目する」など、“お客様の困りごと”を解決できる商品を開発することを大切にしています。

■時代の変化とニーズにあわせた提案も 料理を引き立てるスパイス

 1970年に誕生して以後、時代とともにラインナップを増やし続けてきた同社のチューブ入り調味料。近年では、きざみシリーズを中心とした進化系のチューブ調味料を含めて44種をラインナップしている。時代とともに食トレンドを意識した展開をしている。

――2017年の『きざみパクチー』は、パクチーブームをリードする人気商品にもなったそうですね。同商品を販売した際の反響や購入者の声などがあれば教えてください。

【七野さん】SNS上で『きざみパクチー』を使用する様子がアップされるなど、意外性のある食材がチューブ入りになったことで話題となりました。

――チューブ入り調味料以外にも、御社はスパイスとハーブを軸に様々な商品を手掛けていますね。

【七野さん】スパイスやハーブが持つ魅力はたくさんありますが、やはり「香り」は一番の特徴だと思います。料理のおいしさを引き立てるスパイスやハーブの香りで、笑顔のある食卓や暮らしが広がることが私たちの願いです。

――御社の今後の取組みについて聞かせてください。

【七野さん】当社は、企業理念に「食卓に、自然としあわせを。」、ビジョンとして『「地の恵み スパイス&ハーブ」の可能性を追求し、おいしく、健やかで、明るい未来をカタチにします。』を掲げています。日々おいしく食べて、美しく、健やかに、安心して暮らせる生活のお役に立ちたいという想いで、今後も商品づくりに取り組んでまいります。

 同社は、カレー粉をはじめ、コショー、ガーリックパウダー、チューブ入り香辛料と、日本の食文化を拡大するスパイスを多数手がけてきた。1970年代に誕生した『ねりわさび』をきっかけに、チューブ入りのわさびは今では“WASABI”として、世界に広がっている。

 料理へ風味をプラスしてきた“香辛料”が、時代が経つにつれて味わいの変化を楽しむ素材“調味料”へと変わっていった。と同時に、食材の日持ちのしにくさや調理の手間を解消、少量やシーズンを制限しない利用と、チューブ入り商品がもたらした功績は大きい。今後も、“チューブ入り調味料”は、毎日の食卓へスパイスを与える存在であり続けるだろう。