俳優の片岡鶴太郎が主演するテレビ朝日系「森村誠一ミステリースペシャル 終着駅シリーズ」の37作目となる『停年のない殺意』が4月1日(後8:00~9:54)に放送される。鶴太郎は、長年にわたって夫婦役を演じ、昨年4月に亡くなった女優の岡江久美子さん(享年63)への思いと誓いを語った。

【写真】牛尾刑事の妻・澄枝役を演じた岡江久美子さん

 寡黙にして実直、執念の捜査で事件の奥底に潜む真相に迫る、新宿西署のベテラン刑事“モーさん”こと、牛尾刑事の活躍を描く人気シリーズ。長く支持されてきた終着駅シリーズの魅力について鶴太郎は「推理だけでなく、犯罪に手を染めることになってしまった人物の心情にまで思いを馳せる展開」と説明。「人間、日常生活の中で、誰しも被害者や加害者になりうる瞬間があると思うんです。人は常にそういう危うさを持っている。そして事件が起きて初めて、きのうまでの平穏な日常がいかに大事だったかに気づく…。終着駅シリーズにはそういう大きなメッセージが根底に流れています」と明かす。そして、最新作について「終着駅シリーズの真骨頂。まさに終着駅らしい作品だと思います。放送よりひと足早く完成版を見たのですが、面白かったですね。私自身、涙してしまったぐらいです」と自信を見せた。

 また、1997年放送の第7作から共演してきた岡江さんへの思いも吐露する。本作では岡江さん演じる牛尾の妻・澄枝も追憶の中で静かに登場するが、片岡は「ファンの方々はこの作品を見れば岡江さんの存在を改めて感じてくださると思いますので、終着駅シリーズが続く、ということは、岡江さんもまた生き続ける…、そんな意味があると思うんです」と絞り出すように言葉を紡ぐ。そして「だから、天国の岡江さんには“シリーズが続く限り、精一杯、務めさせていただきます”とお伝えしたいですね」と誓いを立てた。

 そして、「追憶シーンには牛尾刑事のナレーションが入るのですが、僕の思いを牛尾さんの言葉にのせています」と、岡江さんへの感謝をせりふに込めたという。「みなさんにこの作品を見ていただいて岡江さんを思い返していただけたらうれしいですね」と呼びかけていた。

 最新作で牛尾が捜査に当たるのは、東京・新宿の公園で若い男性の遺体が見つかった事件。被害者は文房具メーカーの社長秘書・伊庭崇彦(堀井新太)で、第一発見者の妹・晴美(山谷花純)は、兄から「面白いものを見せてやる」と呼び出されていたと打ち明ける。しかし、“面白いもの”とは何のことなのか晴美はまったくわからないと困惑し、父・悌二(尾美としのり)、母・頼子(七瀬なつみ)も心当たりがないと話す。

 聞き込みを進めた牛尾は、勤務先の社長・市野清明(国広富之)をはじめ、誰もが崇彦のことを“優秀で素晴らしい青年”とほめたたえるのを聞き、そんな非の打ちどころのない崇彦にウラの顔があったのではないかと直感。また、父・悌二がつぶやいた“7.5センチの倖せ”とは何なのか…? 調べを進めるうち、平凡な一家に潜む切なくも悲しい真実が浮かび上がっていく…というストーリー。

■片岡鶴太郎コメント
――最新作『停年のない殺意』の見どころを
【鶴太郎】家族…、特に父と息子の男同士なんて、なかなか面と向かって本心を吐露するのは難しく、行き違いが起きがちですよね。今回は、そんなすれ違いから生まれた、切なく悲しい事件が展開していきます。ミステリーではありますが、事件の推理だけでなく、犯罪に手を染めることになってしまった人物の心情にまで思いを馳せていく展開…。それこそが終着駅シリーズの真骨頂であり、監督が常に追い求めているところです。そういう意味で、本作はまさに終着駅らしい作品だと思います。

 放送よりひと足早く完成版を見たのですが、面白かったですね! 尾美としのりさん、七瀬なつみさん、国広富之さんらベテラン勢も素晴らしかったし、堀井新太くん、山谷花純さんら若手のみなさんもとてもいいお芝居をされていて、私自身、涙してしまったぐらいです。そして、改めて岡江久美子さんという素晴らしい女優さんを失った悲しみを感じさせられました。お亡くなりになって1年近く経ちますが、みなさんにこの作品を見ていただいて岡江さんを思い返していただけたらうれしいですね。

――改めて妻・澄枝役、岡江久美子さんの存在とは?
【鶴太郎】岡江さんが亡くなって、「終着駅シリーズはどうなるんですか?」というお問い合わせも多かったんです。監督やプロデューサーともとことん話しあったのですが、岡江さんに代わる人はいないという思いもあって、今回、追憶の中でのご出演となりました。この作品を見れば、みなさん、岡江さんの存在を改めて感じてくださると思いますので、終着駅シリーズが続く、ということは、岡江さんもまた生き続けていく…。そんな意味があると思うんです。だから、天国の岡江さんには“シリーズが続く限り、僕も精一杯、務めさせていただきます”とお伝えしたいです。

 実は、そのシーンには牛尾刑事のナレーションが入るのですが、僕の思いを牛尾さんの言葉にのせています。岡江さんの出演シーンはきっと、みなさまの心に届くのではないかなと思います。

――1996年の第5作から牛尾刑事を演じてきましたが、25年を振り返って思うことは?
【鶴太郎】僕は一切、過去の作品を振り返らないんです。監督、プロデューサー、脚本家の方々が次はどんなメッセージを牛尾刑事に託してくれるのか、それを楽しみにしているので、25年続いたからといって“慣れる”ということはなかったですね。どれだけ演じてきても、脚本をいただくたびに僕にとってはまた新たな作品という位置づけなので、脚本を読んだら牛尾刑事を務めるために彼の言霊であるせりふをしっかりと自分の体や魂に吸い込ませ、牛尾刑事の肉体と精神を携えて現場に行く…。これしかないです。

――視聴者のみなさまにメッセージを。
【鶴太郎】人間、日常生活の中で、誰しも被害者や加害者になりうる瞬間があると思うんです。ふと心にわいた怒りのせいで感情的になってしまったり、配慮がほんの少し足らなかったり…。そういう一瞬の感情の交差の中で犯罪は起きてしまうし、人は常にそういう危うさを持っているのだと思います。そして事件が起きて初めて、きのうまでの平穏な日常がいかに大事だったか、“当たり前の尊さ”に気づく…。だから、そうならないように“今の私の行動は大丈夫なのだろうか”と常に省みる心を持つことが大事なんだなと思います。終着駅シリーズにはそういう大きなメッセージが根底に流れています。コロナ禍の行き詰まった状況の中だからこそ、日常の幸福を考えながら静かに最新作を見ていただけたらうれしいですね。