たしかな演技力とアイドル時代から変わらぬ可愛らしい風貌のまま、長年にわたって第一線を走り続けてきた永作博美。4月30日スタートのNHKドラマ10『半径5メートル』(NHK総合 夜10時~)では、世の女性たちが身近で感じる違和感や生きづらさに型破りな方法で迫る女性週刊誌のベテラン記者・宝子役を演じている。永作は、SNSやYouTubeに身を置かず活動を続けているが、役と重なるように世間に振り回されることなく“自分基準”を貫いていける理由を聞いた。

【写真】変わらぬ美しさ…透き通るような“二の腕”と“美脚”を披露した永作博美

◆「自分で判断して行動する」ことの大切さをコミカルに問題提起しているドラマ

──ドラマ10『半径5メートル』の公式コメントで「生きることって大変なんだな、と思わずにはいられない今日この頃」とおっしゃっていました。その真意は?

【永作博美】 新型コロナウイルスの感染者が急激に増えた頃、「生きているだけで試されているみたいだな」と感じたことがあったんです。感染した方が肩身の狭い思いをしているという報道を見て、「誰のせいでもないのにな」と。でもコロナだけでなく、同じようなことってきっと世の中でたくさん起きていますよね。

──第1話ではレトルトおでんを買おうとした主婦が、見知らぬ男性から「おでんぐらい自分で作れ」と怒られるというエピソードが描かれています。

【永作博美】 「一からご飯を作らないのは愛情が足りない」という正論めいた言説ってありますもんね。でも“一からってどこから?”“おでんだったらコンニャク作りからすればいいの?”と、そこまで究極的でなくても、真面目で優しい人ほど正面から受け止めて苦しんでしまうことはたくさんあると思います。

──情報が溢れているだけに、正解がないことにも正解を求めてしまうのかもしれません。

【永作博美】 もっと自分基準でいたほうが、人生を楽しめそうな気もするんですけどね、自分基準を貫くのもなかなか勇気がいるもので。そんな今の時代に、「自分で判断して行動する」ことの大切さをコミカルに問題提起する、とても貴重なドラマになりそうです。

──演じる宝子さんはどんなキャラクターですか?

【永作博美】 女性週刊誌の記者で、人とは違うアプローチで物事の本質を見極めようとする人ですね。先ほどの「一からご飯を作れ」に対しても、通り一遍のジェンダー論で済まさずに自分でコンニャクを作り始めたりと。

──芳根京子さん演じる若手編集者とはどんな関係ですか?

【永作博美】 メンターと言うんでしょうかね。厳しい言葉もかけるんですが、その言葉の奥にはちゃんと愛がある。宝子は型破りなようで揺るぎない自分基準がある人なので、1つひとつの台詞を重くするのではなく、慎重に発するように心がけています。

◆アイドル時代には葛藤も、芝居が仕事の中心になって乗り越えられた

──永作さんはSNSをやっていませんが、それも今の時代には潔い姿勢だと思います。

【永作博美】 それほど深く考えてのことではないんです。以前連載をやっていたことがあって、そのときは書くことがなくても書かなければいけなかったんですね。そうすると余計なことを書いてしまったり、ときには自分を飾ってしまったりして、「違うな」と思ったことがあったんです。いつの間にか自分が自分ではなくなっていく感じがして。たぶんSNSをやらないのは、そこに歯止めをかけているんだと思います。

──自己発信にはあまり興味がないほうですか?

【永作博美】 世の中で起きていることにはわりと興味があるほうで、いろいろと頭の中で巡り巡ってはいるんですが、不特定多数の方に伝えることに疑問を持っているのかもしれません。どうでもいいことを発信して、受け取る方にお時間を取らせるのも申し訳ないですしね。こういうインタビューのタイミングに、少しお答えする程度でいいかなと思っています。

──SNSをやるのも一種の同調圧力だと思いますが、あまり感じないほうですか?

【永作博美】 社会に出る前は、とにかく1人になれるところを探していました。クラスの女の子同士で「○○というアイドルのなかで誰が好き?」といった話題になったときも、なんとなく話を合わせつつ、発言した後の喧騒を回避するために皆とは違う人の名前を言ったりして。でも今は、「あの人もいいね、この人もいいね」といった感じ。この仕事をするようになってから集団に溶け込む楽しさ、面白さを知ったような気がします。

──永作さんと言えばいくつになっても可愛らしいと評価されることもあります。

【永作博美】 そう言われて、どうお返事していいかわからない年代になってきましたけど(苦笑)。

──役者業をする上で「童顔」をネックに感じたことはないですか?

【永作博美】 若いときは葛藤がありました。私は当時のアイドルとしてはデビューが遅かったんですが、周りの女の子たちがどんどんキレイになっていくなかで、どれだけ大人っぽく装ってもそっちの方向にはなれない、自分だけ置いていかれている感がありました。そのジレンマから無理に濃い化粧をしてひどい顔になったりと、どんどん空回りしていった覚えがあります。

──そこをどう乗り越えたのでしょうか?

【永作博美】 やはり芝居が仕事の中心になったことが大きかったですね。役と自分を同化していく作業を重ねていくうちに、これは役の顔だ、役の体だというふうに思えるようになり、自分の風貌はどうでもよくなったんです。もちろんこの風貌によって出会えない役もあったかもしれませんが、出会えた役もあった。持って生まれたものですからね。受け入れています(笑)。

◆どうしようもなく心が震える瞬間がある、その思いがあるとまだまだやれることがある

──長年にわたって役者業を続けているモチベーションは、どこにあるのでしょうか?

【永作博美】 昔、自分がなぜこの仕事をしているかわからなくなったときがありました。そのときに、「心の流動を止めてはいけない」と書いた紙が残っているんですね。私には頭の整理がつかなくなると殴り書きする癖があるのですが、それを読むと、どうやら私は「自分や誰かの心を動かし続けたい」みたいなんです。芝居をしていると、どうしようもなく心が震える瞬間があって。これは役者だからこそ味わえる感覚ですが、できれば作品を観た誰かの魂も一緒に震えてくれたらこんなに最高なことはないなと、そう思うたびにまだまだやれることはあるかもしれないと思うんですよね。

──可愛らしい風貌からは意外なほど、熱いものを秘めていらっしゃる。

【永作博美】 恥ずかしい(照)。でも、いつもそんなこと考えているわけじゃないんですよ。完全に今を生きる人間なので、この先どんな仕事をしているかもイメージできないです。むしろ「今日のお夕飯どうしようかな?」と考えて瞬間で思いついた喜びのほうが尊いと思えるときもありますから。

(文/児玉澄子)