ビームサーベルとシールドを装備し、ひとり中世の騎士のようなたたずまいで、ジオン公国のモビルスーツ(MS)のなかでも異彩を放っているギャン。『機動戦士ガンダム』では、マ・クベ大佐専用機として登場し、覚醒したアムロ・レイの乗るガンダム相手に善戦するも、切り付けられて爆破という儚い最期が描かれた。モデラーの林さん(@Hayashiya669)はそんなギャンが、見せたであろう“最後の抵抗”を想像し、ガンプラで表現。“孤高の騎士”ギャンに込めた想いとは?

【写真】激戦から数年…放置された“草ムラのジム”を仲間が回収に、林さん作品集

■本格復帰第1作に選んだテーマは「大破したモビルスーツ」

――ガンプラに本格復帰し、第1作として制作したのがギャンの最期を描いた本作『最後の戦場』と伺いました。

【林】はい。小学四年生からプラモデルを始めたのですが、一年くらい続けてそこから全く作らなくなってしまい、ここにきてまた作りたいなと思い始めました。ちょうど、まぁまぁ時間もあったので始めるいいきっかけになりました。

――ウェザリングを施し、ギャンの最期が見事に描かれていますが、本作のアイデアはどのようなところから浮かんだのですか?

【林】実は、事前に汚し塗装を施して、戦場で大破したMSを表現しようということだけ決めていて、それ以外の作品のアイデアはほとんど決めずに、ほぼその場の発想や成り行きだけで制作しました(笑)。
 これまで、ジオラマというものを作ったことがなかったので、「せっかくまたプラモ制作を始めたんだから、今度こそ挑戦しよう」という気持ちがあったのも、きっかけと言えるかもしれません。

――「大破」前提だったんですね(笑)。本格復帰作とは思えない見事な“汚し”です。

【林】ありがとうございます。特に苦労したのは、腕や足の切断面です。初めて挑戦することだったので、他の方の作品を見たり、アニメのシーンなどを見てイメージしながら作ったので思いのほか時間がかかりました。一個一個のパーツを丁寧に扱い壊さないことを念頭に置きながら、いかにカッコよく汚してつくるかを信念にして制作しました。

■大人になって観るガンダムの印象はまるで違う

――ギャンと言えば、ニュータイプとして覚醒したアムロ・レイを擁したガンダムを相手に善戦するも、最後は力負けしたマ・クベ大佐の専用機として知られています。本作もそのようなストーリーをイメージされたのですか?

【林】前述の通り“成り行き”の部分もあるのですが、制作時には、おっしゃる通り、ガンダム相手に戦闘を仕掛け、力及ばず敗北を喫してしまったシーンをイメージしていました。
 このギャンは、この後本当のトドメを刺されるのですが、それではつまらないと思い、野に横たわり、自分の運命を悟りながらも、最後の力を振り絞って抵抗しようとしている姿にしました。

――どんな状況でも最期に抵抗をみせる、気高き騎士のプライドを感じますね。こういった作品を見ると、ガンダムは単なる戦いではなく、それぞれの置かれた立場で必死に生きている人々の物語である事を認識します。

【林】小学生の頃は、単純に面白い、かっこいいという気持ちでガンダムを観ていたのですが、この歳になってあらためてガンダムを観ると、キャラクター一人ひとりの意思を強く感じたり、戦っている時の気持ちなどが細かく描写されていることに気づいたりすることが多くなりました。

――大人になるとガンダムの見方が変わるという声もあります。それは戦争の現実を理解し、ガンダムと重ね合わせる部分があるからなのでしょうか?

【林】そうですね。ガンダムで描かれる戦争を取り巻く人たちは、いろいろな想いを持っています。例えば、平和を望みながら戦っている人もいれば、ただ戦うことが楽しいと思う快楽主義の人、なかには戦場に出るのが嫌だと考えている人もいる。それらは現実の戦争とリンクすることがあるので、作品と重なる部分は多くあるなと思います。
 私は戦争を体験してはいませんが、話を聞くだけでとても残酷で恐ろしい事だということがわかります。日本では平和に暮らせているので、なかなか実感はわきませんが、すぐそばに紛争などが起きている国があるので、もっと身近にある事と考えて、生活しなければいけないとも思います。

――少し脱線してしまいましたが、ガンダムに対する想いの熱さが伝わりました。まだ本格復帰されたばかりということですが、林さんにとって「ガンプラ」とは?

【林】私にとってガンプラは、一つの趣味であり、まだ心のどこかにある子供心をくすぐってくれる宝物のようなものです。
 今回の、ギャンを発表してから自分でもビックリするくらい反響がありました。たくさんのいいねをいただき、こうしてインタビューも受けさせていただいている。自分の中ではまだ始まったばかりですが、早くも今年一の出来事になりました(笑)。