お笑いコンビ・ライセンス(藤原一裕、井本貴史)が、福岡・静岡・東京・京都・奈良をめぐる結成25周年記念の全国ツアー『25周年!ライセンス漫才トークツアー』を6月26日からスタートする。コロナ禍でさまざまなエンタメがストップするなか、どのような意気込みでツアーに挑むのか。“イケメンコンビ”として大人気だった時期のエピソードを交えながら、率直な胸の内を語ってもらった。

【写真】“元祖イケメンコンビ”時代のライセンス

■マネージャーの“喝”で決意 “隠れライセンスファン”との対面を心待ちに

 まずは、コンビにとって久々となるライブツアーのきっかけについて聞いてみた。

【藤原】ライブツアーは前々からやりたいと思っていたのですが、なかなかきっかけがつかめずにいたところ、マネージャーから「なんでやらないんですか! 重い腰を上げてやってください!」とケツを叩かれたので(笑)。本当は去年にやるつもりだったんですけど、コロナで一回見直して、感染症対策も浸透してきたと思うのでやろうかと。なので、本当は24周年でやる予定だったのですが、結果的に25周年ということになりました。

【井本】今回のツアーは、僕の気持ちのほうが大きかったかもしれない。一番のモチベーションは、「コロナ、もうええ加減にせえよ」。みんながいろんなことを我慢して、ホンマにしんどいじゃないですか。楽しいことがないから、せめて自分たちでなにかできたらいいなと思ったのが、ツアーのきっかけです。「みんな笑わせたる!」という大それたものじゃないですけど(笑)、みんなも僕もしんどい状況のなか、小さいですけど少しの気持ちのゆとりにつながるものになればと思っています。

 最近はソロ活動として、井本はオンラインサロン、藤原は役者や家族でYouTubeと新しいジャンルに意欲的に挑戦している。しかしそれはコロナの影響による結果論で、劇場での出番が減ることで必然的にソロ活動が増加。今回のツアーは「コンビの正しいバランスを自分たちで取り戻すことも目的」(藤原)となっている。

 ツアー開催の発表時、藤原は「隠れライセンスファンに会いにライブツアーに出かけます」とコメントを寄せた。当時に比べ、ファンの減少を実感しているのか。

【藤原】減るどころじゃないですよ、みんな消えちゃいました(笑)。あの人たちはどこにいったんですか?

【井本】(2008年に)Zeppツアーやってたときなんて、関ヶ原の戦いの軍勢くらいいましたからね(笑)。いつのまにかスーッと消えていったから、元々おらんかったのかなって思ったり。でもありがたいことに、ツアーを発表したらすごい反響があったんですよ。「実在したんや」と実感できましたし、しっかり頑張ろうと気が引き締まりました。

【藤原】いまYouTubeとかSNSにコメントをくださる方って、「昔ライセンスが大好きでした」って人ばっかりなんですよ。「あのときに追っかけをやってて、今は結婚して子供ができて。劇場に行くのは難しくなったけど、YouTubeなら育児の合間に見ることができるのでうれしいです」って。それが“隠れライセンスファン”です。本人たちは隠れてるつもりはないでしょうが(笑)。今回のツアーは、子供を預けられるように今からパパとか家族の人にお願いしておいて、ぜひお越しください!

【井本】もちろん今の若い世代の人たちにも届けたいですよ!

■対照的な「イケメン芸人」時代のスタンス EXITへの称賛も

 さかのぼること13年前、ライセンスは2008年にお笑い芸人としては初となる「全国Zeppツアー」を開催し、全国で6000人もの観客を動員した。さらに翌09年の「吉本男前ランキング」で藤原が1位&井本が4位に輝く。それまでも徳井義実(チュートリアル)や井上聡(次長課長)などが“男前芸人”として支持されていたが、コンビそろってイケメンだったライセンスは絶大な人気を獲得した。それから10年以上が経過したいま、改めて当時の心境を振り返ってもらった。

【井本】人気はすごかったですけど、僕はそんな状況がクソほど嫌でした。芸人ですから純粋にネタを見てほしかったけど、「ワーキャー」人気が邪魔くさかった。でも、その人気のおかげでいただいた仕事もたくさんあったから、葛藤もあったし、もどかしかったし、ホンマに難しかったですよね。

【藤原】僕はけっこう利用しようって考えてました。どうせいつかオッサンになるし、そのときに「イケメン芸人」ってカッコつけてる昔の写真が出されて「何やってるんすか!」とかイジられても面白いんかなって。むっちゃ忙しかったから難しいことを考える暇がなかったし、来る仕事は拒まずでやってましたね。5分でも空けば渋谷∞ホールの床で何も敷かずに寝たりとか、楽しくしてましたよ。

【井本】お笑いと関係ない取材とかも多くて、嫌で嫌でしゃーなかったので、僕はむっちゃ断ってたんです。だから、忙しいのにどんな仕事でも受ける藤原を偉いなって思ってました。自分もやったほうがいいのは分かってるんですけど、どうしてもやりたくない。いま思えば、ただのワガママですよね。

 今の時代を代表するイケメンコンビ・EXITについて、井本は「彼らの本心はわからないけど、あれだけ活躍しているのはすごいです」と称賛し、若手芸人に向けて「ワーキャー的な企画もできるならやったほうがいい」とアドバイスする。その背景には、若気の至りへの後悔があるからだ。

【井本】自分の中に譲れない芸人像があって、当時は「ホンマに忙しいのにこれをやらなアカンのか」という気持ちに引っかかりがあったから、どうしてもできなかった。大人じゃなかったんですね。今だったら全力でできるんですけど、もうそんな話は来ないし(笑)。全力でやっておけば良かったという後悔もあります。情けない話ですけどね。

■いつしか迎えた劇場出番の“トリ” 貪欲な浜田雅功の姿勢に「説教しました(笑)」

 “ワーキャー”ブームが一段落して30代後半を迎えると、劇場での出番が後ろになっていき、若い人を支えるポジションを任されるなど、自分たちの立ち位置の変化を感じることが増えてきたという。

【藤原】ルミネとかの劇場の出番がトリだったりすると、「俺らがトリ?」っていう感覚がまだあって。周りはなんとも思ってなかったりするんでしょうけど、その環境に戸惑う瞬間はあります。

【井本】この前に1年目の芸人の子があいさつに来たんですけど、ホンマにカチコチに緊張してて、すごい早口で何を言ってるかわからなくて。「そないに緊張されなアカンか?」って思って、自分が1年目のときに今の自分の芸歴の人を調べてみたら、大木こだまひびき師匠だったんです(笑)。そら新人ならカチコチになるなと。こっちはいつまでも若い感覚だし、『ガキの使い』に行けば超絶若手ですけど、芸歴を重ねると立ち位置が変わっていく。それが芸人の世界では普通のことなんですけど、ちょっと戸惑いはありますね。

【藤原】若い頃は将来のビジョンとか考えてましたけど、「考えても意味がない。なりたいようになれない」ということに30代前半で気づきました。これだけ芸人の数がいて、下からもどんどん来て、なるようにしかならないから、目の前のお仕事を精一杯やるしかないんです。ただ、理想を言わせていただけるなら、還暦を過ぎて、サンパチマイクの前で相方に「孫うまれたらしいな」っていう漫才をやれていたらいいなと思いますよね。

【井本】死ぬまで芸人でいるでしょうね。それが吉本のいいとこですよ、辞めないと言わない限り、芸人でいられますから。いまだに収録でうまくいかなかったこととか、帰りに悔しいと思うことが山程ありますから、そう思えるうちは芸人を続けていきたいです。スターになったらそういう感情はなくなるのかなって思ってたけど、ダウンタウンの浜田(雅功)さんは、いまでも収録後に「今日の俺、どうやった?」とか聞いてきて、まだ伸びようとしてるやんって(笑)。何年もトップを走り続けてるのに、最近も「何度目かの絶頂期」とか言われてるから、「ええかげんにしてください」って説教しましたよ(笑)。

 最後に、改めてライブツアーへの思いを聞いた。

【井本】去年からコロナが広まって、みなさんいろんな感情を抱えていると思いますが、せめて笑顔になってくれるお手伝いができればいいなと。だから、コロナがなければツアーもやってなかったかもって考えると、コロナもネガティブなことばかりじゃないですよね。配信環境が充実したりとか、表現方法が増えたりとか。まぁ、そうでも考えないとやってられないという気持ちもありますけど(笑)。最近しんどいなって感じている方は、一歩といわず半歩だけでも足を踏み出して、劇場に来ていただいて、同じ空間で時間を過ごしていただけたら気分も晴れると思います。ツアー会場がお近くでしたら、ぜひお越しください。

【藤原】いまSNSでしか我々を見ていない昔のファンの人たちにたくさん来て頂いて、「お互いに老けたね」って同窓会みたいになれたらいいですね(笑)。

◆「25周年!ライセンス漫才トークツアー~新作3本+トーク30分の60分公演~」
【福岡】6/26 会場:よしもと福岡 大和証券/CONNECT 劇場
【静岡】7/17 会場:沼津ラクーンよしもと劇場
【東京】8/14 会場:よしもと有楽町シアター
【京都】9/4 会場:よしもと祇園花月