プロ絵師夫婦YouTuberとして活動中の「なつめさんち」チャンネル。夫婦ともイラストレーターで、“絵を描く”ことにまつわる企画を日々投稿している。今年2月に投稿された、「ボールペンのインクを使い切るまで絵を描く」企画は260万再生超えの大ヒット。夫婦でYouTuberとして活動することになったきっかけや、夫婦だからこそのメリットについても語ってくれた。

【画像】「これ本当に塗り絵?」100均の道具だけで見事に描かれる、煉獄さん他『鬼滅の刃』のキャラクターたち

■同じ漫画家の夢持ち結婚…フリーで働きながらYouTubeに見出した光明

――お二人は「プロ絵師夫婦YouTuber・なつめさんち」として活動されていますが、先日、『鬼滅の刃』の塗り絵で『週刊少年ジャンプ』公式YouTubeに出演され、話題になりました。反響はいかがでしたか。

【夫・げん(以下 げん)】 再生数やコメント欄を見て、シンプルに安心しましたね。「ジャンプチャンネルの中で、うちが出た動画だけ再生数が落ち込んだらどうしよう」と思っていたので。

【妻・さや(以下 さや)】 『週刊少年ジャンプ』のファンで公式チャンネルを見ている方からしたら「誰?」って感じだもんね(笑)。

――そもそもYouTubeを始めたきっかけは何だったのですか。

【げん】 3年前に始めたんですが、当時はまだ会社勤めをしていて、これからの仕事の仕方に悩んでいた時期だったことと、シンプルにさやが面白かったことですね(笑)。ゆくゆくはイラストや映像をフリーランスでやっていけたらと思っていたんですが、最初は発信力をつけるためにYouTubeが良いんじゃないかと。

【さや】 2人とも子どもの頃から漫画家になりたかったんですが、お互いに行動できず、新卒で入った会社で制作チームとしてデザイン、イラスト、映像をやっていたんですよ。でもどうしても夢が諦めきれず、会社を辞めて、漫画を描きながら某テーマパークのキャストさんをやっていました。

【げん】 それで、さやが辞めた1年後に僕も会社を辞めて、転職期間に結婚したんです。それでお互いにイラストや映像系の仕事を個人で受けつつ、同時進行でYouTubeのゲーム実況から始めました。「ゲーム実況なら、話題のゲームとかをきっかけに見ていただける方が増えるんじゃないか」という安直な発想でした。それは大間違いだったわけですが。

【さや】 他にもいっぱいやってる人いるからね(笑)。

【げん】 ただ、途中からゲームを題材にしたお絵描きを始め、その頃から、今の事務所にも所属して、ありがたいことに企業案件も増えてきて。なかでも、ゲームの案件を依頼されることが多かったんですが、ただやるだけでは面白くないなと思って。だから、案件の題材をイラストで表現したら、分かりやすいし、楽しいと思ってお絵かき動画にしたら、それが受け入れてもらえて、徐々にお絵かきに絞っていった感じです。当時は幸運な事に、有名なイラストレーターさんとかでYouTubeをやっている人は少なかったのもありますね。

【さや】 講座としてお絵かきのハウツーをやる方はいらっしゃったけど、お絵かきで遊んだり、ふざけたりっていうYouTuberっぽい事をしてる人はあまりいなかったよね(笑)

■夫婦YouTuberであるが故の24時間共同生活、同じ悩みを共有できることがメリットに

――イラストの切り口も面白いですよね。これまでの動画の中で、お気に入りはどれですか。

【げん】 一昨年に出した「1ミリも知らないキャラでも描ける」というシリーズ企画の1本目。企業の紹介案件で、僕たちがまったく分からない状態で受けてみんなにお勧めするのって、どうなんだろうと。だったら、逆に全く知らないまま名前だけ聞いてキャラデザを当てるのはどうかと思い、やってみたら、かなり反響があって。『鬼滅の刃』も僕たちがまだ、恐縮ながら未読だった時期に、名前からキャラデザを当てる動画をやったら面白いんじゃないかと思ってやらせていただいたんです。その動画の冒頭で「集英社さん、案件お待ちしております」と冗談で言っていたので、実際に公式チャンネルに呼んでいただいたのは本当に嬉しかったです。(笑)

【さや】 1年がかりの伏線回収なんですよ(笑)。しかも、私たち自身は気づいていなくて、視聴者さんに言われて思い出したんです。

――それにしても、ご夫婦で完全に同業だと、日常生活とお仕事が地続きですよね。

【げん】 切り分けはないですね。日常的にアイディアはやりとりしていて、最近は1週間の頭に2人で企画を詰めています。全部家の中でやっていて、全然外に出ない(笑)。

【さや】 「24時間一緒にいるのは凄いね」って周りの人によく言われます。

【げん】 ただ、どっちもクリエイター気質だからこそぶつかることは、よくありますよ。

【さや】 しょっちゅうケンカしてます。(げんは)融通がきかなくて頑固だから(笑)

――ご夫婦でYouTuberをしていて良かったことは?

【げん】 良かったことは、同じ悩みを共有できること。2人で一緒にやっていると、良いことも悪いことも同じなので、同じタイミングで喜んで、同じタイミングで落ちるんです。二人の感情の動きが一致することが多いのが良い気がします。

【さや】 それで落ちたときは、やむをえず「ダメだ、もう休みにしよう」みたいになります。

【げん】 休みという休みは最近ないので、限界になったときに休む感じですね。「これは今、活動しちゃダメなんだ」ってときに休みにして、気持ちを切り替えます。(笑)

■イラストの“過程”を伝えられるのが動画の強み「クリエイターが売れるスピード感は、今の時代の特徴」

――クリエイターが作品を披露する機会がSNSによって増えたことをどう思いますか。

【げん】 シンプルに良いことだと思います。逆に言うと、僕たちなんて、この時代じゃなかったら出てこられなかったので。もともと会社員でやっていた人間が1~2年頑張ってここまでこられるというスピード感は、今の時代の特徴だなと。完全に運だと思っているんですよ。僕たちは、絵の実力だけでいうとまだまだ全然足りないし。

【さや】 私たち、「見つけてもらえた」感じだよね。見つけてもらうために、どういう企画でどういうやり方で何時に投稿すれば良いかなどは研究して、努力していたけど。

【げん】 でも、できる事をMAXやった上で、見つけてもらうのって「運」なんですよ。良い時代だし、逆に怖くもあるし、この後いつまでも見てもらえるかというと、正直自信はないし。

【さや】 動画出すたび毎回ドキドキしているよね。(笑)

――YouTubeだからこそ伝えられることはどんなことでしょうか。

【さや】 “楽しさ”ですかね。完成品はTwitterとかでも見られるけど、失敗したり、わちゃわちゃした「過程」も伝えられるのは動画の良いところですね(笑)

【げん】 さやとちょっと被るけど、二人で楽しくお喋りしながらできること。やっぱり「絵を描くのって楽しいんだよ!」っていう本質を少しでもお伝えできたら嬉しいですね。

――今後、“プロ絵師夫婦YouTuber”としてどんな仕事をしていきたいですか。

【げん】 今、企画しているのは、「なつめさんち」で漫画を描いて単行本として出すこと。2人で作るオリジナルストーリー漫画を出せたらと思っています。

【さや】 作者が二人いて、エピソードごとに分担してつなげていく構成を考えています。まとまるのか?というドキドキ感はありますが(笑)。ケンカは殴り合いまでは大丈夫(笑)。


(取材・文/田幸和歌子)