ゲスの極み乙女。、ジェニーハイなどでも知られる川谷絵音が率いるバンド、indigo la End(インディゴ・ラ・エンド)が昨年10周年を迎えた。「売れない」と思われていた同バンドだが、現在ではその音楽性の高さから、注目を集める存在となっている。浮き沈みは少ないながら、川谷を取り巻く環境から、一度は解散も考えたという彼ら。そんな危機をどう脱し、今に至るのか。川谷絵音 (Vo、G)、長田カーティス (G)、後鳥亮介 (B)、佐藤栄太郎 (Dr)が当時の想いも語った。

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■「このバンドが軽視されることもあった」、売れないと思われていた過去

――indigo la Endは2020年、10周年を迎えました。川谷さんはゲスの極み乙女。、ジェニーハイなど数多くのバンド、プロジェクトを主宰していますが、一貫して、「indigo la Endが活動の中心」と言ってますよね。

【川谷絵音】最初に組んだバンドだし、いちばん長く続けてますからね。このバンドで作ったものが、自分の元になっているというか。ただ、目標としていたものは特になかったし、だからこそ10年続いたのかなと思っています。ずっと平坦というか、浮き沈みがなく、数ミリずつ右肩上がりなんですよ。

【佐藤栄太郎】よく、「珍しい売れ方だ」って言われます(笑)。もともと、自分たちでも売れないだろうとは思っていたんですよ。

【川谷絵音】地味なバンドだという自覚もあって。曲のなかに強い言葉があるわけじゃないし、ずっと長く聴いてもらえる作品を作り続けてる感じなんですよね。このバンドが軽視されることもあったし、大きいことをやろうともしないですから。

――そのスタンスを貫きながら、これほど高い音楽的評価を得ているのはすごいですよね。メンバーの関係も変わらない?

【川谷絵音】そうですね。プライベートで会うような仲の良さとか、絆とかではないですが(笑)。もともと「集まって何かをやろう」ということを避けてきた人間なので、4人でいるために音楽をやってるわけじゃないんですよ。そもそも、集まって何かをやることを目的にしても、そこにゴールはない。人と距離を取って生きる自由もあると思うんです(笑)。人の機嫌を取るのも疲れるし、人付き合いって面倒くさいじゃないですか。

――10年間、メンバー同士がぶつかったり、ドラマになるような出来事はなかった?

【長田カーティス】正直、何もないです。

【佐藤栄太郎】個人個人いろいろあると思うし、それを言うかどうかは別にして、基本的にはその人の問題ですからね。もちろん仲が悪いわけじゃないですよ?

――あくまでも音楽をやることが目的だと。

【佐藤栄太郎】そのためにやっているし、何にも代え難いです。いい曲ができた、いいテイクが録れたときの達成感は、3大欲求を超えるかもしれない(笑)。

【川谷絵音】とはいえ、「好きなことだけやれていいね」と言われると、「違うんだけどな」とも思うんですけどね。街で知らない人に顔を指されることもあるし、煩雑なことも多いので。「そうじゃないんだけどな」ということもいっぱいあるけど、正せないじゃないですか。音楽でそれをやるのも違うし…。

――以前、川谷さんがバッシングされていたときは特に大変だったのでは?

【川谷絵音】あのときも、「4人で乗り越えていこうぜ」みたいな話はとくにしてないですけどね(笑)。ただ、一時バンドの活動を止めてしまったことがあって。そのときはメンバーに、「離散しよう」って言ったんですよ。

【長田カーティス】1日だけ解散したね(笑)。

――解散せず、バンドを続けることになったのはどうしてですか?

【川谷絵音】その話はライブでもしゃべったりしてるんだけど、長田君が電話してきて…。

【長田カーティス】え、あの恥ずかしい話?

【川谷絵音】(笑)普段から特に話をすることもなかったんだけど、あのときは長田君に「君の音楽が好きだから、僕はついていくよ」と言われて。それを聞いて「やらないとな」と思ったんです。恋人同士でもあるじゃないですか。「別れる!」って出て行って、次の日に戻ってきたり(笑)。

【長田カーティス】痴話ゲンカか(笑)。

――でも、そのとき話したことは本心ですよね?

【長田カーティス】そうですね。ミュージシャンとしてリスペクトしているし、作詞・作曲のセンスにも光るものがあるなと思っていたので…恥ずかしいですね、この話。

――後鳥さん、佐藤さんはそのときどう思ってました?

【後鳥亮介】それも基本的には個人の問題ですからね。ただ、「関係ない」ということではなくて。川谷君に限らず、誰かが落ち込んでたら「元気?」って声を掛けたり、それくらいの思いやりは持ってますからね。

【佐藤栄太郎】そうだね。

【長田カーティス】1日だけ解散したときも、(後鳥、佐藤が)「任せるよ」って言ってくれて。一応、信頼は得てるんだなって思いました(笑)。

【川谷絵音】当時indigo la Endは知られていなかったし、このバンドが矢面に立つことはなかったんです。なので特に大きな影響は受けてなくて。それはバンドとしては良かったなと思ってますね。

――音楽的な変遷についても聞かせてください。indigo la Endとしてやりたいことも変化していますか?

【川谷絵音】途中から「こういう音楽を目指そう」というのはなくなってますね。バンドありきというか、「そのときにやりたいことをバンドでやると、結果的にこうなった」という感じです。今回のアルバム『夜行秘密』も、バンドっぽい作品になったと思います。打ち込みメインで、整理整頓された昨今の音楽とはかなり違うというか、隙がある音楽だと思うんですよね。僕らはもともとギターロックバンドが好きで、バンドをやる人は大体そうだと思うけど、「ギターをバーン!と鳴らしたい」みたいなところから始まっていて。緻密に作られた音楽が世に溢れすぎて、ちょっと疲れたところもあるし、今回は自分たちが好きなものに身を任せるように作った感じです。時代も、バンドサウンドに回帰しつつある気がするし。

――海外ではギターロックが復権しつつありますよね。

【川谷絵音】そうですね。アルバムのなかで最初にできた曲は「チューリップ」なんですが、もともとはもっと緻密にやろうと思ってたんです。でも、アレンジしているうちに「弦とか管は入れなくていいか」と思って。めんどくさかったわけじゃなくて(笑)、これくらい隙があったほうがいいなと。

【長田カーティス】隙があると言っても、人力でやることの熱量みたいなものは入れているつもりなんですよ。

【佐藤栄太郎】うん。バンドって、一種の制限なんですよね。僕自身も四肢を使ってドラムを叩くという制限があるんですけど、だからこそ生まれる表現がある。落語家が扇子だけでそばを食べてみせるのも制限から生まれた画期的なアイデアだと思うんですけど、それに近いかも(笑)。

【後鳥亮介】いろいろなアイデアを込めながら演奏しているし、いろいろなジャンルが楽しめるアルバムになってたと思います。

――切なさが滲み出る歌詞も印象的でした。indigo la Endは切ないラブソングのイメージも強いですが、そこも意識してるんですか?

【川谷絵音】ずっと人と人のつながりを歌詞にしているだけで、特に決めているわけではないんです。歌詞は自分ひとりで完結できないし、他者とのつながりのなかで出てくるもの。他者は100%理解できないし、こちらでいくら想像しても、間違ってることもある。だからこそ、歌詞にしたくなるんだと思います。

――10年の厚みを感じられる、素晴らしいアルバムだと思います。今後もこれまでのスタンスを貫きながら活動していくことになりそうですか?

【川谷絵音】そうですね。さっきも言いましたけど、もともと波風を立てないバンドだし、「ずっとこのままでいいか」と思ってたので(笑)。そうやって続けていると、「夏夜のマジック」がTikTokで人気になったり、たまのご褒美のためにがんばってる感じです。会社員の方のボーナスみたいに(笑)。

【佐藤栄太郎】いつ出るかわからないボーナスだね(笑)。でも、メモリアルな年にオリジナルアルバムを作ってたって、超カッコよくないですか? それがいちばん健全だと思うし。

【後鳥亮介】今も制作してますからね。

【川谷絵音】それくらいですね、言えることは。

【長田カーティス】今まで通りです(笑)。

(文:森朋之)