ボランティアメンバーが、その猫を見つけたのは、ある暑い夜のことだった。飢えてトンガリ顔になっていたその子猫は、保護されてからもなかなかつらい記憶が抜けなかったようだ。地域猫にエサをあげることに賛否はあるが、一体どうすれば…? 猫の保護活動を行うNPO法人『ねこけん』代表理事の溝上奈緒子氏に聞いた。

【写真】「もはや別猫!」飢えてトンガリ顔だった子猫、行き倒れた保護当時から幸せ猫にジョブチェンジ!

■熱中症か? 貧血か? 熱帯夜の路上で倒れていた子猫

 ある夏の熱帯夜、その子猫は道路に倒れていた。見つけたのは、朝から保護活動を続けていた『ねこけん』のメンバーだ。

 「場所は練馬区でした。車で走っていたら、行き倒れた子猫が道路に横たわっていて。ガリガリに痩せていて、意識もないようでした」と溝上氏。

 そばに寄っても、ごはんをあげても動かない。少し頭を上げるため、生きてはいるようだった。熱中症か? 貧血か? とにかく急いで、動物病院へと運んだ。明るいところで見てみると、やはり子猫はひどく痩せており、目は落ちくぼみ、腰骨やあばら骨が浮き出るほど。

 「体を冷やして点滴を施し、意識は戻りました。命に別状はなかったのですが、やっぱりすごく飢えていた」というこの猫。もらったごはんをガツガツと食べるのはもちろん、「トイレのおから砂まで食べてしまうほど」だったという。

■エサをあげることに賛否、飢えた猫たちを救う術とは?

 こうして適切な処置を受け、救われたこの子猫。愛情たっぷりの保護猫生活をスタートさせ、“タイガー”という名前ももらった。これまでとは違い、安心で安全な場所で、毎日しっかりごはんをお腹いっぱい食べられる。だが、“タイガー”は飢えた記憶を引きずってしまい、食べても食べても満足できなかったという。他の猫が吐いたものまで食べてしまうほど、その記憶は強烈だったのだろう。

 「最近では、地域猫にごはんをあげることは悪いこととされ、あげない人も増えています。ただ、“タイガー”のように、飢えてしまう猫もたくさんいる。エサをあげない、という前に、増やさないことが一番大事。そのために、TNR活動(TRAP=つかまえる、NEUTER=不妊手術する、RETURN=元の場所に戻す)が必要なんです」

 保護された後も、飢えの記憶に悩まされた“タイガー”だったが、だんだんと変化が現れ、ほかの保護猫たちとも遊ぶようになった。意外にも、迎えてくれる家族との出会いには時間がかかったが、譲渡会でようやく縁もつながった。今では、保護猫仲間だった“スピ”とともに、優しい家族に見守られて暮らしている。

 飢えてトンガリ顔だった子猫は、こうしてつらい記憶を上書きし、可愛らしく成長した。“タイガー”のような不幸な猫を増やさないためにも、TNR活動の大事さを感じるエピソードだった。