プラモデルを作るとき、多くの人は「三次元的なリアルさ」を目指すが、モデラ―のなかには漫画やイラストで見た「二次元の世界」を追求する人も。立体なのか平面なのか、「脳をバグらせる」とプラモデルの作風が話題になっているSHINGAさん(@matin19761)は、カープラモデルで、自動車漫画の金字塔『頭文字D』(イニシャル・ディー/講談社)を彷彿とさせる臨場感あふれるひとコマを“描写”。シャア専用料理長さん(@mcofCasval)はガンプラで、箱絵のような“イラスト風塗装”を施した作品を発表し続けている。2人はどんなところにこだわりを持って、見る人に衝撃を与える作品を生み出しているのだろうか。話を聞いた。

【SHINGAさん作品写真】『頭文字D』のワンシーンにしか見えない“漫画風塗装”カープラモ

■こだわりは「臨場感」、動いてるように見えない作品は失敗

 SHINGAさんが、今のような“漫画風”プラモを作り始めたのは3年前。趣味としてカープラモを作っていた際に抱いた“不満”がきっかけだったという。

「制作していくなかで徐々に『プラモデルを綺麗に塗装して作っても、走っているように見えないなぁ…』と思うようになり、いつか『走っているように見えるプラモデルが作りたい!』という欲が生まれました(笑)。今の作風で作り出したのは3年前ですね。『車のプラモで何かもっと面白いことは出来ないかな?』と考えて、作ってみたのがきっかけです」

 制作当初、参考にしたのは「もちろん『頭文字D』です(笑)」とSHINGAさん。試行錯誤するうちに、徐々に自分の形を生み出していったという。

「作品に自分の色が出せるようになってからは、どんどん劇画タッチになっていきました。今は『やりすぎないように』と、気をつけています。こだわりはとにかく『臨場感』。動いてるように見えなきゃ作品としては失敗だと思っています」

 作り上げた作品は3年で約20点。そのどれもが見事な仕上がりでSNSでは賞賛の声が絶えない。SHINGAさんにとって、“漫画風塗装”の魅力はどんなところにあるのだろうか?

「立体なのか平面なのか区別がつきそうでつかないところに、妙なリアル感があると思います。漫画なんだけど立体物として存在している。そんな不思議なところが魅力だと思います。完成品を発表すると、いつもよく言われるのは、『脳がバグる』。僕自身も写真を見返すと絵に見えちゃうくらいなので(笑)」

 自身もだまされるほど高いクオリティーの作品を、大変な労力をかけて制作し続ける。そこには、モデラーとしての信念が垣間見える。

「個人的にはモデラーというより、“ペインター”だと思っています。信念はとにかく『自分の作品で人を喜ばせる』。これに尽きます。
 カープラモデルも含め、車関係全てが僕にとってなくてはならない物です。本業がプロダクトデザイナーなので、車やプラモは1番の刺激になりますし、僕のセンスを作り上げてくれたもの。死ぬまで続けていく趣味であり、ライフワークですね」

■手軽にできる「立体塗り絵」ぜひ一度やってみてほしい

 一方、シャア専用料理長さんは、イラスト風の塗装を施したガンプラを制作しているモデラー。その始まりは、旧キットへの物足りなさだったという。

「この手法を始めた昨年の1月頃、自分が子どもの頃に発売されたいわゆる『旧キット』を多く作っていたのですが、最近のキットと比べるとスタイルや可動など物足りない部分もあり、何とかかっこよく出来ないかと考えていました。
 もともとで私は改造よりも塗装のほうが好きだったので、いろいろ探しているときに、YouTubeで『イラスト風模型』に出会い、衝撃を受けました」

 興奮さめやらぬうちに制作にとりかかったが、最初はなかなか思うようにいかなかったようで…。

「『今日の模型ちゃんねる』『pzero』といった動画を参考に、『質より量』をモットーに試行錯誤を繰り返しました。量をこなすことで、だんだんと自分なりの『イラスト風模型』に近づいてきたかなと感じています。今年の年賀状として、シャア専用ザクをイラスト風に塗装したのですが、今まで自分が塗ったガンプラの中で一番「絵に見える」出来栄えでした」

 同作は、まるで紙から飛び出ているような出来で、多くの人から注目を集めた。これもまたこだわりが詰め込まれている。

「特に陰影を際立たせること、水彩画のような仕上がりを目指して塗装しました。またポーズを変えても、光の当たっている場所に違和感が出ないよう何度も写真で確認し、塗り直したり、光のあたる部分には黄色、影の部分には青や緑などを使い奥深い色合いを表現できるよう頑張りました」

 平日は会社に勤め“週末モデラー”であるというシャア専用料理長さん。土日に集中して趣味に向き合うため、「イラスト風模型」は自分に合っていると言う。

「大掛かりな改造や、手間や時間のかかる各種塗装方法はなかなか難しい。それに比べ、筆塗り+油性ペンの書き込みで出来る『イラスト風模型』のほうが手軽だと感じています。また、完成した作品は、普通の塗装よりインパクトが強く、見た方からのリアクションが大きい。ツイッターなどでのコメントはとても励みになっています。
 プラモデルの箱絵やイラストをお手本に出来るいわば『立体塗り絵』ですので、皆さんにも一度挑戦して頂きたいと思っています」