誰もが知っている子どものおもちゃから、大人が唸るほどの高クオリティ玩具まで、さまざまな商品を生み出すバンダイ。そのノウハウを活かし、2015年よりキャラクター和菓子『食べマス』を展開している。『妖怪ウォッチ』から始まり、『名探偵コナン』『鬼滅の刃』といった人気作の主人公を練り切りで表現。発売日にはSNSに購入者の投稿であふれ、入手できずハシゴするファンも。なぜバンダイが、繊細な和菓子商品を手掛けたのか、そのきっかけを同社キャンディ事業部・西川満美子さんに聞いた。

【写真】「ちょこんと座って見つめられてるのがたまらない」コナンのトレードマークのジャケット、赤い蝶ネクタイ、メガネも再現

■バンダイ初の「消費期限」商品 日本が誇る2つのカルチャーを掛け合わせ

――改めて『食べマス』はどのような商品か教えてください。

【西川満美子さん(以下、西川)】『食べマス』は、ユネスコ無形文化遺産にも登録された「和菓子」と、日本が世界に誇るニューカルチャーである「アニメーション」「キャラクター」が掛け合わされています。ブランド名は“食べられるマスコット”が由来で美味しさはもちろん、手の込んだ細工の美しさやキャラクターの再現性の高さが魅力です。

――和菓子でキャラクター商品を発売しようと思ったきっかけは? 和菓子は年配の方に向けた商品というイメージがありますが…。

【西川】一つは、日本の伝統の素晴らしさを、若い世代や世界に向けて発信することができると思ったためです。もう一つは、バンダイが長年培ってきたフィギュア造形ノウハウと組み合わせることで、魅力的な商品づくり、ひいては食体験の演出が実現できるのではないかと考えたためです。

――開発当初はどのような点に苦労しましたか?

【西川】品質管理体制の実現です。この商品はバンダイにとって初めて「消費期限」を設定する商品でした。

――なるほど。

【西川】バンダイのなかでどのようなルールを設ければ、安全に商品をお届けできるのか、社内の体制や基準をつくるところからのスタートでした。企画立案から販売されるまでは約1年間かかりました。

■職人と最新機械で技術面も進化 和菓子ならではの魅力もプラス

――『食べマス』商品の登場から6年経ちます。たくさんのキャラクターを手掛けられてきましたが、発売当初と技術面に変化はありますか?

【西川】昨年10月に発売した『食べマス 鬼滅の刃 竈門禰豆子』は、細かな模様を表現することと、そのうえで量産できる仕様にすることは非常に難易度が高かったです。キャラクターの特徴である着物の麻の葉模様を和菓子に彫り込むことで表現したのですが、和菓子職人の方の手作業の技術と、最新の立体造形技術をかけ合わせることで実現することができました。

――商品化するキャラクターはどう選んでいますか。形だけではなく、色合いや味わいにもこだわっているように感じます。

【西川】当たり前のようですが、キャラクターを選ぶ際は、和菓子にしたときに魅力的な商品になるかどうかを見ています。おいしそうに見えるかも大事にしています。例えば“フォルムが丸い”“やわらかそう”なキャラクターは良い商品に仕上げることができそうです。そこからさらに和菓子ならではの、“日本の四季を取り入れる”という要素があります。具体例をあげると、『ONE PIECE』のチョッパーは、さくら味。秋には、かぼちゃ味さつまいも味の商品を発売したりもします。

――和菓子ならではですね。SNSでは購入者が思い思いに写真を投稿しています。今まで反響のあったキャラクターを教えてください。

【西川】『食べマス』は今まで動物や着ぐるみなどがモチーフのキャラクターを中心に発売してきましたが、昨年4月に発売した『食べマス 名探偵コナン』は、今までにあまり例のなかった、人物のキャラクターをモチーフにした商品でした。

――どんな商品でしたか?

【西川】主人公がお皿にちょこんと座っているように見えるかわいい商品です。かわいすぎて食べられないとのお声もいただき、非常に高い反響がありました。『食べマス 名探偵コナン2021』として、23日よりセブン-イレブンにて発売予定なので、そちらもぜひ楽しみにしていただきたいです。

■ファンが納得できるクオリティと再現性

――和菓子を使ってキャラクターを表現する際に一番苦労するのはどんなところですか?

【西川】『食べマス』は、練り切りと呼ばれる和菓子で作られたパーツを組み合わせて再現していますが、色も野菜や植物等が原料である天然由来の色素で表現しています。限られた素材のなかで、いかに高い再現性を実現するかは非常に苦労します。

――おもちゃと違って食べるものですからね。味とビジュアルのクオリティの両立は大変だと思います。

【西川】バンダイがプラスチックでモノづくりをしてきたうえでは出会わなかった課題がたくさん出るため、今でも和菓子を作ってくださる工場の職人さんと何度も打合せを重ねます。

――ちなみに、西川さんが思い入れのあるキャラクターは?

【西川】まだ担当して1年なのですが、最初に担当した『食べマス すみっコぐらし~秋のおめかしすみっコ~』は、思い入れがあります。食品を作る際のルールや『食べマス』の仕組みなど、すべてが新鮮だったのを覚えています。自ら考えた企画が発売された時は感動しました。

■商品が成長してきた理由は「マーケティングへのこだわり」も

――商品ごとに、発売される流通が限定されている理由はなんでしょうか?

【西川】ファンの皆様に確実に商品を届けるためです。『食べマス』は特性上、販売期間が短いものだと1週間にも満たない場合があります。商品の存在に気づいてもらえなければ、お客様の手元に届けることができません。そこで、コンビニエンスストアで開催されるキャラクターや映画のフェアにあわせて発売するなど、ファンが来店しやすいタイミングでの商品展開を行なっています。

――入手経路が限られることも、ファンの購買意欲を掻き立てます。

【西川】最近では,グループ会社(株式会社BANDAI SPIRITS)が展開している『一番くじ』と同じタイミングで店頭展開して連動したプロモーションを打つということもしています。

――『食べマス』を軸に、ファン心理をつく展開もノウハウあってのことですね。

【西川】『食べマス』がここまで成長できたのは、商品企画だけでなく、マーケティングにもこだわったからこそだと思います。

――最後に今後の展望を教えてください。

【西川】“和菓子”も“キャラクター”も、日本が世界に誇れるとても素晴らしい文化だと思っているので、日本だけでなく世界にむけてこのプロダクトを発信してきたいです。今まであまり和菓子に興味を持たなかった人が、日本の文化に触れるきっかけを『食べマス』が提供できればとても嬉しく思います。

※禰豆子の「禰」は正しくは「ネ+爾」表記