総合演出・宮本亞門(63)×主演・大和田美帆(37)によるリーディング演劇「『スマコ』~それでも彼女は舞台に立つ~」が、27日午後8時よりYouTubeで無料公開される。明治から大正にかけて活躍した日本の女優第一号ともいわれた松井須磨子の人生を描いた物語。当時、世界的に流行したスペイン風邪で愛する人を失うことになっても、舞台に立ち続けようとした彼女を大和田が演じる。コロナ禍の影響で「役者を辞めようと思った時期が去年ありました」と人生を見つめ直したと語る大和田に、この演劇にかける思いを聞いてみた。

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 同演劇はコロナ禍の今、宮本の「演劇の灯を消すわけにはいかない」という思いから企画がスタートし、大和田ら多くのキャスト・スタッフが賛同。松井須磨子という女優の舞台に立ち続ける「原動力」、舞台への「思い」など、彼女の生き様をリーディング演劇で表現していく。

 松井須磨子はおよそ100年前、世界で5億人が感染、1億人の死者を出したスペイン風邪によるパンデミックの初期、演劇が不要不急ではないことを証明しながら、男社会の差別の中、壮絶な人生を生き抜いてきた女優。コロナ禍の今、エンタメの必要性が問われる中で宮本は、彼女の人生を通して演劇のすばらしさを伝えたい思いで企画した。

■見つめ直した“女優業” 必要なのは「演じることが好き」プラスα

――新型コロナウイルス感染拡大で、映画やドラマ、舞台と役者が活躍する場が大きな影響を受けた1年だったと思います。この1年は自身にどのような変化がありましたか。

【大和田】 コロナを経て「何事にも挑戦していこう!という思いが強くなっていた時に、亞門さんからお話をいただいたので、「ぜひ!」とお受けしました。命さえあればいい、今まで積み重ねてきたもの失ってもいいような「失敗をまったく恐れない」自分に変化したと思います。亞門さんから「つらい時期だと思うけど、一度、ゆっくり考えて」と言われた時に、その場で「絶対にやらせてください! 私以外に誰がやるんですか!」と言うほど、それくらいの気持ちで松井須磨子を演じたい気持ちがありました。

 コロナ禍でドラマや舞台が延期となり、役者の活躍の場が減ったわけですが、それを乗り越えて今、企画や演出を自分たちで考えて行動しているので、「生きている」と強く実感しています。「役者は待つ仕事だ」とよく言われるのですが、コロナ禍はみなさん「どうしたらいいのか?」「自分に何ができるのか?」と今後の活動について考えたと思います。

 役者を辞めようと思った時期が去年ありましたが、この演劇と出会い、辞めないで良かったと思えています。自分の女優人生を見つめ直している中、松井須磨子の言葉「私は誰の指図も受けない」が強く心に響いて、女優として新たな一歩を踏み出せた気がします。10年後、「あれが女優としての転機でした」と言えるような1年になった気がします。

――松井須磨子は愛する人を失っても舞台に立ち続けた人物ですが、舞台に上がりたいという原動力は、同じ女優として理解できる部分でしたか?

【大和田】 私たち役者の仕事は、単純に演じることが好きだけでしたら、家でもやれる話だと思うんです。コロナ禍で感じたのは「演じることが好き」だけでは成り立たない仕事だと思いました。歌手の方もそうだと思うのですが、「歌うことが好き」だけでしたらカラオケでもいいわけで、プラスα(アルファ)何か違う思いが必要だと気づきました。

 昨年3月に出演舞台があったのですが、無観客でゲネプロをした際、観客に見てもらえないことに、虚しさを感じました。観客に見てもらってこそ役者が存在する意味があるので、感じたのは、役者は舞台の上に立てず演じられないことがつらいのではなくて、作品をお客様に見てもらえないことが「つらい…」と感じました。観客あってこその舞台です。

■独立した今「可能性は無限」目指す女優像は「わからない」楽しむ

――松井須磨子という人物はどのように理解し、役作りしたのでしょうか。

【大和田】 心のままに生きた人、己を貫いた人だと思いました。演じるにあたっては、信念の強さの裏にはどれだけの孤独があったのか、強いだけの女にしたくない思いが強くなりました。松井須磨子は感情を表現する場所がステージにしかない気がして、私も昨年4月に母を亡くしたのですが、5月には舞台に立ちたいと思っていました。舞台なしでは生きられない“宿命”というのが共感する部分でしたので、松井須磨子と私を重ねて見る方もいるのではないでしょうか。

――新型コロナウイルスの影響で女優人生を見つめ直すきっかけになったと思います。

【大和田】 自分以外の人生を演じたい気持ちが強くて役者の道を志したので、お芝居は“(現実)逃避”と考えています。幼少期のころから芝居が好きで、お留守番をしている時に暇で、寂しくて、つらかったので、鏡に映った自分に話しかけ始めていました(笑)1人だけの自宅で誰かがいる設定で遊ぶ逃避をしていたのですが、松井須磨子も、関連書籍を読むと「自分の人生に満足していなかった」とあったので、現実逃避したい思いもあって芝居をやり続けたのではないかと解釈しました。先ほども話した通り、観客から拍手をもらった時に私は「生きている」と実感するので、松井須磨子もそうだった気がします。

――今年4月からフリーとして活動していますが、これから目指す女優像を教えてください。

【大和田】 コロナ禍ですべてがリセットされたような気もしますし、それでも積み重ねたきた経験は体に刻まれているので、役者として今、可能性は無限だと思っています。独立したことも含め、「自分の足で歩んでいきたい」という思いは松井須磨子と同じ気がしますし、役者は出会った役によって人生が大きく変わると思っています。

 5年前に私が目指した目標も、いろんな人と出会ったことによって全く変わりました。演じる役も人と同じで、私の場合は出会う役の数によって、人生の道が変わる、増えていくと思っています。「どのような女優になりたいですか?」と聞かれた今、もう「わかりません」としか言えないです(笑)。なので、出会っていく役の数だけ私の人生が何通りも存在すると思うと、これからの人生が楽しみで仕方がないです。

 元々私は、「あした死ぬかも知れない」と思って生きてきました。それがコロナ禍の影響でさらに強く思うようになり、出会った物事に対して全力を出すことが私の強みのような気がします。計画的に目標を立てていても、あした亡くなったらその目標は叶わないですから、今、この瞬間の手応えがほしいのかも知れません。

【公演情報】
日本一わきまえない女優『スマコ』〜それでも彼女は舞台に立つ〜
出演者:
大和田美帆、福士誠治、波岡一喜、堀井新太、まりゑ、水谷あつし、西岡德馬 / 津田寛治(ナレーター)
総合演出:宮本亞門
公開期間:2021年4月27日(火)20:00〜2021年12月31日(金)
視聴方法:YouTubeにて(公開期間は無料視聴が可能)