3月8日に公開され大ヒットを記録している劇場アニメ『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(庵野秀明総監督)。今月7日発表の興行収入では公開から30日で70億円を突破し、相変わらず好調だが、このヒットを支えている要因の一つとしてIMAX(R)やMX4D、4DXなど特殊な上映形態(=ラージフォーマット)の人気ぶりが浮かび上がってきた。

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 同作はコロナ禍による緊急事態宣言の解除前という時期に公開されており、劇場は20時には営業終了、いわゆる大都市圏で強いと言われるレイトショーがないという逆境からのスタートだった。この状況下、公開1ヶ月ほどで70億円、451万人動員(※4月5日発表時)を記録できたのは驚くべきことだ。配給元によると、このうちラージフォーマット鑑賞が占める興収はIMAX・4DX・MX4D合算で約13億円を超え、動員も60万人に迫る規模だという。

 同作はこれらのラージフォーマットが通常上映と同時にスタートしており、3月8日公開初日のチケットが発売された際も、まず埋まっていたのが各劇場のIMAXシアターだった。その後も通常の鑑賞料金より高い価格設定にもかかわらず、週末には必ずIMAXから席が埋まっていく事象は変わらなかった。

 今回は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの完結編ということもあり、その物語だけでなく、映像美を最大限楽しみたい(エンドロールを見ていたら日本の優秀なアニメーターを全員集めたのではと感じたほどだ)、という心理になったファンが多くいたであろうことは想像に難くない。前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の2012年の劇場公開時は『EVANGELION:3.0』、そして14年発売のBlu-ray/DVD収録用では『EVANGELION:3.33』となり、今年の1月には更なる進化を遂げた『EVANGELION:3.333』として映画館で上映された、というバージョンアップの経緯もあり、映像に対しての強いこだわりをファンも大いに期待していたのかもしれない。

 一方、MX4Dや4DXはその性格が異なる。上下左右への振動や匂い、水、霧、煙など映画の臨場感をダイレクトに味わえるアトラクション的な上映形態だ。こちらはティーン層がSNSでのグループ鑑賞をアップしている姿もよく見られ、春休みシーズンになりこうしたテーマパーク的な楽しみ方が顕著になっている。レジャーが制限され閉塞感も増す昨今、より映画の世界に没頭し、ジェットコースターに乗るような感覚で映画を楽しむ形が広がりつつあると言えそうだ。

 全体の興収のうち2割近くがこうしたラージフォーマットで占めているという、邦画では異例の収益構造となっている『シン・エヴァ』。より特別感のある環境で、世界観を深く楽しみたいというマニア心を無限にくすぐってくる作品であることは間違いない。ただ、こういった特殊な上映形態は対応している劇場も限られており、今後は新たな作品の封切りで上映回数が減ってくるのも事実。初めて本作を見る方はもちろん、すでにリピーターとなっている方も、お早めにこうしたラージフォーマット上映で本作の魅力をディープに味わってみてはいかがだろうか。