ロンドンブーツ1号2号の田村淳(47)が、31日に書き下ろしのノンフィクション『母ちゃんのフラフープ』(ブックマン社)を出版。同書では、昨年訪れた母・久仁子さんとの別れを、自身の半生とともにつづっている。淳は「僕が二十歳くらいの頃から、母ちゃんは『延命治療をしないでほしい』と話していました。家族で話し合う時間が十分にあったので、母ちゃんの意志、尊厳を家族として重視するスタンスを確認することができました。なので、親父・僕・弟の意見もまとまりやすかった。この本をきっかけに、死ぬとはどういうことか、どういう意思表示をしないといけないかといった、タブー視されている死の話を、家族でしてほしい」と言葉に力を込める。

【写真】「幸せそう」「娘ちゃん達可愛い」長女&次女とピクニックを楽しむ田村淳

 同書のプロローグは、このように書かれている。「2020年8月。コロナ禍の中、がん終末期で入院中の母・久仁子(くにこ)は、72歳の誕生日をどうしても自宅でお祝いしたいと願う。痛い、苦しいと言ったら、一時退院の許可が下りないかもしれないと考え、最後の力を振り絞る。久仁子は、一切の延命治療を拒否。尊厳死宣言書を残し、自分の最期を決めていた。まだ生きていてほしい。だけど旅立つ本人の希望を、息子は、夫は、どのように受け入れたのか?」。コロナ禍で、病院に会いに行くにも苦労したという。

 「病院に会いにいくと、身内であってもひとりしか入れなくて。6月に次女が生まれたのですが、母ちゃんが病院に入る時期とちょうど重なっていました。次女はまだひとりで歩けないけど、母ちゃんは『死ぬまでに、孫を抱っこしたい』と。そこをどうやって抱っこしてあげられるかなと考えるのが大変でした。だから、母ちゃんは痛みをこらえて、とにかく家に帰ることを選んで『誕生日を家族で祝いたいから、一旦退院させてください』と伝えて、お医者さんから許可をもらいました」。

 実家を訪れて、久仁子さんと“最期のあいさつ”をするシーンをつづる際には、何度も抑えきれない思いがこみ上げた。「やっぱり、母ちゃんと別れるところの描写は苦しかったです。僕も何度も書きながら泣いちゃって、泣くと冷静な思考にならないので、一旦やめてみたり…。でも、書くことによって『なんで、あの時ハグをしたかったんだろう』とか、ハグした時の、母ちゃんの体のやせ具合、体温があって、温かさを感じたこととか、その時には感じられなかった複雑な思いを感じることができました。『行ってきます』と母ちゃんに伝えて、家をあとにした感覚が、僕が上京する時の旅立ちとリンクして…。『今、この家を出ると、もう母ちゃんと会えなくなる』という思い、母ちゃんをハグした時のぬくもりが残っている今のうちに書き記したいと思って、書き進めました」。

 久仁子さんの教えは、行動の指針にもなっていると淳はかみしめるように話す。「『興味・関心を持つことは自分で見つける』『人に迷惑をかけずに、やりたいことをやりなさい』というのは、自分に大きな影響を与えています。今のところは、多少人に迷惑をかけながらの人生ではありますが(笑)。歳を重ねるとともに、極力人に迷惑をかけず、自分がやりたいことをどうやって実現していくかは、うまくできているのではないかな」。慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科に入学し、遺書や死生観について、さまざまなアンケートやワークショップを行ったのも、久仁子さんのことが念頭にあったからだ。

 「遺書の研究をやってみて感じたのは、遺書といえば『死ぬ前に書くもの』というのが大方の受け止め方で、死ぬ前にメッセージを残すことの意義を伝えることが必要だなと思いました。たしかに、遺された人へのメッセージでもあるのですが、遺書を作ることで自分にも気づきがあるというのは、2000人の遺書を読んでいく中で感じました。『自分の生きる道が明確になった』『自分を客観視することができた』という声も寄せられているので、実は自分のためにもなるのではないか。そう考えると、母ちゃんは生きるためにメッセージを残したんですよね」。

 書籍のタイトルは、久仁子さんが遺書動画サービス「ITAKOTO」に送ってくれた動画から採用している。「僕が『遺書動画の研究をやっているからちょっと付き合ってよ』と言って、しぶしぶ送ってきてくれたのがうしろ向きでフラフープをしている動画でした。それを見た時に、自分も固定観念にとらわれているなと。遺書動画サービスといえば、正面を向いて言うものがスタンダードだと思っていたのが、何でもいいんだと(笑)。母ちゃんの声の質感とか実家の畳のやけ具合とか、そういう物が残っていても遺書動画として成立するんだなと」。さらに、遺書としてメッセージを遺すことの必要性を説く。

 「亡くなった後に、スマホに遺っていた動画を見返すのと『死ぬ前に、あなたたちにこの動画を捧げます』と伝えられたものを見るのでは、意味合いが違いますよね。母ちゃんは死ぬ気で、あのフラフープ動画を家族に遺してくれたのだと思うと、ただおばあちゃんがフラフープを回しているのではなくて、ずっと続いていくんだよっていうメッセージがあったような気がします」。

 久仁子さんの教えは、淳の子どもにも受け継がれていく。「4歳の娘は、自分でYouTubeを見て『チアリーダーやりたい』と言っています。また、すぐになりたいものも変わってくるかもしれないですが、やりたいことを自分で探せる人間になっているので、母ちゃんの教えを引き継げているのかなと感じています。僕は母ちゃんより、より自由にその姿勢を貫いていきたいです」。母ちゃんのフラフープは、これからも回り続ける。