26日放送のフジテレビ系十三代目市川團十郎白猿襲名披露特別企画『桶狭間~織田信長 覇王の誕生~』(後9:00)。今川義元の大軍を数的に遥かに劣る織田軍が打ち破り、日本史上最大の逆転劇と謳(うた)われ、織田信長を一躍戦国時代の主役に押し上げた伝説の一戦、“桶狭間の戦い”を題材とした本格歴史エンターテインメントで、市川海老蔵が織田信長を演じる。

【場面カット】広瀬すず演じる正妻の濃姫が“信長”海老蔵に膝枕

 現実的な合理主義者で常に常識を疑い、自分の目と力のみを信じ、全く新しい価値を創造し、一躍時代の寵児(ちょうじ)となった信長像は、伝統ある歌舞伎界の中心にありながら、常に変革を求めている海老蔵そのものとも言える。その海老蔵に、今作品への思いを聞いた。

――信長を演じてみての感想。
信長が斎藤道三に言う台本のセリフが印象的で、そのセリフに私自身が感化されました。人の価値観の大きさの違いにすごく影響を受ける、求めるべきものは何なのかっていう。戦も商いも明日すらもわからないのだから、明日を求めてはいけないのだという話を信長と道三が2人でします。明日を求めてしまうとみな、どんどんいろいろなことをかかえこんで苦しくなってしまう。それももちろんあるべき姿ではあるけれど、信長の言っていることは、求めるべきことは、自分が死んだ後に明るいすてきな未来がくること。そこには変化があるし、みんな変化をこわがるけれど、変化をこわがらずに、自分の滅びた後のことを想像することを求めるという。あれはすごいせりふだと思いました。

――今川義元とのシーンはいかがでしたか。
今川義元という、ものすごい大きな存在と対峙(たいじ)せざるをえない状況になるときに、自分が負けるか、勝つか、限りなく勝つ可能性が低い中で勝ちを探りだす。それは信長が今まで経験してきたことや、生きてきたことがそこにつながっていくのでしょう。義元にはもちろん勝つつもりで挑むのですが、その強い思いの結果、勝ってしまったのだと思います。そしてこの勝利は“勝った”ということだけではなく、時代が変わる瞬間を作った、はじめて次の時代を背負うことを体感したシーン。
彼がずっと望んでいたことでそれを実際やったことで、すごく歴史が動いた瞬間だと思います。あの瞬間に、冷静になることを知るというか、ひとつ大人になって、ものすごくわずかな数秒もない刹那に信長が成長する、そういう大事なシーンでもあったし、そういう表現をしたつもりです。セリフも、“変わらないのだったらこの世ごと討ち取ってしまえばいい、受け継ぐにあらず。新しい世は自分で創り出すものだ”と義元に言うのですが、そこは(脚本家の)大森さんが私自身の襲名に対して、意識して書かれたのかと感じました。三上博史さんとの共演は1日ではありましたが、わずかな時間でわかりあえる瞬間があったと感じました。そこが画面にうまく出ているといいと思っています。

――佐藤浩市さんとの初共演の感想
(佐藤の父である三國連太郎さんも同じ役者ということで)若い時から自分の信念をしっかり持たれている方とご一緒できたことはうれしかったです。そして、娘のぼたん(帰蝶)との共演シーンがありましたが、終わった後に私にやさしい言葉をかけてくれて。“彼女の(四代目市川ぼたん襲名披露後の)デビュー作で相手役ができて、私も歴史にひとつ名を連ねることができました。”と言ってくださったことがうれしかったです。

――ぼたんさん、勸玄さんの出演に関して
今回の出演は自分たちで決めさせました。プロデューサーにどうするか聞かれて“やります”と自分で言ったので、私は受け入れただけです。親と子ではなく、いち俳優さん、いち女優さんとして接したと思っています。

――他の共演者の印象はいかがでしたか?
松田龍平さんは、彼の世界観が面白いと思いましたし、かわいらしい面もときどきのぞかせていました。中尾明慶さんは、まっすぐでいいお芝居をされていたと思います。今回中尾さんとは、京都では、一番一緒にご飯を食べる機会をいただきました。

――視聴者の皆様にメッセージをお願いします。
今の時代に必要なヒントをこの『桶狭間』という作品の中の織田信長は持っていると思います。生きるということとか、さまざまなことが起こる世の中でどうあるべきかだとか、そういうヒントがこの人の生き方の中にはあるなと思います。信長の人としてのあり方、考え方、存在、周りの巻き込み方は共感できる部分がたくさんあると思いますので、そういうところを視聴者の方には感じていただきたいです。織田信長、今川義元、斎藤道三、木下藤吉郎、濃姫…。彼らが生きてきた歴史の中で、信長という、変化を求めた一人のカリスマが昇りつめていく。その姿は、変化が必要とされている今の世の中でも何かの役にたつのではないかと思います。

■あらすじ
1560年、清洲城。27歳の織田信長(市川海老蔵)が「敦盛」を舞っている。同じ時、今川軍の先鋒・松平元康(後の徳川家康)は織田軍の砦(とりで)の前で、その采配を振るう時を待っていた。駿河の総大将・今川義元(三上博史)が織田家の領地・尾張を我が物にするべく、二万五千の大軍をもって進攻してきたのだ。前夜、今川軍に対し籠城策を訴える家老衆をあしらった信長は、翌早朝にたった五人の小姓を従えて清洲城から姿を消した。恐れをなして逃げたのだという生母・土田御前(黒木瞳)に対して、濃姫(広瀬すず)は決して逃げたりはしないと言い切り信長の身を案じる。信長は木下藤吉郎(中尾明慶)など、信用できる者たちを動かし今川軍の情報を集め、義元が大高城に向かうのではなく、織田信長軍と戦う構えで桶狭間にいることを突き止めた。やがて、織田軍本陣に家老衆が軍勢とともに到着したが、その数は二千ほどで、今川軍との差は圧倒的だった。二万五千VS二千。果たして信長はどんな戦略でこの大軍に立ち向かうのか…。奇跡の戦いが今始まろうとしていた。