生存者証言を参考に、北朝鮮強制収容所の内情を描きつつ、過酷な環境で生きていく家族とその仲間たちが生き抜いていく姿を3Dアニメーションで描いた映画『トゥルーノース』(配給:東映ビデオ)が、6月4日よりTOHOシネマズ シャンテ(東京)ほかで全国公開される。

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 このたび、北朝鮮・平壌で両親と妹と共に幸せに暮らしていた主人公ヨハン一家のもとに、突然党の関係者が現れ、父が政治犯の疑いで逮捕されたためヨハンたちも強制収容所行きを命ぜられてしまう、混乱と緊迫の本編映像が一部解禁された。

 本作は、ドキュメンタリー映画『happy - しあわせを探すあなたへ』(2012年)のプロデューサーを務めた清水ハン栄治の初監督作品。実際に収容体験をもつ脱北者や元看守などにインタビューを行い10年もの歳月をかけて作り上げた。

 アニメ映画の世界最高峰を選ぶ権威あるアヌシー国際アニメーション映画祭「長編コントルシャン部門」にノミネートされたほか、ワルシャワ国際映画祭・審査員特別賞、ナッシュビル映画祭・長編アニメ部門グランプリ、韓国のプチョン国際アニメーション映画祭長編部門の特別賞を受賞するなど海外の映画祭を席巻。昨年の第33回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス部門」では正式上映され話題となった。

 解禁された本編シーンは、1950年代から1984年まで続いた“在日朝鮮人の帰還事業”で北朝鮮に渡った主人公ヨハン一家の父が失踪し、母が電話で「出張に行くとは聞いてません。もう一度調べて頂けますか?」とその安否を心配する場面から始まる。無邪気に「お父さんいつ帰ってくる?」と尋ねるヨハンには「もうすぐ。きっともうすぐ」と気丈に答える母。

 しかし、夜中に突然党の関係者がやってきて「貴方の夫は国家と党に対して深刻な罪を犯しました」と告げ、乗り込んでくる。「何かの間違いです」と戸惑う母は担当者に日本製の時計を差し出し何とかその場をとりなそうとするが、結局「どこに連れて行くのですか? 夫はどこに」という問いかけにも「すぐに会えますよ」と冷静に返されただけ。ヨハンとミヒも着の身着のままトラックの荷台に乗ることを促される…。母の戸惑いの言葉、そしてヨハンとミヒ幼い子どもたちの表情から、彼らの不安が一気に観客にも伝わる緊迫のシーンとなっている。

 北朝鮮強制収容所という世界で最も過酷な場所で、希望を捨てずに生き抜こうとする者たちを描き、「人は何のために生きるのか」を我々に問いかける本作。監督が「ただの娯楽作品に終わらず、観客の皆さんの心を動かし、声なき人々の声となってほしい」と願う、現在進行形の物語だ。

 そして、『トゥルーノース』というタイトルには2つの意味が込められていると監督は言う。「ひとつは英語の慣用句で“絶対的な羅針盤”の意。人間として進むべき方向や生きる真の目的を、究極の環境でも見失わない主人公たちの葛藤を描きたかった。ふたつめに“ニュースでは報道されない北朝鮮の現実”。それは今日でも12万人以上が収容されている政治犯強制収容所での人権蹂躙と、抑圧の中でも健気に生きる北朝鮮の人々のヒューマニティーを表現したかったのです」と、本作に込めた思いを語っている。 

■現在決定している全国の公開館の詳細は公式ホームページに掲載
www.true-north.jp