過酷な環境から助け出され、今では幸せに暮らす猫、“マーライ”。保護された後もなかなか飢餓の記憶から抜け出せなかったその猫も、NPO法人『ねこけん』による愛情いっぱいのケアにより、すっかり健康な人気者となった。譲渡会では不人気ながら、ついに幸せをつかんだ“マーライ”。そのいきさつを代表理事の溝上奈緒子氏に聞いた。

【写真】「別猫みたい!」かつての険しい顔つきからイケメンに変貌、マーライの今

■40頭以上の多頭飼育崩壊から救出、食べては吐き戻す“マーライ”

 2016年、練馬で発生した46頭(最終的には49頭)もの猫を巻き込んだ多頭飼育崩壊。劣悪な環境だったが、『ねこけん』による保護、献身的な治療や看護により、多くの猫たちが救われた。そんな中の1頭が、黒猫“マーライ”だ。

 多頭飼育をしていたのは、高齢の一人暮らしの男性だったそう。倒れて病院に搬送されたその男性は、回復したものの猫の世話ができない。そこで、『ねこけん』にレスキューの依頼がやってきた。猫たちは鼻水を垂らしていたり、目がつぶれていたり、重篤な症状に陥っている個体もいた。

 「ほとんどエサをもらうことができなかったんだと思います。“マーライ”は、なかでも一番状態の悪かった猫の1頭です」と、溝上氏は当時の状況を振り返る。

 「飢えた記憶が刷り込まれていたんでしょう。保護されてからも常にがっついて、食べては吐き戻してを繰り返していました。だから、この猫はマーライオン→“マーライ”と名付けられたんです」。

 保護当時の写真を見ると、とても険しい顔をしている“マーライ”。だが、ボランティアメンバーの愛情に触れ、だんだんと穏やかさと健康を取り戻し、すっかり巨大化した猫に。『ねこけん』ブログにもたびたび登場し、ときには「イケメン」、ときには「ヘタレ」「眉っパゲ」とイジられる人気者となった。

■人気はあるのに縁がない? 今では新たな家族の”自宅警備員”に就任

 だが、残念なことにこの“マーライ”には、なかなか新たな家族ができなかった。譲渡会に参加しても、人気はあれど譲渡の申し込みのない日々が続き、『ねこけん』メンバーも心配していたそうだ。

 そんなある日、ついに“マーライ”を迎えたいという家族が現れた。「以前から気になっていた」というその家族に、メンバーも「一緒にレスキューされた仲間たちが、どんどん幸せへと巣立って行く中、全然かすりもしなかった、あのマーライが!」と感激もひとしおだったという。

 現在は、優しい家族に迎えられ、“自宅警備員3号”(先住猫が2頭いた)として、大役に当たっているとのこと。“マーライ”が、先に巣立っていった仲間たちからの幸せバトンを受け取ったのは、24番目だった。