“ゴジハムくん”をご存知だろうか。01年~03年の間、3作品にわたって劇場版で同時上映された『ゴジラ』と『ハム太郎』の入場者プレゼントとして誕生したキャラクターだ。それが「生誕20周年」として復活することが報じられるや、SNSに「ゴジハムくん」がトレンド入り。なぜゴジラ×ハム太郎という異色コラボが企画されたのか。当時のハム太郎担当プロデューサーの沢辺伸政氏に伺うと、20年前の裏側と共に、子どもの頃のブームを再燃させる“20年の法則”が浮かび上がってきた。

【画像】エイプリルフールに公開したリアルすぎるゴジハムくんほか、20年前の映画来場特典など…ゴジラ×ハム太郎コラボ集

■「怖がるんじゃないか」ゴジラとの同時上映に懸念も、当時の興行形態がコラボを後押し

「1997年に学年誌で始まった、河井リツ子さん原作の『とっとこハム太郎』は、小学生低学年を中心に大人気でしたが、テレビ東京系で、2000年にアニメの放送が始まると、その人気は未就学児にまで一気に拡がりました。そんな中、東宝さんと劇場版の話が出たんです。当時は、現・東宝社長の島谷能成さんが映画調整部長でいらっしゃったと思いますが、『ハムちゃんの映画どうや?』と言われて(笑)。それが始まりでした。」(沢辺氏 以下同)

 そこから、どの時期に上映する?という話になったとき、春休み、ゴールデンウィーク、夏休みには、東宝と小学館との映画がすでに入っていて、空きは冬休みしかなかった。

 その時、「島谷さんが『ゴジラとハム太郎、一緒ってどうや?』とおっしゃったんです。たぶん当時は今のようにシネコンが全国にあったわけではないので、同時期に何本も映画を公開できない。そこで冬に予定されている「ゴジラ」との2本立てというアイディアではなかったかと思います」

 この意外な組み合わせには強烈なインパクトがあるため、話題性は抜群だった。さらに、沢辺氏は「最大ヒーロー、ゴジラと最小のヒーロー、ハム太郎というサイズ差が面白い」と直感的に思ったという。

「ただし、そこからはかなり賛否両論ありました。『面白い』と同時に、ハム太郎は未就学児にもかなり人気があったので、『大丈夫か』『怖がるんじゃないか』と。『怖いなら、片方(ハム太郎)だけ観て帰っても良いんじゃないか』という声もありました」

 今となってはSNSで、子どもだった当時を振り返り、「怖かった」「泣いて帰った」というつぶやきも見られるが、当時直接届いた反響は、「ハム太郎映画が面白かった」というのが多数だったそう。また、「怖かった」記憶を際立たせているのは、ハム太郎との初コラボ作となった2001年公開の『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』が、よりによって、歴代ゴジラの中でも1番怖いと言われている作品だったこともある。

■「1回持ち帰らせてください…」東宝の看板キャラ“ゴジラ”とのコラボ実現までの紆余曲折

「ゴジラの作品はもともと決まっていて、弊社としては一緒にやるかどうかだけで。ただ、ゴジラは東宝の看板ですから、2本立てでできるのはハム太郎側としては非常に光栄でしたよ。ゴジラもハム太郎も、それぞれの製作委員会があって、ターゲットも異なり、必ずしも同じ方向を向いているわけじゃない。脈々と続いてきたゴジラと、まだまだ“新人”のハム太郎との歴史の違いもあります。しかし、一緒にやることが決まった以上、共通のポスターや、キャンペーンはどうするかということになり、一発目の会見では、ゴジラの着ぐるみとハム太郎の着ぐるみが一緒に登壇しました」

 そこで沢辺氏がゴジハムくん誕生のきっかけとなった、ある物を見せてくれた。当時FAXで全てやりとりされていた、共同プロモーション展開の概要や、記者会見のMC台本などである。その中には、「ゴジハムくん」キャラクターデザインの原案などの貴重な資料もあった。

「“ゴジラ×ハム太郎”で、入場者特典を何か作ろうという話になりました。本来は、ゴジラを観に来た人にはゴジラを1個、ハム太郎を観に来た人にはハム太郎を1個配布するのがお客様フレンドリーなやり方ですが、配布側の手間がかかることや予算の問題もあって『一緒にやろう』と」

 “ゴジラ×ハム太郎”のデザイン案には、「ハム太郎がゴジラを二人羽織りで着ている」「ハム太郎の上にゴジラが帽子風にのっている」「ゴジラの上にハム太郎がのっている」など様々なものがあった。そんな中、最終的に選ばれたのが、「ハム太郎がゴジラの着ぐるみを着ているかのような」デザインである。なんなら「ゴジラにハム太郎が食べられている」風に見えなくもないが……。

「確かに『ゴジラに食べられているように見えるんじゃないか』という声もあったんですが、僕はデザインが全部クリアすると思っていました。要は、かわいければ問題ないと。実際、キティちゃんもいろんなものを被ったり着たりしているわけだから。原作者の河井先生も“かわいらしさ”に拘っていらっしゃいました。ただ、和気藹々と打ち合わせしていく中で、東宝さんは必ず『1回持ち帰らせてください』と言う印象がありましたね。ゴジラは東宝の看板だから、そう簡単じゃないんだなと感じました。ゴジラはデフォルメすればするほどゴジラではなくなってしまいますから」

 ちなみに、東宝ではかつてゴジラの決裁者が明確には決まっておらず、部署を超えて議論する必要があったのだという。しかし、2014年に部署の垣根を越えて精鋭を集めた「ゴジラ戦略会議」(通称 ゴジコン)が作られ、その中で2019年に「ゴジラルーム」が立ち上がってからは、確認や決裁の体制が整えられたため、様々なチャレンジができるようになったようだ(ゴジラ戦略会議ディレクター 高橋亜希人氏談)。

■子どもの頃の強烈な“好き”を思い出す“20年の法則”「長く続けることで子どもたちが継いでいく」

 実は、今回の『ゴジハムくん生誕20周年プロジェクト』を企画したのも、同ゴジコンメンバーで、ゴジラルーム所属の28歳・宮崎豪氏だ。小学3年生のときにハム太郎映画目当てで劇場に行った、ど真ん中の“ゴジハムくん”世代である。

「当時はハム太郎ブーム真っただ中だったので、僕がゴジラルームに所属になったと言うと、周りの同世代の人たちはみんな『ゴジハムくん!?』と言うんです(笑)。『おはスタ』(テレビ東京)などテレビでも盛んに取り上げていたので、刷り込まれているというか。そのくらい強烈に記憶している人が多いので、ぜひ復活させたいと思いました」(宮崎氏)

 “ゴジハムくん”を子どもの頃に観た世代が復活させ、それに同世代が飛びつき、SNSなどでも盛り上がりを見せているわけだ。20年という時を経て復活した“ゴジハムくん”を、生みの親の一人として、沢辺氏はどう見ているのか。

「ゴジハムくんに注目する人がいるのが意外で、『物好きな人がいるなあ』というのが第一印象ですね(笑)。20年経って復活するなんて想像もしていなかったし、ご連絡をいただいて、『ああ、20年前だったんだ』と思ったくらい。ただ、『20年』というのが、ちょうど良い時期なんでしょうね。当時観た人が幼稚園児や小学生だったとすると、今は会社に入って数年経っている時期。そういう人たちが何かやりたいと思ったとき、自分が掛け値なしに好きだったもの、子どもの頃に強烈な印象を抱いたものを思い出す。さらに、そういう世代のお子様が大きくなったときに、また引き継がれていけばと。幸い東宝さんと弊社は、『ドラえもん』、『名探偵コナン』、『ポケットモンスター』など、何十年という長期にわたって、毎年たくさんのお客さんに来ていただける作品を一緒に手掛けています。こうしたご縁はありがたいなと思いますし、長く続けるとゴジハムくん復活のような嬉しいサプライズがあるんだなと思いました(笑)」

(取材・文/田幸和歌子)