ポップスとオペラの歌唱を融合させた“ポップオペラ” という独自のスタイルで活動する藤澤ノリマサ。2008年に「ダッタン人の踊り」でメジャーデビューしてからこれまで、クラシックやJ-POPの名曲を藤澤流にアレンジして歌ってきたが、13年目にして初めて、全曲オリジナルのアルバム『La Luce -ラ・ルーチェ-』をリリースした。

【写真】かわいい…”羊”のかぶりものをして新曲発売イベントに臨む藤澤ノリマサ

■オリジナルアルバム制作のきっかけは、デビュー前の思い出が詰まった「手紙」

「2018年の10周年を機に、何か今までとは違うことがしたくなったんです。元々曲を作ることが好きでしたし、SMAPさんの『ひとつだけの愛~アベ・マリア』、加地葵(CV.宮野真守)さんの『You're in my heart』(アルバム『金色のコルダ~secondo passo~Tears』収録)など、アーティストへの楽曲提供も経て、次第に自分で歌う曲を自分で書いて、それをアルバムにして、ライブで歌っていきたい…と思うようになりました」

 その第一歩になったのが、今回のアルバムの最後に収録されている「手紙」。作詞家・松井五郎氏が詞を手掛けたこの曲は、19年9月の東京・紀尾井ホールでのコンサートで初披露された。

「デビューするために100社くらい事務所のオーディションを受けたんです。何度受けても落ち続けて…、そんな時に両親から “もう、帰って来ていいんだよ”という手紙が届いたんです。池袋西口公園で号泣しながら読んで、“絶対にデビューしてやる!”と心に誓いました。その時のことを歌にしたくて、12年頃から歌詞を書いていただいている松井五郎先生に、僕の気持ちを“5メートルメール”と呼んでいる長文のメールにしたためて送ったら、この歌詞がポーンと返ってきたんです。それを読んだらスルスルと曲が書けてしまって。この日のコンサートには、札幌から母が駆けつけてくれて、泣いていましたね」

 同曲を聴いたファンの「この曲を早くCDにしてくださいね」の言葉も藤澤の背中を押した。それから具体的なリリース日は決めずに、松井氏と二人三脚で楽曲作りを続けていった。

■作詞家・松井五郎との二人三脚で生まれた12編の歌物語

「僕が曲を作るときは、まず、鍵盤の前に詞を置いて2回読むんです。それからメジャーにするかマイナーにするかを考えて、メロディーをイメージしていくのですが、松井先生の詞を読むと、本当にメロディーが浮かんでくるんですよ。もう、詞先じゃないと曲が作れないかもと思うくらい(笑)。今回、松井先生には作詞だけでなく、プロデュースもお願いしていて。“こうしたらちょっといいかもね”というひと言があとから効いてくる。まるで、マジックのように(笑)。一緒に制作をすることで、曲を作る楽しみを再認識した気がします」

 藤澤の“5メートルメール”から生まれた「手紙」、「帰り道」、「Song Is My Life」、飼い犬・小太郎の目線で描いた「誰か僕に名前をください」、意気投合した沢田知可子とデュエットするために作った「I Feel」、そして「デビュー曲『ダッタン人の踊り』のようなテンポ感の曲でいきたい」という松井氏の提案から生まれた「La Luce」まで。“ポップオペラ”の藤澤ノリマサのイメージで聴くと、ちょっと驚くかもしれない12編の歌物語が、コロナ禍に紡がれていった。本作のプレスリリースには「明日をあきらめないあなたに」という一文が添えられている。「あなた」としながら実は、藤澤自身に向けたメッセージだったのではないだろうか。

「そうですね。今のコロナの状況に向けた言葉でもあり、デビューするまでに何度もあきらめかけた自分に向けた言葉でもあります。デビューしてからも、苦しいことはありました。でも苦しいことがないと、やっぱりそこで終わってしまうし、苦しいことがない人なんていないと僕は思うんです。そんな中で頑張ることができたのは、支えてくれるファンの方やスタッフの皆さんがいたから。僕は歌でしか恩返しができないので、そういう想いを込めたアルバムを作りたかった。今の暗澹とした日々の中で、友情、恋愛、家族……、普遍的なものを提示したくて。特にタイトル曲「La Luce」には、音楽の力で人の心に希望の光を灯したいという思いが込められています」

■ファンからのメッセージによって音楽の力は無限であることを再認識

 音楽の力――。それを実感したエピソードがあるという。

「東日本大震災の後に、僕がパーソナリティをしていた北海道のラジオ番組に、“生きるのが嫌になった時、ノリマサさんの曲に出合って救われました。少し前を見て歩いていこうと思いました”というお便りが届いて。その時に“僕はすごい仕事をさせてもらっているんだ”と実感したんです。オーディションに落ち続けていた頃、“何のために歌っているのか”とよく聞かれて、その度に“好きだから”と答えていましたが、正解をやっと見つけた気がしました。歌によって心が動かされ、救われる人がいるんですよ。コロナ禍の今も、そういうメッセージをいただく度に、音楽の力は無限なんだということを再認識しています」

 自分で歌う曲を自分で書く…。本作でソングライターという夢を叶えた今、次なる目標を尋ねると、「とにかくコンサートで歌いたい」と即答された。

「僕はこれまでショッピングモールやイベントなどで、僕のことを知らない人に向けて歌を届けて、応援してくれるファンを増やしてきたので、歌わないことには始まらないんです(笑)」

 待望のコンサート『La Luce クラシカルコンサート』は、今年9月に東京と大阪で、カルテットで開催される予定になっている。東京は、「手紙」の初演と同じ紀尾井ホールだ。「出発の場所に帰るようで、今から、すごく楽しみにしています」と藤澤は目を輝かせる。『La Luce -ラ・ルーチェ-』の制作を通して、自分の内面と向き合った彼は、果たしてどんな歌声を響かせるのだろうか。その姿を想像するだけで気持ちが浮き立ってくる。

プロフィール
ふじさわ・のりまさ/声楽家だった父と歌の先生だった母との間に生まれ、幼少の頃から歌に溢れる家庭に育ち、自然と人前で唄うことに興味を持つ。小学1年生の時、テレビで歌を唄う歌手を見て「自分も歌手になりたい」と思うようになり小学3年生の時、初めてステージで歌を唄い、それ以来人前で歌を唄うことが好きになる。2001 年、武蔵野音楽大学入学のため上京。卒業後、ソロアーティストとしてデビューを目指し精力的に曲作りとライブ活動を行い、08年にドリーミュージックよりデビュー。1曲の中にポップスとオペラの歌唱を融合させた独自の“ポップオペラ” というスタイルで活動を続けている。16年ワーナーミュージックに移籍、2枚のアルバムをリリース。