お気に入りの映画の話から、気になるあの人の心の中を少しだけのぞかせて。今回は『図書館戦争』『阪急電車』などで知られる小説家・有川ひろさんに“かけがえのない1本”を聞きました。(※映画のネタバレ要素を含みます)

【動画】ギャオスについて詳しく語る有川ひろさん

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 私の中のベスト1の位置にずっと居続けている映画は「平成ガメラ三部作」です。特撮、怪獣ものですが、ガメラ、レギオン、ギャオス…は本当に“います”。『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)を初めて観た時、それまで全然特撮、怪獣ものに興味はありませんでした。怪獣って“うそ”ですよね、いるわけがない。でも、確かに映画の中にはいたんです。

 映画では“ギャオスがいる”という証拠をすごく細かく積み重ねていきます。ギャオスは鳥型の怪獣ですが、はじめのうちは全く姿を見せない。パッと素早く動く何かが画面を横切ったかと思うと、ワンワン吠えていた犬の鎖をブチッと引きちぎって、連れ去ってしまう。その描写から始まって、島の住民が一晩にして全員いなくなった、というありえないことが起きます。そして島の外から調べに入った、ある学者が現場でものすごく巨大な鳥のペリット(鳥が口から吐き出す不消化物の固まり)みたいなものを見つけるんです。そこを探ったら、メガネが出てくる。メガネが出てくることによって、人を丸呑みして消化する生き物がいるという事実を突きつけたのです。

 そういった描写の積み重ねによって、ギャオスの姿はワンショットも登場していないにも関わらず、ギャオスという怪獣の存在を認識させていく。この緻密さにガツンとやられました。いまでも自分の背骨となっている、私にフィクションの作り方を教えてくれた大好きなシリーズで、作家でいるかぎり一生大事にしたい作品です。

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■『ガメラ 大怪獣空中決戦』1995年日本、監督:金子修介(本編)、樋口真嗣(特撮)

 太平洋上で巨大漂流環礁が発見されたころ、九州の姫神島で謎の住民消失事件が発生。「鳥!…鳥!……」という無線を最後に消息が途絶えたことから、調査に訪れた鳥類学者・長峰真弓は、そこで巨大怪鳥を目撃する。一方、海上保安庁の米森と保険会社の草薙は環礁上にあった石板の碑文を解読。その結果、環礁がガメラ、怪鳥がギャオスという古代怪獣であることが判明する。

 出演は伊原剛志、中山忍、藤谷文子ら。平成ガメラシリーズ第1作にして、ガメラ誕生30周年記念作品(前作『宇宙怪獣ガメラ』から15年ぶりの復活)。各種映画賞を受賞し、監督の金子修介、特技監督の樋口真嗣は新世代のクリエーターとして一躍脚光を浴びた。

■プロフィール
有川ひろ(ありかわ・ひろ)
小説家。高知県出身。2003年『塩の街 wish on my precious』で第10回電撃小説大賞〈大賞〉を受賞し、翌年に同作にてデビュー。SF的なタッチから実生活をモチーフにしたものまで、幅広くエンタテインメント作品を手がける。『図書館戦争』や『三匹のおっさん』など、映像化された著作も多数。宝塚を題材にした短編小説『Mr.ブルー』が公開中。今後の刊行予定は8月に『みとりねこ』(講談社)がある。