『仮面ライダー電王』『ブラッディ・マンデイ』『半分、青い』『恋はつづくよどこまでも』など、数多くの話題作に出演してきた俳優・佐藤健(32)。その彼にとって代表作と言っても過言ではない『るろうに剣心』シリーズが、『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(6月4日公開)をもって終幕する。第1作の撮影から10年、剣心は佐藤についてどのような存在になったのか、そしてこれからの役者人生でどこに向かっていくのか。その胸の内を聞いた。

【場面写真】巴役・有村架純を優しく抱き寄せる佐藤健

 本作では、志々雄真実(藤原竜也)との死闘の後、神谷道場で平和に過ごした剣心たちに突如として攻撃が開始され、明かされなかった剣心の過去と消えることのない十字傷への謎につながる。原作では最後のエピソードとなる「人誅編」をベースとした縁(新田真剣佑)とのクライマックスが描かれる『The Final』(公開中)、剣心の過去を描く「追憶編」がベースとなる『The Beginning』2部作で描かれる。

■『The Beginning』は“ラブストーリー”の側面も「ここまで一体化できたのは初めて」

 第1作『るろうに剣心』(12年)から、第4作『The Final』まで、物語性だけでなく、役者たちが本気で挑んだ“アクション”で観客の心をつかんできた本シリーズ。『The Beginning』でも、〈人斬り抜刀斎〉時代の剣心の過去の戦いが描かれるのはもちろんだが、今回は巴との“ラブストーリー”のような側面も持ち合わせる。

 佐藤自身も「演じ方の種類やアプローチの仕方はまったく違いました。今回は、最も力を抜いた状態で現場にいました。(剣心を)演じようとせず、その場にいることを一番大切にしていました」と身の置き方を語り「それができたのは剣心と自分のシンクロ度が今までで一番強かったからだと思います。役者人生の中でも、ここまで一体化できたのは初めてです」と振り返る。

 原作は、和月伸宏氏が「週刊少年ジャンプ」で連載していた人気作。これまでは「エンタメ感、アニメ感、漫画感があったほうがいいと思っていました。例えば、子どもがまねしやすいポージングとか。漫画感がないと『るろうに剣心』の世界観を表現しきれないと思っていました」とどこか原作のキャラクターを意識している部分があった。

 ただ、『The Beginning』については「一切そういうことを意識しなかったです。(大友啓史)監督とは『ちゃんと時代劇をやろう』と。今までは剣心という漫画のキャラクターをいかに体現できるかというやり方から、幕末の時代に本当に生きていたのではないかと思えるくらい、生身の人間として演じました」と緋村剣心という“キャラクター”から、剣心という“人”を演じることを重きにおいた。

 自身も「原作で1番好きなところ」という「追憶編」。本作を語る上で最も重要といえるのが、有村架純が演じる雪代巴だ。人気キャラで、プレッシャーのかかる役柄であるはずだが、佐藤は「最初からなにも心配はなかったです」と絶大な信頼を寄せる。「(巴役が)有村さんと聞いて、おもしろくなるなと思いました。巴というキャラクターが大事でもあるけど、僕自身、最もと言っていいくらい大事なエピソード。誰と一緒に演じるかは、僕の人生にとっても大きいことで、ガッツリ組む相手が有村さんで非常に喜ばしく思いました」と話す。

■『The Beginning』で終幕に納得「美しく収まった」

 原作は『The Beginning』にあたる「追憶編」が描かれたのち、『人誅編』での縁との戦いで幕を閉じるが、映画の公開順は逆になっている。この“終わり方”に佐藤は「美しく収まったと思います。監督の手腕もあり、終幕が『The Beginning』であるのはうれしいです。終わるけど、始まる。これまで巴との過去を内包した上で剣心と向き合ってずっと演じてきました。この『The Beginning』という作品をお客さんに見てもらって、やっと始まるんだなと思いましたね」と第1作につながる、大事な締め方になったと語る。

 本来、昨年の7月3日と8月7日に2部作で公開を予定していた本作。新型コロナウイルスの影響で、今年に延期となったが、いまだ、答えのない状況が続いている。

 佐藤は「一番大事なのはみなさまの健康です」とファンのことを第一に思う。「ただ、1年ほど前からコロナの状況を見て思うのは、人はご飯を食べて寝ているだけでは生きていけないということ。希望がないと生きていけないのが人間という生き物だと思ったんです。この映画がみなさまの希望の光となり、みなさまの日々を少しでも豊かにすることができるのであれば、公開することに意味があると思う」と力説する。

 「当然、我々は人生をかけて作ったので劇場で見てほしい思いはあります。ただ、映画館に行く行かないはおまかせします。僕が言えるのは、すべての人の幸せを願っているということです」と持論を話した。

 これまでのインタビューやイベントでも『るろうに剣心』は「超えないといけない壁」と語っている佐藤。今後の役者人生について聞くと「ここまで人生をかけて挑める作品はなかなか出会えません。このシリーズが完結して、同じように人生をかけて挑める作品に出会いたいと思いますし、そういった仕事をしないと意味がないと思う」と、より自分に厳しい目を向けて仕事に臨む。

 「日本だけではなく、世界に発信できる、アプローチできる作品を作りたい! 出たい!という思いがあります。ただ、そういった思いだけを言いながら、話が来るのを待っていることに疑問を感じるんですね。もっと能動的に、自分から作っていかないと。動き出す必要があると思っています」とよりよい作品に出会うために、積極的に自分から仕事を作っていく。

 実際に動き始めているか聞くと「ご想像におまかせします(笑)」と答えた佐藤。『るろ剣』という壁を超えた先に、佐藤がどのような作品を作り出し、世界に羽ばたいてくれるのか。今後も目が離せない役者だ。

◆佐藤健(さとう・たける) 1989年3月21日生まれ 埼玉県出身
2007年、初主演となったテレビ朝日系特撮『仮面ライダー電王』で一躍脚光を浴びる。以降、TBS系ドラマ『ROOKIES』、『天皇の料理番』、フジテレビ系ドラマ『メイちゃんの執事』、NHK大河ドラマ『龍馬伝』、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』、映画『るろうに剣心』シリーズ、舞台『ロミオ&ジュリエット』など様々な作品に出演。公開待機作に『護られなかった者たちへ』(10月1日公開)がある。