「カスハラ(カスタマー・ハラスメント)」という用語ができるほど、客の理不尽な言動に悩まされる店は多い。そんな「カスハラ」の代表例でもあるクレームに対して「心の声が全部でてしまった」飲食店員を描く2つの実録漫画がTwitterで話題に。作者の漫画家も~さん(@mori2ta)に、この漫画を描いたきっかけやクレームへの対応について話を聞いた。

【漫画】「もう言うたやろが!」暴言クレーマーに思わず出ちゃった心の声! 飲食店店員の実録漫画に共感の声

■店主からは「ああいう言い方をしたらいかん」と苦言も、その優しさを従業員にも向けてほしい

 漫画で描かれるのは、店側の事情を考慮せず、注文を聞き直すと怒鳴ったり、威圧的な態度で注文の品を催促するクレーマー。クレームをつけられたからといって、安易に謝罪するのではなく、冷静に状況を説明して客に対する要望を淡々と伝えるも~さんの対応に、「言わんとわからんよね」「本音ダダ漏れなの最高です」「よく言ってくれました」など共感の声も多く寄せられている。

――漫画には多くの反響が寄せられていました。

【も~さん】「同じようなクレームにあってしんどい気持ちを抱えていたのが浄化された」といったコメントが印象に残りました。ポジティブな内容ではなかったので、読者さんの反応に不安もありましたが、こういった内容でも共感してくれたり安らぎを感じてくれたりする人がいることが嬉しかったです。

――“クレーム”について漫画にしようと思ったのはなぜですか?

【も~さん】「#実際に言われたクレーム晒す」というタグが流れてきて、自分の思い出がよぎったので形にしました。漫画にすることで“ネタにして浄化する”というか、“当時の自分のしんどさを供養する”みたいな心持ちになるのでよくやっています。

――クレームを受けて、どう感じていましたか?

【も~さん】日常茶飯事だったのですが、なかなか受け流せず毎回イライラしていました。あまりにも多くて余裕が持てず、「文句があるなら家で食え!」くらいの気持ちでいた気がします。その分、普通に食べてお会計をして帰ってくださるお客様は、本当に神様のように感じられました。

――クレームに対して「心の声が全部出てしまった」と描かれていましたが、お客さんはどのような反応でしたか?

【も~さん】困惑していらっしゃいましたね。店員が言い返してくるなんてまったく思っていなかったはずです。激昂されてもおかしくなかったのですが、ご理解いただけて良かったです。

――ご実家の飲食店でお手伝いされた際の話だそうですが、も~さんのクレーム対応への店主の評価は?

【も~さん】店主である父からは、「お客さんのことをもっと大切にしてほしい」「ああいう言い方をしたらいかん」と常々言われてきました。父は優しいですが、その優しさを従業員にも向けてほしい。できないことはできないとハッキリ対応するのは、ほかのお客さんを大切にすることに繋がると思うので、「毅然とした対応で店の空気を守るのも店員の仕事」と開き直っていました。

――実際には、どのくらいの頻度でクレームにあっていましたか?

【も~さん】ほぼ毎日でした。単価が安いお店ってクレームが多い気がしますし、土地柄もあるのかも。昔ながらの情緒ある地域で、フランクで個性的なお客さんが多く、家族のように接してくれる温かい方もたくさんいらっしゃいましたが、自分の価値観ではまったく理解できない方も多かったです。

――店員さんから見て、「クレーム」と「指摘」の違いとは?

【も~さん】例えば、「調味料がカラになっている」はご指摘です。「すみません! すぐに代わりをお持ちします! 教えていただいてありがとうございます」で、終わりです。でも、「オイコラ! 調味料がカラになっとるやないけ! 常に補充しとかんかい! 何のために働いとんねん!」だと、カラなのは申し訳ないですが、「前の方がたくさん使ったのかもしれませんね! この忙しい状況で常に補充するのは難しいですね!」ってなってしまいます。(逆ギレですね…)。

――与える印象が大きく違ってきますね。

【も~さん】言い方のニュアンスというか、過剰に自分の感情が乗っかっていないか、自分の価値観だけをベースに感情をぶつけていないか、というのがクレームと指摘の違いだと思います。あくまで主観ですが…。

――クレームはお店にどのような問題を生じさせていたでしょうか?

【も~さん】仕事の手が止まりますし、店員やほかのお客さんのストレスになります。「態度が悪い」と言って母に暴力を振るおうとした若い会社員のお客さんもいました。70歳近い小柄な母なのに…。ひどいものは業務妨害や暴行にまで発展しかねません。

――それはひどいですね…。

【も~さん】大事になると客足が遠のいて、日々の売り上げが減って食べていけなくなってしまうので、なるべく穏便に納めないといけない。お店の死活問題に発展する可能性もある難しい問題です。実際に私はお店の忙しさも相まって精神的・肉体的に病んでしまい、退職させてもらいました。同じ社会で暮らす人間として、人を下に見てワガママを言う、乱暴な振る舞いをするなんてことはなくなってほしいです。

――クレーム対応で心がけていることは?

【も~さん】絵の仕事に対しても、「これはもはやクレームでは?」と思えるようなご意見も時折あります。「こういった意図で描いています」と説明すると、ほかの方から「ネガティブ意見にばかり反論していて、普段のファンを大切にしていない」とご意見をいただいたことも…。本当に難しいし、正解なんてないと思っています。

――それは難しいですね。

【も~さん】ただ、お相手がどのような状況や心情でいるか、こちらにはわかりません。つらい出来事があった直後なのかもしれません。暴言や中傷はスルー&通報でOKですが、そうでない場合はなるべく誠意を持って冷静にお話できたらいいなと思います。

――お互いに気持ちよく接客し、接客されるために、お客さんに気をつけてもらいたいことは?

【も~さん】「自分は相手より上の立場だ」と思わないように心掛けていただけると、人と人としての気持ちよいやり取りができると思います。「ありがとう」「ごちそうさま」「美味しかったよ」なんて言われたら最高です。「こちらこそありがとうございます! ぜひまたお越しください」と満面の笑みで返したくなります。

――最後に、も~さんの漫画を読まれた方へメッセージをお願いします。

【も~さん】今回の漫画を楽しんでくださった方、本当にありがとうございました! 今もどこかでクレームに苦しんでいる方がいらっしゃること、心苦しく思います。少しでも心が軽くなって、クスッと笑えるような話や体験談を描いていけたらと思っています。